サハラ以南アフリカ、地方の電力普及率は10%未満。仏企業が変革に挑む

(原文掲載日は2014年9月5日です。リンク先には日本語以外のページも含まれます)

Solar panel in Bazaruto island, Mozambique - by Cotrim. Public Domain CCO

モザンビーク、バザルト島で利用されている太陽光パネル(写真:Cotrim. Public Domain CC0)

2014年夏、世界銀行はアフリカの発電能力を有効活用するために50億ドルの支援をおこなうと発表した。この計画では電源候補のなかから水力発電に重点を置いている。アフリカの地域経済は急速に拡大しているが、深刻な電力不足が発展の足かせとなっている。

電力を利用できる人を増やすために数々の計画が官民でおこなわれているが、気が遠くなるほどの課題が山積している。アフリカ大陸には世界人口の15%が住むが、世界の電力消費に占める割合は3%に過ぎない。資金不足とインフラの未整備という現状を踏まえると、官民が一体となって、アフリカに活力をもたらし、開発に向けた取り組みをまとめていかなければならない。大陸中のニーズに応えるにはあらゆる分野が力をあわせてギャップを埋めることで、僻地に暮らすすべての人が電力を利用できるようになる。フランス電力公社(EDF)が電化プロジェクトをアフリカで多数おこなっているのはその一例だ。

サハラ以南アフリカでは電力を利用できる地方住民は10%に満たない

今日のアフリカは将来有望で天然資源も豊富な発展途上の若い大陸である。一方、ほとんどの国が電力不足であるために「永遠の闇に包まれた社会」という詩的な呼ばれ方をすることもある。2014年時点でも約6億人が電力を利用できず、アフリカ大陸の電力普及率は約42%である。

この数字は新興国の中で最も低い部類だが、最低ではなかったにしても、極端な地域差が見られる。北西アフリカ(マグレブ)の99%が電力を利用できるのに対し、サハラ以南アフリカでは31%に留まる。さらに都市部と地方を隔てる格差問題もある。都市部の69%は電化されている一方、地方の電力普及率は25%に過ぎない。こうした理由から、サハラ以南では電気の恩恵を受けている地方住民は10%未満である。

こうした数字からは、投資の呼び込みと国内の電力会社の維持に奮闘しながら、資本不足に苦しむアフリカの姿がうかがわれる。利益を求めるにも、人口の70%が1日2ドル以下で生活している貧困と、最低限の電力消費に必要な支出さえまかなえない売上見込みとに投資家は直面することになる。加えて、発電事業者は大型で老朽化する設備を稼働せねばならず、電力小売りに特化して商売するわけにもいかない。こうした資本不足を受けて、開発支援という形でNGOや国際社会が官民をあげて電化プロジェクトに関わっている。

太陽エネルギーがもたらす大きな進歩

アフリカの電力普及率の低さは、アフリカに降り注ぐ莫大な量の太陽光を理由に、世界中の太陽光発電関係者を巻き込む重要課題になっている。2010年、モザンビークは韓国から350億ドルの借款を得た[dead link]。この資金協力で3カ所の太陽光発電所を建設し電力供給能力を高める計画だ。また、仏電気通信グループのオランジュも事業に乗り出し、地方の広範囲にアンテナを1300カ所設置して住民が携帯電話を充電できるようにした。

アフリカ、主にサハラ以南アフリカで電力普及を考える際、天然資源を有効活用した再生可能エネルギーこそ、ニーズに応えるものだと捉えられることが多い。米投資家30人は2014年6月上旬、サハラ以南アフリカで太陽光発電施設および水力発電所の開発に10億ドルという巨額の出資をおこなう考えを示した。5年間で、この資金はエネルギー分野のアフリカ人専門家の育成にも使われ、さらに投資を募って地域の発電事業者を支援する。アーネスト・モニズ米エネルギー長官は次のように述べた

Access to centralized networks of electricity is not a comprehensive solution for these countries located on one of the least urbanized continents […] But with solutions including off-grid and small-scale projects, we can bring electricity to the rural areas.

中央集中型の送電網を採用するのは、都市化の遅れている大陸にとって適切な解決策とは言えない[…]しかし、オフグリッド(訳注:送電網から独立して使用する電気システム)や小規模な事業であれば、地方にも電力を普及できる。

EDF、シュナイダーエレクトリックら仏産業界が地方に投資

EDFは、世界銀行グループである国際金融公社(IFC)に最近参加し、サハラ以南アフリカの地方住民50万人への電力供給を目指す。アンリ・プログリオの下、EDFはオフグリッドの導入を進めている。オフグリッドは費用が安く、電力を自給できるメリットがある。最近ベニンでテスト段階に入り、ディーゼルと太陽光発電のハイブリッド網とバイオエネルギーの供給設備を使い、2万5000人の利用を目指す。EDFのエドワール・ダオメーは、電力について次のように語っている

Un produit vital sans lequel aucun vrai développement n’est possible. L’accès à l’énergie des populations rurales, souvent les plus défavorisées, permet de réduire la pauvreté en développant les activités génératrices de revenus, mais aussi l’éducation, la santé, l’accès à l’eau etc.

大変重要でこれなしには真の発展はありえない。最貧の地方住民がエネルギーを利用できるようになることで、収益活動や教育、健康状態、水へのアクセスなどが改善され、貧困を削減させることができる場合が多い。

EDFはさらにプロジェクトを増やしており、実践的な知識からより多くの国が恩恵を得られるようにする。ボツワナにおいては、国の電力事業者であるボツワナ電力公社から選定を受け、地方で分散型の電力普及をおこなう計画に取り組む。仏環境・エネルギー管理庁(ADEME)とEDFは、マリでサービス地方分権化協会(SDS)を設立、地元の法律事務所と組んでエネルギーサービスの提供を目指す。SDSは地域の20村落に電力を普及することをミッションとし、電源にディーゼルと太陽光を利用した低・中電圧マイクロ発電設備を使用する。EDFはモロッコセネガルにおける環境配慮型プロジェクトの経験が豊富にある。

フランスのコングロマリットで、アフリカの市場性に目を付けているのはEDFだけではない。仏電機メーカー大手シュナイダーエレクトリックも事業を立ち上げている。2013年、「限られた投資でもアフリカで利用可能な電力量を増やす」ソリューションを導入すると意欲をみせた。この計画は「スマートシティー」と名付けられ、既存の送電網の更新とあわせて再生可能エネルギー資源を展開することで、アフリカ都市部の消費エネルギーの30%を節減する。

シュナイダーエレクトリックのアフリカ法人社長Mohammed Saadいわく

Le défi consiste non seulement à produire plus d’électricité, mais aussi à générer une énergie intelligente afin de permettre une croissance intelligente en Afrique. 

この挑戦は単に発電量を増やすだけではなく、賢くエネルギーを生み出すことで環境に配慮したアフリカの成長を実現する。

アフリカの地方電力事業の投資回収率(ROI)は依然として低いが、こうした取り組みはアフリカ諸国の成長を支え、5億8900万人を超える規模の市場を生む可能性をもっている。実現のためには、さらに多くの投資を呼び込む必要がある。世界銀行の予測では、2030年までに家庭で電力を利用できるようになるのはアフリカの人口の60%に満たない。アフリカ大陸全体のエネルギー需要を満たすには毎年400億ユーロを投資する必要がある。

校正:Yoko Kawakami

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