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「自分はソマリア人である前に、カナダ人」:ソマリアからの難民が、カナダで国会議員に

カテゴリー: サハラ以南アフリカ, 北アメリカ, カナダ, ソマリア, 市民メディア, 政治, 移住と移民, 難民
Justin Trudeau on the campaign trail, visiting then-candidate Ahmed Hussen in his Toronto district. Ahmed Hussen won the race, becoming Canada's first member of parliament of Somali descent.  Credit: Adam Scotti. Used with PRI's permission.

選挙遊説中のジャスティン・トルドー氏(写真右)が、トロントの選挙区から立候補していたアフメド・フセイン氏に激励の声をかける様子。フセイン氏はこの選挙で当選、それにより、カナダの国会にソマリア出身の議員が初めて誕生した。写真クレジット:アダム・スコッティ PRIの許可を得て掲載

この記事とラジオ放送音声は、当初、キャロル・ヒルズ氏 [1]により「ザ・ワールド」 [2]向けに制作され、2015年10月22日にPRI.orgのサイト上で公開 [3]されたものです。コンテンツ共有の合意のもとにグローバル・ボイスに転載しています。

 

1993年、当時16歳だったアフメド・フセイン氏は、たった一人でソマリアからの難民としてカナダに到着した。今では弁護士かつ二児の父親でもあるフセイン氏。彼は今週(訳注:2015年10月第4週)、ソマリア出身者として初めて、カナダの国会議員に当選した。

「すばらしい快挙だと思います」とフセイン氏は言う。「カナダは世界でもっともすばらしい国のひとつだということが示されたのです。この国では、社会の主流にすんなりと融け込めるし、自分がなりたいもの何にでもなれるんです」

フセイン氏は、移民が非常に多いヨーク・サウスウェストン選挙区から選出された。カナダ国内に、ソマリア系カナダ人は約15万人いると言われている。「ソマリア系カナダ人のコミュニティは、比較的最近できたのものですし、またどちらかというと閉鎖的な傾向にあります。そんなコミュニティにとって、今回の選挙戦の勝利は、ソマリア系カナダ人や、または私といっしょに活動してきた若者たちの多くに、自分たちにももっとできるはずだという自信を与えてくれたのではと思っています」

フセイン氏の国会議員への道のりは、まるでホレイショ・アルジャー [4]の小説のカナダ版を読むかのようだ(アルジャーはアメリカの小説家で、少年が正直さと勤勉でもって貧困から抜け出すという小説を多数書いたことで有名)。10代の時ソマリアからカナダにやって来たフセイン氏は、高校卒業後、家族と公営住宅に住み、低賃金の仕事をして大学へ行くための学費を稼いた。同氏はまた地元政治家のボランティアとしても働いたが、それが有給の仕事へとつながり、やがてカナダ自由党の候補者の下で働くことになった。この候補者はのちにオンタリオ州首相となったが、フセイン氏は、カナダ・ソマリア議会の会長に就任しコミュニティを取りまとめるため、この仕事を辞めた。だがフセイン氏は頑として次の主張を譲らない。「自分はまず、カナダ人。その次にソマリア人なのです」

アメリカはよくメルティングポットだと言われるが、カナダは違う言い方にこだわる。モザイクだ。

「メルティングポットとは、やって来た人々がみな、1つの巨大な穴の中にただ吸い込まれるということです」とフセイン氏は語る。「カナダでは、それぞれの伝統と文化を大切にすることが奨励されます。でも同時に、人権の尊重や少数派の尊重などといった、カナダ人共通の価値観も大事にしようとするのです」

アメリカ同様、カナダも世界中から集まった人々で成り立っており、カナダの強さはその多様性から来ているのだ、とフセイン氏は言う。「宗教や民族の違いから分裂してしまった国々と違い、カナダはどういうわけか、その違いにもかかわらず、おおむね強く団結できているのです」

フセイン氏いわく、カナダのソマリア人コミュニティは、ソマリア人ならではの強みを持ち込んでいるという。「ソマリアには、強い起業の伝統があります。過去に事業が失敗している分野に、積極的にビジネス上のリスクを取りにいくのです。ソマリア人は、この起業精神をカナダに持ち来んだのです」。同氏によると、アルバータ州エドモントンの街では、ソマリア系カナダ人が、小規模なビジネスやレストラン、店を始めたことで、そのエリア全体が再び活気を取り戻したという。

カナダのソマリア人コミュニティにも問題がないわけではなく、失業率や貧困、若者の暴力といった課題を抱えている。カナダ当局によると、カナダの若者がソマリアを拠点とする武装組織アルシャバブに参加しようとするのを止めたケースがいくつかあるという。しかしフセイン氏によると、その数はとても少ないという。「ソマリア系カナダ人コミュニティの大多数の人は、前に向かって進んでいます。社会に融け込んでいっているのです。若い人たちは大学を卒業していますし、仕事に就けるチャンスもどんどん広がっているのです」

校正:Masato Kaneko [5]