オーストラリア、クイーンズランド州のフレイザー島 [2]で、アボリジナル [3]の人々が5000年前からそこに住んでいた可能性を示す証拠が発見された。ずっとこの土地の主であったバッチュラ人は、素晴らしい自然に恵まれた彼らの島をクガリと呼んだ。それは「楽園」という意味だ。
しかし、開拓者たちがこの島にやって来てから、バッチュラ人は苦難に直面することとなった。結局、開拓者たちはこの島の先住民をその土地から追い出してしまった。
この時期はバッチュラ語にとっても受難の日々だった。使用を禁じる政府の政策やキリスト教団のせいで、20世紀にはほとんど絶滅状態に追いやられてしまったのだ。バッチュラ言語プログラムによって現在、バッチュラ語復興の取り組みが進められている。そのおかげで、この言語は復活してきている。このプログラムは辞書 [4]や音楽CDなどいろいろと新しい資料を生み出しているし、地方図書館での会話教室 [5] などの活動を企画・運営してきた。それが助力となって、若い人たちがこの言語に関心を持つようになってきている。
デジタル・メディアやインターネットもまた、この復興の取り組みで大きな役割を演じている。ABC Openの企画サイト「Mother Tongue(母語) [6]」を見ればそのことがわかる。そこでは地域社会の人々とオーストラリア放送協会(ABC)の制作者が協同して、アボリジナル語復興に焦点を当てた参加型のビデオ番組を制作している。
そのようなコラボの1つがジョイス・ボナーとABC Openの制作者ブラッド・マーセラス [7]によるものだ。ジョイス・ボナーはハーベィ湾地区のコロウィンガ・アボリジナル・コーポレーション [8] (訳注:バッチュラ言語プログラムはその活動の一部)所属の共同体言語学者である。2人はこのビデオを共同制作し、ボナー自身の母親が歌う伝統的なバッチュラの子守唄 [9]を紹介している。
「ねむれ おさなご おやすみなさい」 歌:ジョイ・ボナー 「ABC Open Wide Bay」より
Yunma-n Walabai, Walbai Yunma-n
Bula walalbai mil nhaa Biral
Bula walalbai binang buranga ngunda yaalam
Kalim walalbai dunam yaalam galangoor
Yunma-n walalbai walbai yunman
Yunma-n walalbai walbai yunman
Yunma-n walalbai walbai yunman
かわいい目ふたつ 神さまのおすがたをごらん
かわいい耳ふたつ 神さまのおことばをおきき
かわいい舌ひとつ ほんとうのことをおはなし
ねむれ おさなご おやすみなさい
ねむれ おさなご おやすみなさい
ねむれ おさなご おやすみなさい
2人はまた、身体部位の名称についてのバッチュラ語の教則ビデオ [10]も共同制作した。
「Mother Tongue バッチュラ語」 「ABC Open Wide Bay」より
このようなビデオはバッチュラ言語復興の戦略の一部である。バッチュラ語プログラムの発端と成功の秘訣についてはこのサイト [11] のボナーへのインタビューをご覧いただきたい。