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中国は「オーウェル風ディストピア」?「社会信用制度」とは

East Nanjing Road, Shanghai. The bustling pedestrian street is full of tourists, scam artists, families, prostitutes, salesmen, foreigners, beggars, thieves, and photographers. Photo by William via Flickr (CC BY-ND 2.0)

東南京路、上海。活気溢れる歩行者用道路は、観光客、詐欺師、家族、売春婦、商売人、外国人、物乞い、すり、そして写真家、とあらゆる種類の人間でごったがえしている。写真はウィリアム撮影、Flickr掲載 (CC BY-ND 2.0)

中国で、国家規模の社会評価制度が生まれようとしている。政府が独自の基準で、国民の信用度を定めるのだ。
新制度では、個人の金銭取引記録やオンライン・ショッピングに関するデータ、ソーシャル・メディア上での言動、そして、雇用履歴などが組み合わされ、全国民一人一人の総合的「社会信用度」が割り出される。信用度は、西洋でも金融制度の一環として利用されている。しかし、その内容は、各個人の金銭取引記録に基づいて弁済能力が定められ、ローンを借りるための条件付けが行われるだけである。ところが、中国で採用された信用度制は、個人の懐事情をちょっと確かめるという範疇を大きく超える。

中国政府が公表した「社会信用力制度構築のための概要計画」によると、制度の目的は政界、経済界、そして民間という3者間の信頼を精査し、高めることだけではない。政府業務や商取引上における信頼性と、社会的誠実性(誠信)を強化し、司法の中立性を構築することもその目標の内に掲げられている。


中国政府は信用力制度の試験的な実施にあたり、複数の信用調査会社に対して、国民の信用情報を収集・評価そして管理する権限を与えた。こうした仲介会社の中にはセサミクレジットと呼ばれるゲーム形式のアプリを作成し、制度試行の先導となったアント・ファイナンシャル(アリババ系列)も入る。

セサミクレジットでは、各個人がどの程度「良い」人なのかが割り出される。ユーザーは、取得した点数を知り合い等と共有するよう推奨されており、オンライン活動の如何によっては、月一回の更新で点数アップを狙うこともできる。ただし、利用するオンラインプラットフォーム及びサービスは、アリババ関連であることが必要だ。
上のビデオは12月下旬にアップロードされるや否や、ネット上で急速に拡散した。というのも、そのビデオが上記ゲームを「オーウェル風ディストピア」として評したためだ。

中国政府が2014年に初の計画草案を公表してからというもの、制度に関する話題は事あるごとに盛り上がってきたが、その信憑性は千差万別である。グローバルボイスの中国チームは、最近(盛り上がる)メディア報道や論争を受け、社会信用度制度に関して頻繁に問われる一連の質問と答えをまとめてみることにした。

信用調査会社は、各人の信用度をどのように計算するのか?

各信用調査会社は、社会信用度を計算するためのアルゴリズムを独自に開発してきた。セサミクレジットが公表しているところによると、スコアは下記の要素を考慮した個人データを参考に算出されるという:

      • 学歴や職務経歴等を含んだ、社会での相対的地位
      • アリペイや、その他のアリババ系列及び提携会社の利用記録に基づく個人のクレジット履歴
      • 契約履行能力を示す記録。つまりは、現金・株式・投資における個人データのこと
      • 社会的つながり。或いは、当人に関りのある人物や友人らの信用度
      • オンラインでの消費や、その他の活動に基づいた行動様式

どのような種類の活動が、信用度を下げることにつながるのかは公にされていない。しかし、ウェイボー等の大手コンテンツ・サービス・プロバイダーは、詐欺に関する地域内での風聞や政体批判を指す隠語である「噂」をもとに、既にユーザーのブラックリストを作り上げている。政治的に微妙な発言が低スコアをもたらす可能性について、人々が広く懸念するようになったのもこうした「噂」のためだ。

信用度は、どうしたら得られるのだろうか?

上記のアルゴリズムに基づいて、セサミクレジットは、信用度数を上げるためのヒントをいくつか紹介している。

      • 融資や投資を受ける際など、多額の取引が発生するサービス利用時に、オンライン決済を選ぶこと
      • 登録は本名で行い、学歴や職業上の経験を公にすること
      • 高スコアを持った人と友達になり、スコアが低い人とは友達設定を解除すること。特に、本名を使用していない人は要注意だ
      • 寄付を通じて、「良いエネルギー」の推進に、インターネット上で貢献すること

二つ目と三つ目のアドバイスは、たやすく政治的問題の領域になりうる。中国政府が勧めているのは、実際の身元を使ってインターネットを利用することだが、偽名の使用は、政府批判や報道行為に従事する者にとって、己の安全を確保するために絶対に欠かせない。また、中国当局は最近、政府及び共産党に関する前向きなメッセージをオンライン上でどんどん発信するよう、国民に対して強く働きかけている。最後に紹介されている「良いエネルギー」の拡散とは、その傾向に迎合したものだ。

国民が信用度ゲームに夢中になる理由は?

ネット市民の中には、単純に、ソーシャル・メディア上で自分の高スコアを友人に見せびらかして楽しむ者もいる。それは別としても、人々がゲームに熱中する理由の一つは、高スコアを獲得した人に対して与えられる特権待遇のためだ。例えば該当者は、航空券の購入やホテル、車のレンタルサービス等を利用する際、VIPクラスに昇格され、保証金を支払う必要が無くなる。また、クレジットサービスの処理システムを通し、ビザ取得に必要な期間を短縮することができる。セサミクレジットのスコアが700以上であれば、雇用書などの証明書類を提出すること無く、シンガポールへのトラベルビザに申し込みが可能だ。750以上のスコアを持つ人は、ルクセンブルクへの優先ビザが取得できる。

スコアが低い人にはどのような罰則が科せられるのか

社会的信用度運営の背後にある基本的な考えは、信用できないと思われる個人に罰則を科すことだ。セサミクレジットを率いるホゥ・タオは、マスコミによるインタビューの中で、システムの目的をそう説明した。「車やお金を借りること、或いは就職すらも、信用の置けない人にはできない」ようにするためだという。セサミ・チームは既に、中国の教育庁に対して国家試験で不正行為を行った生徒のリストを共有するよう働きかけた。彼女はそうとも明かした。将来の職探しで、生徒らに不正の対価を支払わせるためだという。

信用度管理機関は、どのように利益を得ているのだろうか?

信用度の管理機関は、各国民に関して取得した情報を利用し、政府や商業組織にサービスを提供する。セサミクレジット等の信用度管理機関が得る利益は、そうした取引から生まれる。

インターネット界の巨人であるテンセントの信用度サービス提供先は、多く金融部門に属している。当企業は、自社メッセージソフトウェアであるテンセントQQの8億人のユーザー情報とアップロードされている総計4千億の写真を利用し、顔認識データベースを構築する予定になっている。クライアント先である金融機関が、顧客の身分を簡単に照合できるようにするためだ。将来には、オンラインのデートサイトや、各種会議及び試験(国内・海外大学の入学試験等)時の本人確認のために、同様のサービスを提供することを目指している。

社会信用制度の裏に潜む政治的意図とは

中国版の信用制度自体は、活動家や潜在の反乱分子に対し特定して向けられている訳ではない。公安省は、政治的反体制派の友人や親族を監視するデータベースをとっくに作りあげている。制度の意図はむしろ、社会の治安を維持する管理機構を対象特定型から全国民監視型へと変えることだ。各個人の政治的志向や財務履歴、消費パターン、社会的つながりに基づいて、報酬を与える(或いは罰則を加える)ことで「善良なる国民」の自己規律を育もうというのだ。

また制度の広がりは、人々の間の信頼が失われた社会における倫理崩壊への反応でもある。しばしば口にされるが、中国では、路上詐欺に引っかかることを恐れ、真に困っている人に手を差し伸べるのを躊躇する人も多い。加えて、企業による詐欺や疑問視される食品安全保障、そして横行する汚職等も、国家の道徳を危機的局面に立たせている。政府指導者らは、縁故資本主義(まさに政府の政策・事業が可能にしたもの)を成長させてしまった政治経済体制を見直す代わりに、問題は、「低い信頼性」が特徴の中国文化にあると論じるようになった。彼らが、中国版の信用度制度について、個人の単なる金銭取引記録ではなく、人々の「グアン・シー」(社会的関係)を反映していなければならないと主張するのはそのためである。

ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』では、「ビッグブラザー」と呼ばれる支配者が社会に強力な監視体制を敷いている。国家的監視制度に関して似たような批判を受け、中国の政府指導者らは「歴史上、中国は調和を何よりも重んじてきた」と反論する。この場合の「調和」とは「国家の全般的な安定性」である。つまり中国の枠組みでは、社会的信用度制度は、西洋思想ではなくむしろ東洋の知恵に導かれた革新だというのだ。どちらにせよ、その詳細が徐々に明らかになるたびに、中国の信用度制度が、ビッグブラザ―監視体制の恐怖をはるかに超越する可能性について思わずにはいられない。

校正:金子端人