アンゴラのジャーナリスト、自身の受賞作「ブラッド・ダイヤモンド」が原因で裁判へ

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先月、ラファエル・マルケス・デ・モライスはIndex on Censorship(訳注:検閲に関する問題を扱う雑誌)のジャーナリズムの表現の自由賞 を受賞した。それは故郷アンゴラにて彼が行った、「衝撃的かつ独創的で、揺るぎない調査によるジャーナリズム」に対するものだ。そして彼は明日(訳注 : 2015年4月23日を示す)、法廷に立つ。彼のジャーナリストとしての仕事が理由で法に触れる名誉毀損の訴えが多数あるからだ。

マルケス・デ・モライスは授賞式でのスピーチで、彼が信じる「人々が団結することから生まれる力」ついて述べた。また、この賞をエチオピアにいる同職者のエスキンダー・ネガとリーヨット・アレムに捧げた。彼らは現在、表現の自由の権利を行使したために投獄されている。

マルケス・デ・モライスは、既に20年以上アンゴラの調査ジャーナリストとして突出した存在で、彼自身の調査のニュースサイト「マカ・アンゴラ」だけではなく、加えて国内外のメディアのためにも働く。
彼が裁判にかけられている原因は、彼の著書「ブラッド・ダイヤモンド : アンゴラの腐敗と搾取」だ(訳注 :日本語では「紛争ダイヤモンド」、「血塗られたダイヤモンド」の名でも知られる)。
この本は、ジャーナリズムによる真剣な調査結果としてだけでなく、人権問題に関して非常に重大な意味を持つ報道として評価された。
この本は、アンゴラでのダイヤモンド採掘活動の際に起きたアンゴラの軍将たちによる多くの人権侵害を記録したものだ。また、この調査書はアンゴラの経済について、あまり公にされる傾向にない分野に焦点を当てている。
マルケス・デ・モライスがこれらのことを調査した結果として、総額160万ドルの罰金と9年の禁固刑が求刑されている。
これは人権侵害に関わる事件を世間に公表した行為に対する不当な刑罰である。彼の裁判は、4月23日にアンゴラのルアンダ州の法廷で始まる。

批判的報道に対するこれまでの有罪判決

マルケス・デ・モライスはこの手の弾圧を受けるのは初めてではない。1999年、彼は当時の大統領ドス・サントスへの批判的な記事を、アンゴラの独立系の新聞紙「Agora」上に3度に渡り発表した。彼はその記事で「大統領は国の破壊の原因を招いた」と述べ、さらに国の政治の不能さ、蔓延する汚職を助長させたと非難した。マルケス・デ・モライスは43日間告訴無しで投獄された後に起訴され、大統領への「侮辱罪」で有罪と見なされた。そして6ヶ月間の執行猶予、賠償金の支払いが命じられた。
自由権規約人権委員会(United Nations Human Rights Committee)はこの刑事制裁の厳しさについて、「社会の秩序、または大統領の名誉と名声を守るための措置であるとは捉え難い。なぜなら大統領は公の人物として、その存在自体が民衆の非難や抗議の対象であるからだ」と論じた。

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2015年、表現の自由に基づき報道したジャーナリストに与えられる、Index on Censorship賞の受賞会場にて。ラファエル・マルケス・デ・モライス、サファー・アハマド、アムラン・アブダンディ、ムアド・「エル ハクド」ベルグアト(グローバル・ボイス、アドボカシーメンバー、訳注: L7a9d または El Haqedという名でモロッコのラッパー、及び人権活動家として活動)、写真はアレックス・ブレナーより。

ブラッド・ダイヤモンド : アンゴラ国内での汚職と拷問

2000年上旬、 マルケス・デ・モライスはアンゴラ国内での紛争ダイヤモンドの取引について調査し、アンゴラのルンダ地方での人権侵害を暴いた。そして2011年、彼は「ブラッド・ダイヤモンド : アンゴラの汚職と拷問(原題 : Diamantes de sangue: Corrupção e tortura em Angola )」を、ポルトガルで出版した。この本には、ルンダ地方にあるダイヤモンド採掘現場地域で18ヶ月以上働かされた住民から報告された殺人、拷問、脅迫、そして土地収用について、詳細に記されている(訳注 : 土地収用とは特定公共事業に必要な土地に対し、国などが法律に定める事柄に基づいてその所有権・使用権を所有者から強制的に取得すること。デジタル大辞泉参照)。本の内容には、500件の拷問と、100件の殺人に関する前代未聞の報告が含まれていた。この本によると、民間の警備会社の警備員とアンゴラ軍の数人の軍将が、これら残虐行為の共犯者だということだ。

2011年11月、マルケス・デ・モライスはルアンダにて、ルンダ地方でのダイヤモンド採掘活動に関する人道に反する行為と汚職の罪で9人のアンゴラ軍将校を非難し、刑事告発した。しかし司法長官は、犠牲者たちが与えたというその情報はマルケス・デ・モライスがすでに彼の著書の中で書いたもので、それ以上には「新しい情報がただの1つも含まれていない」ので「価値のないものである」と述べ、その告発を退けた。

ポルトガル、アンゴラでの刑事訴訟

2012年、アンゴラ軍のあるグループがポルトガルにてマルケス・デ・モライスに対し、彼が書いた本を理由に名誉毀損の罪で告訴した。2013年2月11日、ポルトガルの検察庁は、マルケス・デ・モライス氏の「意図は明らかに伝達することであり名誉毀損ではない」と述べ、事件を追求しない判断を下し告訴した張本人である軍将たちを失望させた。2013年3月、リスボン法廷に軍将らは民事訴訟請求を提出した。それはマルケス・デ・モライス氏の本に書かれた内容が名誉毀損だと主張し、40万ドルの賠償金を請求するものだ。

ポルトガルで民事訴訟がまだ継続中の2013年4月3日、マルケス・デ・モライスは、アンゴラ・ルアンダの国際警察犯罪組織ユニットの尋問に応ずるよう命じられた。彼は法的な委任状もなく召喚され、自身の弁護士が同席していない際に尋問され、さらに彼は、彼に対して集められた証拠がどういったものかについてまったく知らされてはいなかった。この一連の法律に反する召喚と検察側との対談が終わった後で、マルケス・デ・モライスは自分の裁判が2014年12月に行われることを最終的に知らされた。結局この裁判所での審問は、アンゴラの関係機関によって延期された。それは、海外からの裁判参加者と彼の支援者らが審理に列席するのを防ごうとする試みからによるのは明らかだ。

アンゴラは人権に関して、アフリカ憲章を守らなければならない

2014年の終わりアフリカ人権裁判所は、表現の自由が与えられることを前提とし、憎しみまたは暴力への煽りになるようなごく限られた状況下でのみ唯一、拘留措置を合法とする事を決定付けた。そして、そういった犯罪行為に対するすべての制裁が行われる場合は、罰金も含め問題となっている犯罪行為に対して不可欠であり相応でなければならないとも述べた。

その行動は明らかに言論の自由に対する攻撃の意味を持つにも関わらず、アンゴラの権力者たちはマルケス・デ・モライスを名誉毀損罪で罰を与えようとしている。この言論の自由の権利はアフリカ憲章(訳注 : 主に人権を守るためのもの)9条の下、アフリカの法廷でも承認され、同様にその権利はアンゴラ国内においても法的拘束力を持つものだ。人々が関心を持つ事件を発表した事で9ヶ月もの間彼は拘留刑を受けているだけではなく、彼が現在受けているこの刑罰に関して、関係当局者たちがなぜそんなに厳しい罰を与えるのか、納得のできる合法的な理由は何一つ見当たらない。

ジョナサン・マッカリーは訴訟、並びにジャーナリスト、ブロガー、そして独立したメディアの権利を守るために活動する国際的な法的支援組織Media Legal Defence Initiative (通称MLDI)のプロジェクトサポートの一員だ。この記事の作者、ナニ・ジャンセンはMLDIの法務ディレクターだ。

校正:Maki Kitazawa

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