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「このクラスで再び人に感謝することを学んだ」―学校を良くするための革新的な取り組み

カテゴリー: 西ヨーロッパ, フランス, テクノロジー, 市民メディア, 意見, 教育, 朗報, 芸術・文化, 若者
High School St Nazaire via Vincent Tim CC-BY-20 [1]

サン・ナゼール高校 写真はヴィンセント・ティムによる。CC-BY-20l

必修科目なし、成績評価なし。さらに生徒たちは学校の運営と秩序を保つ権限を与えられている。

これがハリウッドのコメディ映画 [2]「Accepted」 [2]での話だとしたら納得もいくだろう。しかし、フランス西部にある サン・ナゼール高校 [3]の生徒たちにとってこれは現実の話だ。

フランスの高校で問題となっている暴力と中退に歯止めをかけるため、革新的なサン・ナゼール高校は独特な解決策を30年間提案し続けてきた。その間多くの策が提案されてきたが、サン・ナゼール高校のそれは他と根本的に違っていた。サン・ナゼール高校には19人の教職員とおよそ180人の生徒が在籍している。組織体制が非階層的で、校長、理事長、秘書、そして用務員が存在しない。生徒と教師がすべてを運営する自己組織である。

180人の生徒のほとんどが貧しい生い立ちだ。それにもかかわらず、学校は生徒たちにカリキュラムを受け入れさせ、そして学業を最後までやり通させることに比較的成功 [4] している。2008年には、12人の候補者のうち11人が 学年末試験に合格 [5] し、フランスの高校卒業資格であるバカロレアを取得した。 以下のビデオでは生徒たちが、学校がどう機能し、なぜ自分たちでg学校を運営する取り組みにひかれたのかを語っている。

ノルウェン・ワイラーは社会問題や環境問題に焦点を置いているフランスの独立系オンラインニュースサイト「Bastamag」のライターだ。彼は学校側とのインタビューから意思決定の過程についてニュースサイトに掲載した。 インタビューを受けた学生、ルーシーは、 学生食堂の経営 [6]について紹介した。

«Tous les matins, on fait une cagnotte, explique Lucie, élève en 1ère. Chacun donne ce qu’il veut, ou peut. On fait les courses et le menu en fonction de la somme récoltée. » Mise en place sur la proposition d’un élève, la cuisine du lycée fait maintenant partie des incontournables. C’est même un gros poste pour l’équipe en charge de la gestion. « On gère le lycée par quinzaine, précise Lucie. Chaque équipe de gestion compte une vingtaine d’élèves et trois “mee” (pour “membre de l’équipe éducative”).

「毎朝私たちは生徒からランチのお金を集めるの。生徒それぞれが自分の食べたいものをリクエストするの。それで集まった金額に応じてメニューの食材を買いに行くのよ。」と11年生のルーシーは説明した。このプロセスは生徒の提案に基づいて実施されたものだ。学食は今や校内で一番運営状態のよい活動となっている。差し当たり学食はマネージメントチームにとってメインプロジェクトだ。「マネージメントチームは2週間ごとに交代するのよ。それぞれのマネージメントチームは20人の生徒と3人の教職員で構成されているの」とルーシーは言う。

students and teachers together via les échos de la presqu'ile -CC-BY-20 [7]

生徒と先生一緒に。写真はles échos de la presqu'ileによる。CC-BY-20

次期カリキュラムのコース選択や学校の予算も生徒と教職員でともに決定する。これは学校にとって慎重な選択だ。しかし「バイクの乗り方は教本では学べない」と教師の1人がコメントした [6]ように、実際にカリキュラムや予算に関わらなければ、学校運営を知ることはできない。

さらに重要なのは、標準的な学校環境で苦労をした生徒たちに、学校が再びチャンスを与えるということだ。

生徒のアイメリクは以下のように経験を振り返る。

J'étais turbulent et impertinent. Ici, j’ai ré-appris à apprécier les gens, tous les gens. J’ai découvert qu’il y a du bon en chacun.

「僕は子供の頃、問題を抱えていて、ひねくれていたんだ。でもここで、人に、そう、すべての人に感謝することを再び学んだんだよ。誰にでもよいところがあるとわかったんだ。」

エルワンはこう付け加えた。 [6]

Dans les autres établissements, les relations entre élèves sont dures. Ici, c’est facile de créer des liens. Il n’y a pas d’effets de meute, avec un élève qui s’en prend plein la gueule. On peut vivre sa vie sans que personne ne nous embête.

「他の学校では生徒同士の関係が難しい。この学校では他の学校より生徒同士仲良くなるのが簡単なんだ。集団心理やいじめがないからね。誰かから干渉されたり、けんかを売られたりすることなく自分のままでいられるんだ。」

サン・ナゼール高校の教師クリストフ・ジュアンは、教室の仕組みが意見の交換を容易にさせると言う。また、学習を充実させるために時々外部から専門家を招待する [8]と言う。

Lors de nos travaux de groupes, membres de l’équipe éducative et élèves ont réalisé, ensemble et comme des pairs, la lecture et les échanges qui s’en suivent. Au cours du projet sciences, une collaboration s’est installée avec Isabelle Drouet, enseignante chercheuse en philosophie des sciences et en logique. Le groupe s’est à plusieurs reprises penché sur des articles publiés par notre intervenante.

「グループワークの間、教職員と生徒は共に力を出し合って、資料を読んだり、分析したりします。ある科学プロジェクトでは、倫理・科学哲学の研究者イザベル・ドルーエと共同研究を行いました。そのグループは彼女の論文を徹底的に分析しました。」

しかしながら、サン・ナゼール高校が実践している取り組みが、フランスの教育システムすべての病を治すことができる普遍的モデルとして受け止められることに対し、同校の教師ピエールは注意を喚起している。

Je ne pense pas que ce soit la panacée, ici. Mais sur l’absence de violences, sur l’enseignement sans notes, sur l’interdisciplinarité, sur la démocratie, on expérimente. Ce sont des sujets sur lesquels on a quelques petites choses à dire.

「私はこのアプローチが最も重要な解決策だとは思いません。しかし、暴力、ノートなしで教えること、学際的な取り組み、そして民主的意思決定などについて、私たちはこれまでいくつかの調査と実験を行ってきました。こうした取り組みに関しては多少の見識があります。」

 

校正:Saki Takasuka [9]