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キューバ製の肺がんワクチンがアメリカ人を救う?

カテゴリー: ラテンアメリカ, 北アメリカ, アメリカ, キューバ, 健康, 市民メディア

(原文掲載日は2015年5月27日です。また、記事中のリンク先はすべて英語のページです)

Plaza de la Revolución, Havana. Photo by Martin Abegglen, used under a CC License from Wikimedia Commons. [1]

ハバナの革命広場。Martin Abegglen撮影。ウィキメディア・コモンズよりクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて使用

この記事とラジオ放送音声は、当初、シーリーン・ジャアファリー [2]により「ザ・ワールド [3]」向けに制作され、2015年5月12日にPRI.orgのサイト上で公開 [4]されたものです。コンテンツ共有の合意のもとにグローバルボイスに転載しています。

ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモはこのほどキューバを訪問し、滞在中にある合意書に署名をした。この契約は、多くのアメリカ人の寿命を変えるかもしれない。

ニューヨークのロズウェル・パークがん研究所は、キューバの分子免疫学センターと提携し、キューバで開発されたCimavaxという待望の肺がんワクチンについて試験を実施する考えだ。米国とキューバの関係が改善しつつある現在、米国はそのワクチンが役に立つものかどうか見極めたいと思っている。

「Cimavaxは治療に有効なワクチンだ」Wiredの編集者で、このワクチンについて記事を書いたニール・V・パテルはこう述べる。「一般的に、ワクチンは病気になるのを防ぐものだと思われている。しかしCimavaxは、免疫システムに刺激を与えるだけで、がんに対する反応性を高め、腫瘍をより効果的な方法で攻撃できるようにする」

契約を結んだことによって、米国の研究者は臨床試験の証拠資料や毒性報告書を閲覧できるようになり、それを使って食品医療品局(FDA)に提出する申請書を作成することができる。もし認可されれば、ロズウェル・パークがん研究所は臨床試験を始められる。

米国内でワクチンを入手できるようになるまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。申請がそろって不承認とされる可能性もある。だがそうなったとしても、そもそもキューバはどうやってそのワクチンを開発できたのかという疑問はいくらか残る。

キューバは長年にわたって厳しい通商禁止令を課されており、肺がんのワクチンを開発するのは容易ではないはずだ。パテルは、ハーバード大学医学大学院のポール・ドレインにその点について話を聞いた。ドレインは、キューバの医学およびバイオテクノロジーの研究者である。

「ドレインの話では、キューバはこんな砂箱のようなものの中に閉じ込められていたせいで、その砂箱の中でなんとかするしかなかったのではないか、ということだ」とパテルは言う。

他の言い方をすれば、何らかの制限を加えることによって独創性が増す場合もあるということだ。

キューバの指導者フィデルとラウルのカストロ兄弟は、常に2つのことを大事にしてきた。教育と医療である。パテルによると、たとえば1980年代にキューバでデング熱ウイルスが広がったとき、ワクチン接種が大きな注目を集めたという。キューバは現在、最もワクチン接種率の高い国のひとつで、多くのワクチンを自国で開発している。

科学担当記者としてパテルは、キューバには米国が恩恵を受けられるものとして、他にどんな医学の進歩があるのかと考える。

「それがここ数十年の状況における問題のひとつだ。誰も本当のところどうなっているかわからない」と彼は言う。

だがキューバと米国の関係が改善に向かうことで、両国がたがいに恩恵を受けられる医学的および科学的交流がさらに増えることを彼は期待している。

校正:Rie Tamaki [5]