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ザムザム・コーラは友好の印! イランとサウジ、緊張が続く両国の今

カテゴリー: 中東・北アフリカ, アラブ首長国連邦, イラン, サウジアラビア, 労働, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治
人気の清涼飲料水ザムザム・コーラのびん。(ウィキメディアのクリエイティブ・コモンズ画像より転載)

人気の清涼飲料水ザムザム・コーラのびん。(ウィキメディアのクリエイティブ・コモンズ画像より転載)

中東のイスラム教宗派間で依然緊張が続く中、見落とされがちなことがある。シーア派とスンニ派が崇拝対象を共有しているということだ。サウジアラビアにあるイスラム教の聖地メッカはその一例である。 例えば、メッカの聖モスクにはザムザムの泉 [1]がある。神が造りたもうた泉と言われており、全イスラム教徒から崇拝される水源だ。

知らない方も多いだろうが、かなり以前から、イランの人気清涼飲料水ザムザム・コーラ [2]にこの泉の名前が使われている。

現在、シーア派が多数派を占めるイランと、スンニ派が優位に立つサウジアラビアの関係が混迷を深めている。シーア派聖職者ニムル・ニムル師がサウジアラビアで処刑され、抗議デモ [3]が起こったためだ。こうした状況の中で興味深いのは、イラン製コーラが以前、サウジアラビアで好んで飲まれていたということだ。

#zamzamcola #cola #iran #desert #travel [4]

A photo posted by Marco Pesavento (@marcopesa) on

ザムザム・コーラ社は1954年にペプシ社の子会社として設立され、イラン市場向けの製品を扱っていたが、1979年のイラン・イスラム革命後に完全に国営化された。有名な聖なる泉にちなんで名づけられ、現在ではサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)といった近隣諸国にも製品が流通している。これら3国では現在、イランとの外交事情が変化を見せている。サウジアラビアとバーレーンはイランと国交を断絶し、UAEは外交関係を格下げしたのだ [5]

意外に思われるかたもいるだろうが、2002年には、イランのザムザム・コーラがサウジアラビアなどのアラブ湾岸諸国で大人気となった。イスラエル・パレスチナ問題でアメリカがイスラエルを支援したとして、コカ・コーラ社、ペプシ社、マクドナルド社といったアメリカ企業製品の不買運動が起こったためだ。

ニューヨークタイムズ紙は2002年、イラン企業からサウジアラビアに向けて1000万本のコーラが納品されたと報じた [6]。当時、うだるような暑さに苦しむサウジアラビアで、コカ・コーラ社製品とペプシ社製品に対する不買運動が起こっていたためだ。

先ごろ両国が緊張状態になって以来、イラン政府はサウジ製品の輸入禁止を呼びかける [7] とともに、イラン人が小巡礼であるウムラ [8]を行うことも一時的に禁止した。同様に、サウジアラビア外務省の声明によれば [9]、同国はイランとの国交だけでなく、商取引関係も断絶するという。

イランのソーシャルメディアユーザーは、サウジアラビアにおける人権の歴史やイランにあるサウジアラビア大使館および領事館襲撃に関するコメントに終始している。一方、サウジアラビアなどアラブ湾岸諸国のユーザーは、イラン製品に対する不信の念を表明し、不買運動への呼びかけを支持している。

例えば、あるツイッターユーザー(ハンドルネーム @Death_To_iran)は次のように主張している。「イランは毒性のある商品を売るなど、邪悪な目的を達成するためなら何でもやりかねない。自分が犠牲者にならないように気をつけよう」

彼はさらにツイートしている。

イラン製品を輸入している国々では、がんを発症した人が多い。がんにかからないうちに、不買運動を。

別のツイッターユーザー、ディヤーラ・アルカイールは、不買運動を宗教的義務と結びつけている。

イラン製品の不買運動はシャリーア [14]にのっとった義務であり、違反する者は罪を犯していることになる。製品を買わなければ流血の事態を回避できるのだ。これは、宗教的義務と言えるだろう。

同ユーザーのツイートはさらにエスカレートした。

イランの経済は、子供や弱者の犠牲の上に成り立っている。イラン製品の購入で、それに手を貸すようなまねをしないよう注意して欲しい。

そしてサウジアラビア出身のツイッターユーザーMogatah-saは、サウジ市場に出回るイラン製品の写真を撮影し、不買運動を呼びかけている。

これが、市場や店舗で見つけたイラン製品のリストです。買わないでください。

上のツイートは320回以上リツイートされ、60回「いいね」をされている。そしてまた、様々なユーザーがいろいろな媒体で公開している。

ほかにも、広くシェアされているツイートがある。サウジアラビア国民に対して、政府のイラン製品不買運動を支持しようと強く勧めるものだ。

あなたの義務は、イランとの商取引関係を断絶するという政府の決定に従い、イスラムの敵をボイコットすることです。

サウジアラビアでザムザム・コーラが飲まれなくなる日も近いようだ。今回、食品製造会社サボラグループなどの企業がイラン市場で損失をこうむったことを受け、サウジアラビアの株式市場は下落の兆しを見せている [22]

(訳注:原文の掲載日は2016年1月11日であり、記事内容は当時の状況を反映している)

校正:Yuriko Odaka [23]