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パレスチナ:昨夏の犠牲者を哀悼するアート・プロジェクト

カテゴリー: 中東・北アフリカ, 西ヨーロッパ, イギリス, パレスチナ, 人権, 市民メディア, 戦争・紛争, 芸術・文化

(リンク先には英語のページも含まれます)

Portraits of Gaza's victims by Kerry Beall

ケリー・ベルが描いた、ガザの犠牲者の肖像画(出典:Beyond Words Gaza [1]

「ほら、起きて! おもちゃを買ってきたよ、お願いだから目を開けてくれ!」

これは、サヒール・サルマン・アブ・ナムースが病院へ担ぎ込まれるときに、父親が掛けた言葉 [2]だ。イスラエルの爆弾の破片が当たって頭の半分が吹き飛ばされ、4歳のサヒールはすでに息がなかった。2014年7月11日、ガザ北部のタル・アル=ザータル地区にあるサヒールの家に、イスラエル戦闘機が爆弾を落とした。ガザは3日前に戦闘状態に入ったばかりで、すでに犠牲者が130人を超えていた。このうち21人は子どもである。この流血の惨状において、51日間で2000人以上のパレスチナ人が死亡 [3]したとみられる。

続きを読む:ガザ無期限停戦(2014) [4]

Sahir with his sibling (Source: Electronic Intifada). The image of Sahir's death is too brutal to show here.

サヒールときょうだい(出典:Electronic Intifada [2])。サヒールの遺体の写真はあまりにもむごい姿で、ここには掲載できない

サヒールの死はケリー・ベル [5]を突き動かした。英国ブライトン出身のアーティストであるベルは、アート・プロジェクト「Beyond Words [6](言葉にできない)」を開始した。昨年の夏にパレスチナで命を落とした人々の肖像画を描くという試みである。ベルは自分がどれほど衝撃を受けたのかを、グローバル・ボイスに語った。

It all started when I read the story of Sahir Abu Namous, in a news tweet on Twitter. One of his relatives was explaining how he had died. He was only four. It wasn't another depersonalised report, it was real. It was a family member's plea of desperation and hopelessness. It was so raw,5 in that moment it hit me like a ton of bricks.

Twitterのニュースツイートで、サヒール・アブ・ナムースの話を読んだことからすべては始まりました。サヒールがどんな死に方をしたのか、肉親の一人が語ったものです。サヒールはたったの4歳でした。顔の見えない他のレポートとは違い、実にリアルに感じました。絶望し、自暴自棄になった家族の嘆きの声でした。あまりにも生々しく、これを読んだ瞬間、私は猛烈なショックを受けました。

Sahir Abu Namous' Portrait

サヒール・アブ・ナムースの肖像画(出典:Beyond Words Gaza [1]

Beyond Words [6]はキックスターターで資金を募っている。目標金額は3000ポンド(約58万円)、期限は7月末だ。ベルはこの資金を「肖像画を額装するための材料代や、ガザへの輸送代、作品を収蔵・譲渡するための展示スペースの準備」に使いたいとしている [6]

I think I'm probably not alone when I say I felt completely helpless. It's just so devastating, the sheer amount of innocent men, women and children's lives just evaporating. It's a tough and overwhelming thing to think about and I, perhaps like others, often disconnect from it it so I can function in my own life.

But that day, it struck a chord that I couldn't switch off from.

I felt compelled to do something, so I painted him. I had no idea what the response would be as it's such a sensitive topic.

I showed the portrait to his family and they loved it. It reinforced that urge to take action, so I've gone on to paint many more lives that have been lost.

まったく孤軍奮闘している状態ですが、きっと私は一人ではないと信じています。ただこれは、あまりにも悲惨な出来事です。 膨大な人数の、罪もない老若男女の命が消えてなくなってしまうなんて。残念ながら考えてもどうしようもないことだと、私も他の人たちと同じように思考をオフにするときもあります。そうしないと自分自身の人生を送ることができないからです。

しかしあの日、心に訴えてくるものを無視することはできませんでした。

何かをしなければという気持ちになって、その少年の絵を描きました。かなりデリケートなテーマなので、どんな反響があるか予想もつきませんでした。

しかし、肖像画を遺族に見せたところ気に入ってもらえたのです。そのことで行動を起こしたい思いが強くなり、失われてしまった命の絵をさらにたくさん描き始めたのです。

ベルは感謝の言葉でこう締めくくっている。

The reaction has been amazing, with every positive comment it reinforces the motivation I have for this project. I've been so fortunate along the way with people enthusiastic to help the project move forward. For example my friend Dan, who has been keen to get involved in spreading the word of the project, Simon and Robin from Bristol who produced the video.

Mohammed Zeyara who kindly shared the video for the project which has helped a great deal in spreading the word. A great feeling of warmth and support has been shown by the people of Palestine, and I feel I've made friends along the way with Iman, Shareef and DiaaMahmoud, who have shown invaluable support towards the project.

反響は驚くべきものでした。肯定的なコメントばかりで、このプロジェクトに対する意欲がさらに高まりました。これまで、計画の進行を熱心に手助けしてくれる人たちに恵まれ、私はとても幸運だったと思います。名前を挙げるとするなら、友人のダンはこのプロジェクトが世界中に広がるよう尽力してくれましたし、ブリストルのサイモンとロビンは動画を制作してくれました。

また、ムハンマド・ゼヤラがこのプロジェクトの動画をシェアしてくれたおかげで、世界へ大きく広めることができました。そして、パレスチナの人々からもとても寛大な支持が得られました。これまでに友人になれた、イマン、シャリーフ、ディアーマフムードには、このプロジェクトに対して計り知れないほどの支援をしてもらいました。

今までに完成した肖像画をいくつか紹介する。他の画像はBeyond WordsのFacebookページ [1]で見ることができる。

Mohamed Sabri Atallah, 21 years old

ムハンマド・サブリ・アタラー、21歳

Sara Omar Ahmed Sheikh al-Eid, 4 years old.

サラ・オマール・アハメド・シェイク・アル・イード、4歳

Samar Al-Hallaq, 29 years old

サマール・アル・ハッラーク、29歳

Hindi Shadi Abu Harbied, 10 years old.

ヒンディ・シャディ・アブ・ハルビード、10歳

校正:Hiroyuki Koike [7]