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アカデミー賞に輝いたドナルドダックのアニメ映画、ロシアでの配信は違法

カテゴリー: 東・中央ヨーロッパ, アメリカ, ロシア, ユーモア, 市民メディア, 戦争・紛争, 検閲, 芸術・文化, RuNet Echo
Screen capture: Walt Disney, "Der Fuehrer's Face" (1942) / YouTube [1]

ウォルト・ディズニー「総統の顔」(1942) YouTube動画からのスクリーンショット

トムスク在住の男性2人が、インターネット上に違法な過激派資料を配信したとして有罪判決 [2]を受けた。彼らが配信したのは白人至上主義バンドの楽曲数点に加えて、1942年に公開されたウォルト・ディズニー制作の反ファシストアニメ映画 総統の顔 [1] である。ドナルドダックを主人公とするこのアニメは、同年にアカデミー短編アニメ賞を受賞 [3]した。

男性2人は犯行を認め [4]後悔していると供述 [5]した上で、2013年の夏に冗談のつもりで動画を配信したと述べた。判決では両名に3,000ルーブル(約5,500円)の罰金が言い渡された。ロシア連邦行政違反法典第20.29条「過激派資料の制作と保存」に対する最高15日の拘留刑は科されなかった。

ロシアでは2010年12月以降、このドナルドダックのアニメが配信禁止となっている。カムチャツカ裁判所が国の違法過激派資料リストに追加したからだ。このアニメはセルゲイ・セミヨノフという男が配信した 多数の人種差別的動画 [6]と併せてリストに追加された。(今回、偶然にもトムスク検察局がドナルドダックの名前を国の過激派資料リストと異なるスペルで記載した [7]。スペルが異なる2つの作品名は、法的に異なる作品のように見える。)

Screen Shot 2015-09-06 at 1.25.17 PM [1]

人種差別的に描写された「敵国の日本人」。
ウォルト・ディズニー「総統の顔」(1942) YouTube動画からのスクリーンショット

モスクワを拠点とする人種差別犯罪監視団体SOVAによれば、セミヨノフの他動画以外にもこのディズニーアニメが配信禁止となったことで、当局が実は彼の動画をひとつひとつ見ていないことがわかったという。SOVAはホームページ上で こう [8]述べている。「今回の事件で国のリストは無用なものであり、逆に法的文書として危険性があることが明らかになった。最善の解決策はリストを全て削除することであろう。」

総統の顔 の主人公は、ファシズム政権下で暮らすドナルドダック。銃口を向けられて、工場のラインで爆弾の組み立てをするよう命令される。そして、目に映るアドルフ・ヒトラーの肖像画全てに敬礼するよう強制され、しなければ処刑すると脅されるのだ。このアニメは戦線があったドイツと日本両国に対する米国の戦時プロパガンダを踏まえており、日本人を人種差別的に描写している。ラストシーンで目覚めたドナルドダックは、全部夢であって本当は米国に住んでいることに気づきミニチュアの自由の女神像を抱きしめて、最後の台詞を言う。「アメリカ合衆国国民で本当に良かった!」

校正:Maki Ikawa [9]