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ハンガリー政府、偏見と外国人嫌悪に満ちた「移民アンケート」を実施

MigSzol demonstration in Budapest Photo credit: Anna Vörös Source: MigSzol Facebook page (https://www.facebook.com/migszolcsoport?fref=ts)

ブタペストで行われたMigSzolの抗議活動。写真撮影:ヴェレシュ・アンナ MigSzolのFacebookページから、許可を得て転載。

[リンクの飛び先には日本語以外のページも含まれます。]

命がけで地中海を渡りヨーロッパとの国境にたどり着こうと押し寄せる人々の波について、ヨーロッパは対応策を模索している。そんな中、ハンガリー政府はこの数週間、極めて憎悪感情の強い反移民の主張を唱えて異質な存在となっている。

2015年5月初頭、オルバーン・ヴィクトル首相の主導の下、ハンガリー政府は移民に対する意見を調査するため、12項目から成るアンケートを800万を超える世帯へと郵送した。政府のウェブサイトによれば、このアンケートの目的は、政策を変更する際にどの程度国民の支持が得られるか事前に調査することだという。しかし、じっくりと検証するまでもなく、このアンケートの主な質問の裏には、偏見と外国人嫌悪が透けて見える。

アンケートが届くと、多くのハンガリー人がソーシャルメディアにコメントを寄せ、アンケートの質問はテロの問題と移民の問題を強固に結びつけることで恐怖をあおっている、と述べた。実のところ、1番目の質問は、ISIS(過激派組織「イスラム国」)や死傷者が出たパリのシャルリー・エブド襲撃事件に関するもので、移住や移民についてはまったく触れていない。

Sokféle véleményt lehet hallani az erősödő terrorcselekményekkel kapcsolatban. Ön mennyire tartja fontosnak a terrorizmus térnyerését (a franciaországi vérengzés, az ISIS riasztó cselekményei) a saját élete szempontjából?

【質問 1】ますます悪化しているテロリズムについては、さまざまな意見があります。フランスでの流血事件やISISの恐ろしい行為など、テロの拡大について、ご自身の生活とどのくらい関係があると思いますか?

EUも批判の対象となった。アンケートは、EU移民政策の「失態」を非難し、ハンガリー政府が独自に、より厳格なルールを導入することを提案している。

2) Ön szerint az elkövetkező években lehet-e terrorcselekmény célpontja Magyarország?

3) Vannak, akik szerint a Brüsszel által rosszul kezelt bevándorlás összefüggésben van a terrorizmus térnyerésével. Ön egyetért ezekkel a véleményekkel?

[…]

7) Támogatná-e Ön a magyar kormányt, hogy Brüsszel megengedő politikájával szemben szigorúbb bevándorlási szabályozást vezessen be?

【質問 2】今後数年で、ハンガリーがテロの攻撃目標となる可能性があると思いますか?

【質問 3】EUによる移民問題対応の失敗が、テロの増大を招いたという意見があります。この意見に賛成ですか?

[中略]

【質問 7】EUの手ぬるい方針とは反対に、ハンガリー政府がより厳しい移民規制を導入することに賛成ですか?

正規移民と不正規移民の境界を曖昧にし、移民はハンガリー人から経済的な機会を奪う脅威であるという先入観を植え付けようとする質問もある。

4) Tudta-e Ön, hogy a megélhetési bevándorlók törvénytelenül lépik át a magyar határt és az elmúlt időszakban húszszorosára nőt a bevándorlók száma Magyarországon?

5) Sokféle véleményt hallani a bevándorlás kérdésével kapcsolatban. Vannak, akik szerint a megélhetési bevándorlók veszélyeztetik a magyar emberek munkahelyeit és megélhetését! Ön egyetért ezekkel a véleményekkel?

【質問 4】経済移民(訳注:生活水準の向上を求め他国へ移住する人のこと)が、ハンガリーに不法入国していることを知っていましたか? また、最近ハンガリー国内の移民数が20倍に増えたことを知っていましたか?

【質問 5】移民問題については、さまざまな意見があります。経済移民が、ハンガリー人の雇用と生活を脅かしているという意見もあります。この意見に賛成ですか?

「最近、ハンガリー国内の移民数が20倍に増えた」という単純な文章でさえ、「最近」とは実際いつのことなのか? この質問が指す「移民」とはどのタイプの移民のことなのか? 「20倍」とは何と比較しての20倍なのか? という疑問が浮かばずにはいられない。亡命希望者の数は、2013年の1万9000人から2014年の4万2000人へと、実際増加はしている。しかし国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、亡命が許可されたり亡命申請が審査中の人の数はわずか4000人ほどだという。

国庫から9億6千万フォリント(約4億3千万円)支出して作られたこのアンケートは、上記で見たようにさまざまな方法で回答者を巧みに誘導している。もっとも露骨なのは回答の選択肢についてで、本来他にも選択肢はあるべきなのに、回答者にそれ以外の選択肢はないように見せかけている。質問内容によって多少のバリエーションはあるものの、回答の選択肢は「全面的に賛成」「どちらかと言ったら賛成」「反対」の3つしかなく、その内の2つは政府に有利な回答となっている。「どちらかと言ったら反対」という回答は、あやしいことに選択肢から抜け落ちている。

政府は、このアンケート結果を公表する予定はないようだ。

「外国人排斥にNo!」

事情に詳しい筋によると、強硬な右翼路線の発言が増えた背景には、オルバン首相と与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」の政治基盤が弱体化していることがあるという。2015年2月、ヴェスプレーム選挙区において、「フィデス=キリスト教民主人民党」連立の議員が欧州委員会の役職に就くことになり、その穴を埋めるための補欠選挙が行われた。選挙では無所属候補が勝利し、その結果「フィデス・ハンガリー市民連盟」は、議会の3分の2というそれまでの圧倒的多数を失うことになった。

オルバン首相は、増加する経済移民がハンガリーに与えたとされる悪影響を強調したが、そのうえ今度は先月ハンガリー南西部の町カポシュヴァールで発生した殺人事件を受けて「死刑再開の検討」も提言した。死刑は、EUでは禁止されている。

移民に対するハンガリー政府の攻撃的な発言。それに加えての今回のアンケートで、ハンガリーの市民や社会の間には反発の気運が広がった。

オルバン首相が主導し、物議を醸した「移民とテロリズム」に関するアンケートに反対して、ブタペストで行われた抗議活動の様子。「外国人排斥にNoを!」

5月19日、ブタペストを拠点に移民難民の権利を擁護するNGO「MigSzol」がデモを組織した。そこで参加者たちは、このアンケートの用紙で紙の舟を折りドナウ川に浮かべるように言われた。参加者の数は1000人を越え、MigSzolのFacebookページによると、同団体のウェブサイトへのアクセスは急上昇したという。

Hungarian protesters launch paper boats made out of pages of the biased questionnaire, to represent the lost lives of illegal migrants. Photo by Anna Vörös, courtesy of MigSzol Facebook page, used with permission.

ハンガリーでデモ参加者たちが、偏見に満ちたアンケートの用紙を折って作った紙の舟。参加者たちは、これを亡くなった不法移民たちの命に見立てて、川面に浮かべた。写真撮影:アンナ・ヴェレシュ MigSzolのFacebookページから、許可を得て転載。

ハンガリー・ヘルシンキ委員会(訳注:人権擁護NGOのひとつ)は、アンケート内に見られる偏見に注目を集めようと、Tumblr(タンブラー)でブログを始めた。このブログでは、ハンガリー国内およびヨーロッパにおける移民の現状についての真実を伝えると共に、アンケートをボイコットする方法や、アンケートに見られる外国人嫌悪に抗議する方法を、一般市民に教えている。またこのブログの中でハンガリーの市民は、海外移住や迫害、亡命といった、それぞれの家族がくぐり抜けた過去の経験を共有することもできる。

見せかけだけの、移民に関するアンケートに抗議を! #bevandorlovagyok(私は移民だ)

上記画像の説明:私はラヨシュ(ラヨシュ・コシュート。ハンガリーの革命家)、亡命者だ。もし母国ハンガリーに送還されれば絞首刑だろう。「全国民アンケート」? そんなもの、未回答のまま送り返せ。

今拡散中のハッシュタグ #bevandorlovagyok(私は移民だ)も含め、これらの取り組みの狙いは、ハンガリー人がさまざまなバックグラウンドを持った人々の集まりだということを人々に思い起こさせることだ。世界全体にも言えるが、中欧や東欧も、民族的多様性に満ち、歴史的に人口移動を繰り返してきた地域だ。しかし疎外や敵意といったものが政治的意図であおられると、人々はその事実から目をそらすようになってしまう。MigSzolが行ったアンケートへの抗議活動そのままに、私たち人間は、小さな折り紙の舟のようなものだ。世界的混迷という大河の川面に漂いながら、常により安全な港を目指す。

Adelman(ユダヤ人の姓)、Lux(ドイツ人の姓)、Bene、Kiss(典型的なハンガリー人の姓)といった苗字。ズデーデン・ドイツ人、上ハンガリー(現スロヴァキア)のザクセン人(ドイツ人)、イタリア人、クマン人(テュルク系の遊牧民だったがハンガリーに定住し、ハンガリー人に同化した民族。現在ではハンガリー人の一派)、ユダヤ人、クロアチア人…… #polimultikulti(非常に多文化な社会) #bevándorlóvagyok(私は移民だ)
[これは Arató Gergely(アラトー・ゲルゲイ)が恐らく自分の血に入っている先祖を挙げたものだと思われる。]

  • 大賀英斗

    アンケートの7つめの質問のGoogle訳
    あなたはブリュッセルルールを課すことを可能にする厳格な移民政策を課すこと、ハンガリー政府をサポートするかどうか?

    誰もあなたがたの翻訳のように「EUの”手ぬるい”政策」とはいっていない

    ハンガリー政府国民を誘導させようとしてるように見せその政府が煽っているように見せるるのはやめなさい

    • 大賀英斗

      訂正
      ハンガリー政府が国民を
      見せるのは

    • HUKAYA Sitosi

      【『質問7」の訳について】

      7] Támogatná-e Ön a magyar kormányt, hogy Brüsszel megengedő politikájával szemben szigorúbb bevándorlási szabályozást vezessen be?

      ▶ Takako Nose 訳

      【質問 7】EUの手ぬるい方針とは反対に、ハンガリー政府がより厳しい移民規制を導入することに賛成ですか?

      ▶ 大賀英斗 訳

      あなたはブリュッセルルールを課すことを可能にする厳格な移民政策を課すこと、ハンガリー政府をサポートするかどうか?

      ▶ 深谷訳

      ブリュッセルの寛容な政策に対してより厳格な入国規制をハンガリー政府が導入することに賛成されますか?

      Nose さんが何語から訳されたのかは存じ上げません。大賀さんは Google 翻訳を使われたようですが、Google 翻訳は全く使い物になりません。(確かに Google 翻訳ではそのような訳になることを確認いたしました。)Nose さんの訳は微妙なニュアンスの面はさておいて、ほぼ正確な訳といえるでしょう。私ですか? 私は直接ハンガリー語の原文から訳しています。

      大賀> ハンガリー政府国民を誘導させようとしてるように見せその政府が煽っているように見せるるのはやめなさい

      オルバーン政権のこのアンケートは明確に国民の範囲民間上を煽ろうと煽っています。いずれにせよ、「Google の訳ではこういう結果が出てあなたの訳とは違っているようなのですが、どうなんでしょうか?」のように訊ねるのは構いませんが、ご自分で検証する能力の無い誤訳を基にして、見知らぬ他人に「やめなさい」のように命令するのはいかがなものでしょうか? 実際に日常で相手に面と向かって吐けない言葉はネットでも使うべきではないと思います。

      なお、参考のため。Bing では以下のように翻訳されました:

      ▶ Bing 訳

      厳格な入国管理規則に対してブリュッセルにハンガリーの政府を支持して紹介することは

      いかがです? Google も Bing も全く使い物にならないでしょう?

  • HUKAYA Sitosi

    翻訳ご苦労様です。ただし、以下の点を訂正させてください。

    ハンガリー人は姓を先に表記します。ただし、日本人同様英語では名姓に倒置する場合が多いです。Facebook 等では、これまた日本人同様、姓名の順で表記する者ばかりではなく、名姓で表記している者も結構多いです。注意が必要です。

    なお、ハンガリー語では日本語同様母音の長短を区別します。日本の新聞等の表記を信じてはいけません。Wikipedia で確認するか、Wikipedia でも確認できなかった場合にはハンガリー語の専門家に問い合わせましょう!

    ▶ 写真撮影:アンナ・ヴェレシュ→写真撮影:ヴェレシュ・アンナ

    ▶ ヴィクトル・オルバン首相→オルバーン・ヴィクトル首相

    ▶ ラヨシュ・コシュート→コシュート・ラヨシュ

    ▶ Adelman, Lux, Bene, Kiss szudétavidéki német, felvédéki szász, olasz, kun, zsidó, horvát…

    Adelman、Lux、Bene、Kissといった苗字(これらはハンガリー伝統の苗字ではなく、中・東欧エリアにルーツを持つ苗字)。チェコのズデーデン地方出身のドイツ人、スコットランドのハイランド地方出身のイングランド人、イタリア人、キプチャク人(訳注:テュルク系遊牧民)、ユダヤ人、クロアチア人……

      ↓

    Adelman(ユダヤ人の姓)、Lux(ドイツ人の姓)、Bene、Kiss(典型的なハンガリー人の姓)、ズデーデン・ドイツ人、上ハンガリー(現スロヴァキア)のザクセン人(ドイツ人)、イタリア人、クマン人(テュルク系の遊牧民だったがハンガリーに定住し、ハンガリー人に同化した民族。現在ではハンガリー人の一派)、ユダヤ人、クロアチア人…

    [これは Arató Gergely(アラトー・ゲルゲイ)が恐らく自分の血に入っている先祖を挙げたものだと思われる。]

  • IzumiMihashi

    グローバル・ボイス日本語の責任者の三橋と申します。
    HURUTA さま、大賀さま、どうもご指摘ありがとうございます。
    グローバル・ボイスは日本語で提供されている記事は、
    まず原語を読み書きできる人が英語で記事を書き、引用箇所も英語に訳して
    英語で公開した上で、さらに英語から日本語に訳すという流れで
    日本語での公開に至っております。ともに訳しているのは原語と英語、
    英語と日本語それぞれに通じている翻訳者です。

    大賀さまのご指摘については、ハンガリー語から英語への翻訳担当者に
    確認し、英語版や日本語版を修正する必要はないということを確認いたしました。
    ハンガリー語と日本語は(HURUTAさまには釈迦に説法かと思いますが)系列的に
    かなり異なる言葉であり、自動翻訳ではかなり情報が落ちたり変な文章になったり
    してしまいます。自動翻訳と違った訳でも直ちに間違えとはいえないこと、
    ご了承くださればと思います。

    HURUTAさまにご指摘いただいた固有名詞の表記については、当方でも
    これから調査をして、修正いたします。

    どうもありがとうございました。

    • HUKAYA Sitosi

      三橋様

      「HURUTA さま」というのはたぶん、私、「深谷」(HUKAYA) のことですよね (^^;)?

      > ハンガリー語と日本語は(HURUTAさまには釈迦に説法かと思いますが)系列的に

      かなり異なる言葉であり

      恐らく「系列的」は「系統的」の意味だと推察いたしますが、ハンガリー語と日本語は系統論的には同系であるとの証明は全くなされていないため、親縁関係は(今のところ)存在しないというのが言語学の立場ですが、ハンガリー語と日本語は「類型論」的には同じ類型の言語で、文法や発想方法、表現方法、統語法、等うり二つの言語で、ほぼ直訳が可能で、日本人には非常に修得が楽な言語です。

      Google 翻訳等はメタ言語に英語を介していると想像しておりますが、そのために「ハンガリー語⇔日本語」訳はシッチャカメッチャカになってしまうのだと思われます。(もっとも同系言語同士であるはずの仏文英訳や独文英訳でも、ほとんど意味不明の訳になってしまいますが…(^”^;)。)

      大変、貴重なお仕事、感服・感謝いたします。これからも頑張ってください。

      • IzumiMihashi

        深谷さま

        お名前書き間違えまして非常に失礼いたしました。
        なるほど、わたしは系統だけみて判断していたのですが、日本語に文法的には近い言葉なのですね。少し興味がわきました。ご説明ありがとうございます。
        また記事についてお気づきのことありましたらぜひ教えてください。

        三橋

        • HUKAYA Sitosi

          三橋様

          私は他のサイトの偶然このページを発見しただけで、なかなか全てのネットの書き込みに気付けるわけではありません。ただし(物凄い他力本願ですが (^-^;)ゞ)そちらで「○○国(ないし、○○語)の専門家」のようなデータベースを作成されて、該当する分野の記事の場合には事前にそれらの方々の強力を仰ぐようにされれば、ハンガリーやハンガリー語に関しては喜んで協力させていただきます。(私、英語は全くできませんので、英語から翻訳する作業までは無理です (^◇^;)。)

          まぁ、そんなことでいちいち専門家にチェックなんかやってられっかと言うことも手間的には事実だと思いますが…。むかし、『朝日新聞』の外報部長から「発行部数○○万部の天下の朝日が書いたら、それが定訳なんだよ!」と啖呵を切られたことがあります (^”^;)。

          ハンガリー語やポーランド語、ルーマニア語などのマイナーな言語をやっている者たちが翻訳をする時には、英語以外の固有名詞などが出てきた時には徹底して正しい表記法を調べます。通常その分野の専門家にコンタクトを取ります。理由は「正確」でありたいという欲求と、日頃から自分たちの専門分野の固有名詞の表記がおかしいのに不満を感じているからです。ところが、英独仏の大言語の翻訳者たちはそれらの地域以外の固有名詞も自分らの専門言語の読みで表記するのをためらいません。

          「ブラッセル」とか「モスコー」、「ワルソー」、「ダニューブ川」等の表記を見る度にいらだちます。

          ハンガリー関係の記事では「19世紀の革命家コサス」という表記があって「??」となりましたが、Kossuth Lajos [ˈkoʃuːtˌlɒjoʃ](コシュート・ラヨシュ)のことでした (^^;)。

          『世界の文化地理』〈第6巻〉「東ヨーロッパ」 (1966年、講談社)だったかな? 「モハックス」という地名が出てきたので、やはり「??」となっていたのですが、「ハンガリーの関ヶ原の戦い」に当たる1526年8月29日の「モハーチの戦い」の「モハーチ」(Mohács) [ˈmohɑ̈ːt͡ʃ] でした (^◇^;)。

          実は、「固有名詞」に関しては、英米仏の大言語の翻訳者でも気を付ける人は結構気をつけてくださるのですが、意外と盲点なのが組織名です。

          例えばハンガリーの országgyűlés [ˈorsɑ̈ːɡɟuːle̝ːʃ] は言葉通り「国会」(ország [ˈorsɑ̈ːɡ] 国+gyűlés [ˈɟuːle̝ːʃ] 集会)なのですが、日本の新聞などは英訳の「national assembly」から「国民議会」と訳してしまいます。実はハンガリー語では「国会」と「国民議会」(nemzeti gyűlés) [ˈnemzɛtiˌɟuːle̝ːʃ] とは歴史的に区別されているのです。しかし、常に「英語」を「正本」と考える日本のマスコミには通用しません (-_-;)。

          ジャーナリストの藤村 信(熊田 亨)等もハンガリー系ユダヤ人の Fejtő Ferenc [ˈfɛjtøːˌfɛrɛnt͡s](フェイテー・フェレンツ)(本名 Fischl Fülöp Ferenc [ˈfiʃl̩]ˌfyløpˌɛrɛnt͡s] フィシュル・フュレプ・フェレンツ)がフランス語で書いた著書を日本語に訳す時に(西洋人の下の名前は翻訳可能なので)フランス語風に表記した François Fejtő をフランス語読みして「フランソワ・フェイト」として日本に紹介していましたが、その訳書の中で、ハンガリーの「国立ブダペスト工科大学」(Budapesti Műszaki Egyetem) がフランス語では École Polytechnique de Budapest で訳されていたようで、藤村氏は日本語には確か(おぼろげな記憶ですが)「ブダペスト・ポリテクニーク」のように訳していたと記憶しています。フランス語のポリテクニークは通常の工科大学とは違うので、彼は「工科大学」とは訳したくなかったのでしょうが、問題はブダペスト工科大学はフランスの大学ではないということなんですね。

          このような仲介言語のニュアンスに引きずられた組織名の誤訳が結構見られるのです。

          テレビ局などでも固有名詞は確認の問い合わせなどがあっても、「国会」とか他の組織名などは英語から「わかる」と思い込んで問い合わせてきません。あるハンガリー紹介のテレビ番組を見ていたら、なんと BGM にハンガリーの民俗音楽ではなく、バルカンの南スラヴ人(ハンガリー人はウラル系民族でインドヨーロッパ語族の民族とは全く無関係。音楽のタイプも全然違う)が流れてのけ反りました。ディレクターに確認したら「だって、ハンガリーの CD 屋の『民俗音楽』のコーナーで買ったんだもの。ハンガリーの民俗音楽かと思った (^◇^;)」と弁解していました (-_-;)。

          ハンガリーではありませんが、先日、ルーマニア領トランシルヴァニアのルーマニア語名シビウ、ハンガリー語名ナジセベン、ドイツ語名ヘルマンシュタットの紹介番組をテレビで視ました。そこで BGM で流れていたのはルーマニア人の民俗音楽でした! ヘルマンシュタットはドイツ人の町なので、ドイツ人の民俗音楽を流さないとおかしいのですよね。どうしても日本人は国籍 (citizenship) と民族籍 (nationality) を混同してしまいがちなので、そういうことになってしまうのだと思います。

          と言うわけで、ご協力できることがあれば、いつもで協力いたしますのでご遠慮なくお申し出ください。専門言語はハンガリー語で、専門地域は歴史的ハンガリー全域(ルーマニア、スロヴァキア、クロアチア、セルビア、オーストリアを含む)です。