(原文掲載日は2013年12月24日であり、記事内容は当時の状況を反映している。)
ご飯、汁物、野菜を中心とした構成、概ね薄口で繊細な種々の風味が特徴である日本の伝統的料理「和食」の存在が、全世界に広がりつつある。2013年12月、日本の伝統的料理の調理法、盛り付け、食事作法を含めた「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
当時アメリカから日本へ移住したばかりだったグローバル・ボイス寄稿者Taylor Cazellaが、日本に行ったら外せない、意外と知られていないおいしい食べ物やトレンドを紹介する。
1、パンと日本のベーカリー
日本は他のアジア諸国同様、米が主食であり、社会経済学史上も、米は重要な役割を担ってきた。近代までは製造貨幣の代わりに、納税目的にさえ使われた。明治維新以降、日本の食事は急速に西洋化されていく。パンが普及し、今では米にかわって、日本の食文化の重要な地位を占めるようにまでなっている。数多く存在する日本のベーカリーへ行けば、手の込んだ商品の豊富さがわかるだろう。おいしいスイーツからフランス式のバケット、海老サンドやソーセージ入りのパンが揃っているのだ。
それに加えて、日本のベーカリーでは、創作パンも数多く存在する。例えば「あんぱん」と呼ばれる、小豆あんをつめたよくある菓子パンや、日本式のカレーがつまった揚げパンの「カレーパン」である。また、パンの消費量に対抗すべく、米を使った商品も存在する。日本国内で収穫された米の消費拡大を目指し、一般的なパンに加えて、「米パン」と呼ばれる米粉を使った商品を取り扱う店もあるのだ。
2、日本式にひねりのきいたアイスクリーム
日本食と聞いて真っ先にアイスクリームを思い浮かべる人はまずいないだろう。しかしながら日本には、かの有名な米国アイスクリーム専門店サーティーワンのメニューの31種類にも入っていないような、日本でしか味わえない夏のお供が数多く存在する。日本でよく見かけるのは、抹茶やさくら、サツマイモ、黒ゴマにユズ(柑橘類の一種で、マンダリンオレンジとレモンを合わせたような味)である。
地元の特産品を使用した日本でしか食べられない、知る人ぞ知る風変わりな味もある。例えば、馬刺しやウナギ、ワサビなど、特産品の原産地にある土産物屋で買うことができる。
3、激辛ラーメンとスパイシーフード
日本食は刺激が少ない優しい味で有名だが、時には味気がないと言われることもある。しかし、何でもひとまとめにして物を言う人は、間違いなく、激辛ラーメンを食べたことがないのだろう。激辛ラーメンとは、日本でよく食べられているラーメンを刺激の強い調味料で味付けしたものである。挑戦者は汗だく必至! カレーについては、本場インドにくらべ、日本のものは比較的甘くて辛みは少ないと言われている。しかし中には、カレーの辛さを変えられる店もあるので、辛さのレベルを引き上げれば一撃をくらうこと間違いなし。
4、生卵
日本食の特徴のひとつに、生のまま食べられるほど新鮮な素材が多いことが挙げられる。もっとも有名な例としては、寿司に使われる加熱処理をしていない魚介類であるが、それ以外にも様々な料理によく使われている。
例えば生卵。いろいろな料理に使われていて、ご飯の上にのせたり、うどんにつけて食べているのをよく見かける。このことは、日本食を一通り試食しようというアメリカ人にとって困惑することのひとつであることはほぼ間違いない。なぜならば、アメリカでは幼い頃から、細心の注意を払って卵を扱うようにと教育されるためである。食中毒にならないよう、生卵を触った後には必ず手を洗う、他の食品に生卵を付着させない、卵は冷蔵庫で保管する、そして何より生卵をそのまま食べてはいけないと教わるのだ。そのため、日本に来たアメリカ人は、常温のまま食品棚に並べられた卵を目にしたり、レストランでまるっきり生の卵が出てきたりすると大きなショックを受けるのだ。
しかしこのことから、清潔な環境で育った健康な鶏から採れた卵であり、扱いに気をつければ、我々が生卵を食べても全く問題ないということがわかる。だから一度は、おもしろい名前のついた「親子丼」を食べてみていただきたい。それは、火を通した鶏肉(親)と煮詰めたたまねぎをご飯にのせて、その上に生卵(子)をかけた丼物である。(※)
5、お好み焼きと大衆料理
日本とは、上品で繊細な、最高級の料理を求めて世界中のグルメや食通が集う場所である。しかしこのことは、日本料理に対する誤解につながっている。というのも、庶民が日常的に食べている、安くておいしい大衆料理が海外ではほとんど知られていないのだから。
大衆料理の代表格といえば、お好み焼きである。焼き方や具材は地域によって差が見られるが、それもそのはず。お好み焼きとはその名の通り、「自分のお好みで調理する」ものなのだ。とは言うものの、基本的なお好み焼きが存在する。色々な野菜(基本はキャベツ、にんじん(※)、ねぎ)と肉(基本はイカ、豚肉、エビ、牛肉)を一口大に切り、パンケーキのような生地と混ぜ合わせ、鉄板の上で調理する。焼き上がったら、お好みの調味料(バーベキューソースのようなものやマヨネーズ、青のり、かつおぶしを用いることが多い)で味付けする。
お好み焼きは金属製のヘラで小さく切り分け、友達や家族と分け合って食べられる。そう考えると、お好み焼きが食べられる居酒屋やレストランは、人との付き合いを楽しむ場であるように思われる。事実、多くの店では、具材を注文してテーブル備え付けの鉄板を使う方式で、常連客たちに自分たちでお好み焼きを調理させてくれる。日本の他の大衆料理でも、このセルフサービス方式は珍しくなく、不動の人気を誇るタコ焼きもその一つだ。
6、ウイスキー!
れっきとした飲み物であるにもかかわらず、日本料理に関する記事にウイスキーが出てくると、書く場所を間違えているとお思いになる人がいるかもしれない。しかし、フランス料理について語る時に、フレンチワインについて触れないことがあるだろうか。料理と酒には、深い結びつきがあるものだ。日本と言えば「日本酒」のイメージが強いが、日本人の上質なウイスキーに対する思い入れの強さにはいささか驚かされる。日本のウイスキー蒸留所では、本場のスコッチウイスキーに挑戦し続ける、最高級ウイスキーが生産されており、ブラインドテイスティングやウイスキーの国際大会で頂点に輝くこともよくあるのだ。
人口の多い都市では、外国産や国内産のウイスキーを味わえるウイスキーバーも珍しくはない。ウイスキーハイボール(タンブラーグラスに氷を入れ、そこにウイスキーとジンジャーエールもしくは炭酸水を注ぐ)は、自由気ままな生活を楽しむ若者から落ち着きのあるサラリーマンまで、人気のあるカクテルなのだ。そして最近(訳注:原文掲載は2013年12月)では、ハイボールが日本の飲料メーカーであるサントリーのCM「ハイカラ」(「ハイボール」と、おつまみの「からあげ」)で、流行語の一部にまでなった。
7、おつまみ 酒と料理のマリアージュ
日本では酒は、それ単体で飲むことは滅多になく、必ずと言って良いほど、ある種の食べ物と一緒に楽しむものである。日本の居酒屋やレストランでお酒を頼むと、無料で(※)ポテトサラダやグリルチキンが出てくるので驚くかもしれないが、これは至って普通のことである。酒はつまんで食べられるものと一緒に楽しむ、という暗黙のルールが存在するのだ。そのため、酒を飲む際に添える食品「つまみ」という独立したカテゴリーが作られ売られている。このようなものは「おつまみ」としてよく知られている。動詞の「摘む」(指先ではさむ)からきた言葉で、指でつまんで食べられるものが多いことによる。
日本がアルコールに寛容な社会であることは有名だ。たいていの場所で酒が手に入るし、いたるところにある自動販売機でも買うことができる。そして、日常的に酒を飲むことも、生活の一部として許されている。このような理由から、おつまみの人気は高く、いろいろな種類のものが売られているのだ。おつまみ初心者は、無難なものから始めると良い。例えばミックスナッツや枝豆だ。ただし、さきいかやイワシの丸干しといったより珍しいおつまみも、それはそれで魅力的だ。
食に対する好みや伝統的な日本食への考え方がどのようなものであっても、またはこうあるべきだという考えがあったとしても、和食とは、寿司や白米だけではなく、もっと奥が深いものなのだ。日本料理は広大で、素晴らしい。一言で言い表せるようなものではなく、今もなお進化し続けているのだ。日本食に対する探究心があれば、きっと想像以上のものに出会えるはずだ。
ニュージャージー出身のtaylor Cazellaは現在(訳注:2013年12月当時)、三重県最南端に位置する地域に住んでおり、地元高校でALTとして勤務している。
(※)事実誤認と疑われる箇所もありますが、原文の記述に従いました。