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タイで発行されたニューヨーク・タイムズ紙の1面に空白 軍事政権の影響及ぶ

カテゴリー: 東アジア, タイ, メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 政治, 検閲, 言論の自由
通常の2015年12月1日付国際版ニューヨーク・タイムズ紙(右)タイで販売された同紙。画像とキャプションはプラチャタイによるもの [1]

通常の2015年12月1日付国際版ニューヨーク・タイムズ紙(右)タイで販売された同紙。画像とキャプションはプラチャタイによるもの

この記事はタイの独立系ニュースサイト、プラチャタイ [1]の記事をコンテンツ共有の同意のもと編集し、グローバルボイスにおいて再掲載する。

国際版ニューヨーク・タイムズ紙の1面から、軍の支配下におけるタイ経済の停滞について報じた記事が、タイの印刷会社によって削除された。

タイの新聞の売店には、1面中央部分が空白のままの2015年12月1日付ニューヨーク・タイムズ紙が並んだ。

見出しと文章の代わりに空白の紙面には簡単な一文が添えられている。

The article in this space was removed by our printer in Thailand. The International New York Times and its editorial staff had no role in its removal.

このスペースにあった記事はタイの印刷会社によって削除されました。国際版ニューヨーク・タイムズ紙とその編集者は同記事の削除について一切関知していません。

タイの印刷業者が削除を行ったものは、「タイ経済の落ち込み」というトーマス・フラーが書いた 最新記事 [2]である。

フラーが書いた記事は、2015年はタイでの窃盗事件の発生割合が60パーセント以上も増えていること。また、長引く政治的混乱に加え、プラユット・チャンオチャ将軍の現軍事政権のもとでは、東南アジアで2番目の経済力を持つ展望は厳しいだろうという内容である。将軍は軍事政権のリーダー及び首相で、2014年5月のクーデターを企てた人物である。

タイで発行されたニューヨーク・タイムズ紙の一面に空白が:地元印刷会社が記事を削除

今日のタイの国際版ニューヨーク・タイムズ紙

タイ版にはこの記事は載っていないよ > 経済的にも精神的にも落ち込むタイ

2015年9月にも、この印刷業者は今回の記事と同じ筆者が書いた記事を含む9月22日付の国際版ニューヨーク・タイムズ紙の発行を拒否した。問題の記事のタイトルと国王の肖像を掲げた黄色のシャツの親体制派の写真があまりにもデリケートであるという理由からである。

その記事は2015年12月5日に88歳になるプミポン国王の健康状態と、タイ王室の行く末について触れたものであった。

この出来事のすぐ後にニューヨーク・タイムズ社は、2016年のタイで同紙の発行はもう行わないと発表した。

2014年タイの当局は、英国のタブロイド紙、デイリー・メール紙のウェブサイトへのアクセスを禁止した。タイ皇太子の記事を載せたためである。

タイ王室を批判する記事は、1つの罪状につき最大15年間の禁固刑に処される刑法第112条いわゆる「不敬罪法」のもと、タイでは今でも厳しく禁止されている。

クーデターの後、不敬罪法違反は軍事裁判所によって裁かれるようになり、控訴は認められなくなっている。

2015年8月、タイの軍事裁判所はソーシャルネットワーク上でタイの王室を中傷したために罪に問われた男性に(公衆または報道関係者に対して)非公開で行われた裁判において30年の禁固刑を言い渡した。その判決 [13]は不敬罪法で裁かれた判例の中で、一番重い刑期となっている。

タイの報道機関の自由もまた、暫定憲法第44条 [14]を行使する力を持つ軍事政権のもと、急速に制約されている。暫定憲法第44条は国家安全保障を維持するという名目のために政権に絶対的な権限を与えるもので、軍事政権はジャーナリストを黙らせ反体制派を握りつぶしている。

9月末に、著名なジャーナリスト、プラウィット・ロチャナプルックはツイッターの投稿の中で軍事政権を批判したという理由により、バンコク郊外の軍事基地にて軍に拘留 [15]された。

校正:Yuko Aoyagi [16]