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シンガポールでLGBTを支援するビデオ放送禁止へ

カテゴリー: 東アジア, シンガポール, 同性愛者の権利 (LGBT), 市民メディア, 芸術・文化
ジョーリン・ツァイの 'We’re All Different, Yet The Same' のミュージックビデオからの一場面

ジョーリン・ツァイの ’We’re All Different, Yet The Same’ のミュージックビデオの一場面

シンガポール政府のメディア開発庁は、同国の放送局に対しあるミュージックビデオの放映を「成人向けの内容」であるとして差し止めるよう忠告したことを 認めた [1]

報告によって判明したのは台湾ポップシンガーであるジョーリン・ツァイの “We’re All Different, Yet The Same” [2] (わたしたちはみな違う、でも同じ)という楽曲のミュージックビデオがシンガポールで放送禁止になったということだ。

メディア開発庁はテレビやラジオ放送局にこの曲を放送しないように伝えてきた。報告 [3]によると、歌詞が同性カップルの結婚が異性カップルの結婚と同等になるよう支援する内容のため、現地の法律では違法になってしまうからだそうだ。ミュージックビデオの内容は、レズビアンのカップルが30年間に渡って生活を共にしていたというものだ。

シンガポールでは長い間ゲイに関する権利についての議論が行われている。民衆はまだまだ保守的でLGBTの権利を受け入れていないと、幾度となく政治家は主張してきた。男性同士でのセックスを違法とするシンガポール刑法377A条が違憲であるとの申し立ては、昨年国の最高裁に却下された。

ミュージックビデオの禁止は一部のシンガポール人に支持された。支持の中心はピンクドット [4]などLGBTを支援するイベントに反対する人々である。Facebookページの「私たちはシンガポールのピンクドットに反対します」 [5]アディ・アスホール [6]はこう述べている。

What is the purpose of this marriage? To be happy for today? To satisfy their needs for today? What about tomorrow? Who will take care of their old age needs being childless (don't talk about adoption cos the child is the offspring of a man and wife). What about the next generation – same sex marriage means, simply put, the end of the road for them. Marriage is about procreation, about a system of family with children, about education, about the future of mankind. Marriage between man and woman is the foundation of the future of mankind. This IS the core value people must NOT forget.

結婚の目的とは、一体なんでしょうか?今日一日を幸せにするため?今日一日の欲求を満たすため?明日はどうなるのでしょうか?老後に助けが必要になったとき、子供がいないのに誰が面倒をみるのでしょう(子供とは男とその妻の間に出来た子孫であるので養子については触れない)?次の世代についてはどうでしょう。同性婚とは、単純に、彼らにとって行き止まりなのです。結婚とは繁殖を意味し、子供のいる家族というシステムであり、教育であり、人類の未来であります。これは人々が必ず忘れてはならない本質的な価値であります。

今回のビデオ放送禁止のニュースが広まったのは、アイルランドにおいて国民投票で同性婚が認められた日であったため、多くのシンガポール人が苛立ちを表明した。

メディア開発庁がジョーリン・ツァイのビデオを放送禁止にしたことで、ビデオが注目されることを願っている。禁止は馬鹿げているし、ビデオには素晴らしいメッセージが込められている。

この国のLGBTに対するひどい姿勢には私は憤りを感じる。シンガポールは自ら世界初のグローバルシティと称しているけど、2015年の今でもまだまだ視野が狭い。

シンガポールで同性婚についてのビデオが禁止されたまさにその日にアイルランドで同性婚が認められることになったなんて、なんて皮肉なんでしょう。

LGBT活動家/ブロガーであるアレックス・オー [11]はMDAの決断を批判している。

By contrast, the MDA’s move is not just regressive, it is risibly petty and self-defeating. Like many people, I had never heard of this song before. But now, it is being shared by many on social media. I am pretty sure Pink Dot organisers are thinking of a way to weave it into this year’s event.

Do they think Singapore can remain exactly where we are while the world moves on?

アイルランドに比べて、メディア開発局がしたことは遅れているだけではなく、笑えるほどしみったれていますし、自分で自分を不利にしています。たいていの人がそうでしょうが、わたしはこの曲をまったく聞いたことがありませんでした。それがどうでしょう。いまでは多数のソーシャルメディアでシェアされているのです。ピンクドットの主催者たちはきっと今年のイベントにこのことをどう盛り込むか考えている事かと思います。[中略]メディア開発庁の人々は、世界は動き続けているのにシンガポールは今のままでいることが出来ると思っているのでしょうか。