リベルランド:バルカン半島の新しいミクロネーションが国民募集中

The "official" flag of the Republic of Liberland. Design by Vít Jedlička, used under Creative Commons license.

リベルランド共和国の「国旗」。デザインはリベルランド大統領のヴィト・イェドリチカ。クリエイティブ・コモンズのライセンスのもと使用。

東欧のソーシャルネットワークで今最も話題となっているのが、ヨーロッパで最も新しい国、リベルランド共和国だ。誕生したばかりのこの国は、どの国からも、また国際社会からも認められていない。面積は7平方キロメートルで、クロアチアとセルビアの国境を流れるドナウ川沿いに位置する。この地域は、より広域な国境を巡る二国間係争地の一部として、1947年以来「ノー・マンズ・ランド」 (訳注:軍事的にどの国にも統治されていない無主地) の状態が継続中だ。

このニュースが初めてバルカン半島のソーシャルネットワーク上に登場したのは2015年4月14日。誰もが遅れてきたエイプリルフールの冗談だと思った。だがセルビアの独立系報道局のBetaニュースのような信頼できる情報源が声明を確認、報道したことで、今は真剣に受け止められている。

ヨーロッパで最も新しいミクロネーション (ミニ国家と紛らわしいが、ミニ国家は単に非常に小さいというだけで正式な国家である) は、どうやら正式な国家となることを本気で目指しているようだ。大統領はヴィト・イェドリチカというチェコ人だが、リベルランドのFacebookで、建国を発表した翌日にはすでに1000人以上が市民権の登録を申し込んだと主張している。イェドリチカはCEVRO政治大学を卒業し、オンライン上でヨーロッパの政治、経済、社会問題について広範に執筆活動を行っている。リベルランドの「公式」Facebookページも大変な人気を博しており、2015年の4月半ばまでに1万7000件近い「いいね!」が押されており、その数はますます増えている。

Liberland received today more than 6000 registrations and 1000 full applications for citizenship

Posted by Vít Jedlička on Wednesday, April 15, 2015

リベルランドをただの冗談、あるいはヨーロッパが直面している問題に目を向けさせる試みだと考える人が今でもいる一方、多くの人はリベルランドが世界で3番目に大きなミニ国家、そして正式な国家になる可能性を真面目に議論している。この地域が事実上の無主地であり、国家としての要件を全て満たしているよう に見えることから、周辺国や国際社会がリベルランドの承認を拒否するのは難しくなるかもしれない。

議論の一部は、世界最大の知識の集合体、Wikipediaからリベルランドの記事を削除すべきかどうかにも飛び火している。「ありふれた想像上の国家の一つ」として項目の削除を求めたwikipedia編集者はごくわずかで、編集者とコメンテーターのほとんどは項目は残しておくべきと主張している。その理由としては、単純に記事として載せておくだけの根拠があることや、ヨーロッパの国家となる可能性もわずかにあることが挙がっている。

あるwikipediaの編集者はこう説明する。

This is quite likely to have significance since it's in a terra nullius created by a border conflict. Any act that's done towards this non-recognized nation is likely to have an impact on the legitimacy of either side's claims, so it definitely passes when examined for long-term notability.

リベルランドはクロアチアとセルビアの国境紛争で発生した無主地に存在するため、リベルランドの建国宣言は重要な意味を持つ可能性が高い。この未承認の国家に対するいかなる行動もいずれかの国の主張の正当性に影響があることから、長期に渡りリベルランドが注目を集めるのは間違いないだろう。

Some of the founders of Liberland, upon planting the country's flag on the territory between Croatia and Serbia. Photo from Liberland.org official press release.

リベルランド建国メンバーの一部。クロアチアとセルビアの間の領土に国旗を立てて撮影。
写真はリベルランドの公式プレスリリースより転載。

公式webサイトとwikipediaによれば、リベルランドの公用語はチェコ語、ハンガリー語、セルボクロアチア語。座標は北緯45度46分、東経18度52分にある。どこかに書き留めておけば、今後の地理の試験の役に立つかもしれない。

市民権の申し込みは簡単だ。写真付きの有効な身分証明書をスキャンしたものと、市民権が欲しい理由を書いた添え状を添付して電子メールを送信するだけだ。可能なら電話番号も記載しておく。ただし、市民権を得るにはいくつか制限がある。公式webサイトと大統領自身の声明によれば、ネオナチ、共産主義者、原理主義者は歓迎されないとのことだ。また、「重大な犯罪」を犯した人物も、即座に市民権の授与を拒絶される。

リベルランドは、バチカン、モナコに続き、将来的にヨーロッパで3番目に小さい国になる可能性がある。また、国民に対しては非常に低い税率、もしくは税を全く課さないことを約束している (詳しくは、タックス・ヘイブンを参照) 。そして、

  • have respect for other people and respect the opinions of others, regardless of their race, ethnicity, orientation, or religion
  • have respect for private ownership which is untouchable

・人種、民族、信条、宗教にかかわらず、他者と他者の意見を尊重する
・不可侵の私有財産を尊重する

上記のような国民で構成される国家であることを約束する。

これら全ての要素は、ヨーロッパにとっては確かに斬新なものかもしれない。リベルランドが正式に認められるかどうかにかかわらず、しばらくの間は、リベルランドはヨーロッパにおける人権、経済的地位、広がる原理主義、腐敗に対して、鋭い疑問を投げかけることになる。

世界中の人が、リベルランドのソーシャルメディアのページで、言論の自由、自由市場、あらゆる原理主義と差別の排斥を主張するリベルランドのスタンスに対し肯定的なコメントをしている。こうした問題が急速に広がっている国がヨーロッパに存在するということを、ソーシャルメディアのユーザーはしばしば指摘している。ヨーロッパが法の支配に戻る道を見つけられるのか、それとも新しい国家がなくてはヨーロッパが新たな規範を受け入れられないのかは、まだわからない。

校正:Takako Nose

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