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マダガスカルで急増する子どもの誘拐ビジネスと広がる不安の声

カテゴリー: サハラ以南アフリカ, マダガスカル, 人権, 市民メディア, 災害, 若者, 行政, 開発

(リンク先はフランス語またはマダガスカル語のページです)

マダガスカルのアンタナナリボで逮捕された児童誘拐犯 @radiomadaより [1]

マダガスカルの首都アンタナナリボで逮捕された児童誘拐犯 @radiomadaより

貧困の蔓延と不安定な情勢 [2]のため、マダガスカルの国民には近い将来この国に明るい未来がくるとは到底考えられない。現在のこうした経済状況の中、犯罪者の中には生活に困って卑劣な手段に手を染めた者もいる。その方法とは、子どもの誘拐だ。

マダガスカルでは、過去2年間で身代金目的の誘拐が急増 [3]しており、インターネットのフォーラムやブログにも胸が張り裂けそうな苦難を語る声があふれている。

トゥアマシナに住むB.ングマさんは、Housseina Writing [4]のブログにアニーさんとアルノーさんの話をつづった。

Il y a quelques semaines, Annie et Arnaud, 2 enfants d’un opérateur dans le secteur du bois, ont été kidnappé à Tamatave. Les ravisseurs réclamaient une rançon de 3 millions d’euros en lançant plusieurs avertissements mais les parents des enfants n’ont pas les moyens de les payer. Les négociations étaient au point mort, mais un rebondissement macabre vient de transformer ce kidnapping en mise à mort. Annie, âgée de 14 ans, a été retrouvé morte à proximité de sa maison. Les premières analyses montrent qu’elle a été torturée pendant des heures avec un étranglement qui aurait provoqué sa mort. Les autorités tentent de retrouver Arnaud, mais la mort d’Annie laisse craindre le pire.

数週間前(12月3日)、林業作業員の子どもであるアニーさんとアルノーさんの2人がタマタブ(別名トゥアマシナ)で誘拐された。誘拐犯は子どもの両親に300万ユーロの身代金を要求し、子どもたちの命に危険が及ぶぞと何度も脅迫した。しかし、両親は身代金を支払うことができなかった。交渉は行き詰まり、誘拐事件が殺人事件となる恐ろしい事態に発展した。14歳のアニーさんは、自宅近くで遺体となって発見された。初期段階の検視によって、アニーさんは何時間も拷問されたあと絞殺されたことがわかった。捜査当局は今なおアルノーさんの行方を捜索中だが、アニーさんの死は最悪の事態への不安をかきたてた。

マダガスカルの少女たち(Flickrよりヘリー・ゾー・ラコトンドラマナ撮影)CC BY-SA 2.0 [5]

マダガスカルの少女たち(Flickrよりヘリー・ゾー・ラコトンドラマナ撮影)CC BY-SA 2.0

アンタナナリボを拠点に活動している人気マダガスカル人ブロガーのムボラシアナさんは、アルノーさんの現在置かれている窮状に心を動かされた。十代の彼は、まだ犯人に捕らえられているのだ。ムボラシアナさんは、アルノーさんに向けて次のように書き込んだ [6]

J’aurais bien voulu connaître le jeune homme que tu es dans d’autres circonstances. Petit frère, te voilà propulsé d’un coup dans un monde où la turpitude des grandes personnes règne sans limite. En quelques semaines, tu as été la victime de tous les maux de ce pays qu’est le nôtre : la corruption, le non-respect des droits humains, la violence à outrance, l’esclavagisme, l’état de non-droit. Certes, petit frère, trop malheureusement, tu es loin d’être le seul. Car ils sont des milliers à être quotidiennement traités comme des bêtes, sous nos yeux. Des enfants qui sont kidnappés et que l’on ne retrouve jamais, des enfants qu’on retient comme esclaves des familles en ville comme dans les campagnes, des enfants que l’on prostitue, des enfants que l’on vend et achète pour leurs organes. Et j’en passe.
Mais cela n’enlève en rien ma tristesse quand je pense à toi. Car comme tous les autres, tu es une proie. Du fond de mon cœur, j’espère vraiment qu’un jour très proche, tu puisses le lire ce texto, libre et en bonne santé. Mais où que tu sois, sache qu’il y a des choses que l’on ne peut nous enlever : l’espoir et la liberté. Des mots forts de sens. Je sais que c’est trop facile de le dire quand ce n’est pas soi-même qui est embrigadé, enfermé. Et je te comprendrais si tu ne partages pas mon point de vue face à ce que tu as vécu. Mais une chose est sûre petit frère, l’histoire a montré que les plus grands hommes et les plus grandes femmes qui avaient changé l’humanité, ces activistes endurcis, ces faiseurs de Nations sont « nés », se sont illuminés, dans les cages noires des prisons, sous la torture et les pressions des oppresseurs. J’espère vraiment que tu t’en sortiras, que tu en seras plus fort. Sache également que des gens qui ne te connaissent pas, comme moi, te soutiennent.
Petit frère, nous gardons espoir de te revoir.

こんな状況ではなく、一人の若者としてあなたを知ることができたらよかったのに。今あなたは、世界で最も恐ろしい場所、大人の卑劣さが限りなくはびこる場所に、突然放り込まれたのです。この数週間、あなたはこの国が直面しているあらゆる悪の犠牲者になっています。汚職、人権侵害、過剰な暴力、奴隷扱い、無法状態。悲しいことに、こんなひどい状況にいるのは、決してあなた1人ではないんですよ。日々動物のように扱われる子どもたちが何千人といるからです。誘拐されて、再び見つかることのない子どもたち、奴隷として拘束される子どもたち、売春宿に送られる子どもたち、そして臓器売買される子どもたちさえいます。

しかし、それでもあなたのことを考えたときの悲しい気持ちがなくなることはありません。この国の他の子どもたちと同じように、あなたも卑劣な大人たちの被害者なのです。いつか近いうちに、自由になった元気なあなたのところにこのメッセージが届くことを心の底から願っています。けれども、どこにいようと、犯罪者が私たちから奪えないものがあることを知っていて欲しい。希望と自由です。私自身は閉じ込められていないのでそんなことを簡単に言える、ということは承知の上です。それに、あなたが経験したことについて私の意見に同意できなくてもかまいません。でも、確かなことが一つあります。男女問わず、人類社会を変えた偉大な人物や、聡明な活動家、国家を築きあげた人々は、その多くが暗い鉄格子の中で責め苦や過酷な扱いを受けながらも、最大の精神力を発揮したと歴史は示しています。あなたがそこから無事に逃げ出し、このつらい経験を糧として強くなってくれることを切に祈ります。世の中には、私のようにあなたのことを知らなくてもなお、あなたのことを心にかけている人がいることを知ってください。すぐにあなたに会えますよう。みんな、そう願っています。

マダガスカルにおける子どもの誘拐事件の増加は国際的な問題になっている。フランソワ・ゴールドブラット前フランス大使は、児童売買に関与していると仏大使館が疑っている人物のリストを提出 [7]したと述べた。また、数週間前に複数の元誘拐実行犯が釈放 [8]されてから、最近になって児童誘拐が急増していることについて、マダガスカルの司法制度は機能不全に陥っていると強調する記事も多く見られる。

アニーさんとアルノーさんの事件があった2、3日後に2人の別の子どもが拉致された [9]。同じ誘拐関連のニュースでは、先日、中国系の店のオーナー家族を誘拐した容疑で、陸軍の大将1人と将校3人が逮捕された [3]

グローバル・ボイス寄稿者のアリニアイナは、自分の子どもたちの安全について普段は隠そうとしている不安を語った [10]

Sortir avec le bébé même pour aller chez l’épicier d’en face est risqué. Je suis parent et j’ai actuellement peur pour la sécurité de mes enfants. Et je suis loin d’être la seule. Ces derniers jours, on a assisté dans les principales villes de Madagascar une vague d’enlèvements d’enfants.  Quelle est la suite de l’affaire sur l’enfant de 6 ans décapitée [11]? Cette histoire m’a carrément glacé le sang. Je ne souhaite à aucun, même à mon pire ennemi, de vivre pareil cauchemar. La population malgache a le sentiment d’être complètement désarmée face à cette vague de kidnapping d’enfants. En effet, il semblerait que la police n’y accorde guère d’importance. Pire, selon certaine sources [12] (en malgache), les autorités policières en viennent même à ignorer les plaintes déposées.

道の向かいにある食料品店に赤ん坊と一緒にいくだけでもリスクが伴います。私は親の立場として、子どもの安全に不安を感じています。また、同じように感じている人は他にもいるでしょう。最近、マダガスカルの主要都市で子どもの誘拐事件が増加しています。6歳の子どもがクビを切断された事件 [11]のことを、どう思ったらいいのでしょうか。私はこの話を聞いて、血が凍り、背筋がぞっとしました。そんな悪夢のような経験は絶対にしたくありません。マダガスカルの人々は、この子どもの拉致の増加に立ち向かおうとしても、自分たちではなすすべがないと感じています。さらに、警察も、これが重大な問題だと考えていないように思います。最悪なことには、ある情報筋によると [12]、捜査当局は一部の告発を無視しているそうです。

6歳の子どもが首を切断された事件 [11]はアンタナナリボ郊外のアマバトランピで6月に起きた。目撃者は、子どもがあめ玉につられて見知らぬ人とタクシーに乗ったところを見ていた。犯行の動機はまだわかっていない。

マダガスカル北東にあるサバ地区のような地方都市では、誘拐などの犯罪に対する備えが低い [13]ようだ。犯罪者に狙われやすいのは、少数派の裕福な外国出身者 [14]である。身代金は被害者家族によって4万ユーロ(約500万円)から100万ユーロ(約1億2000万円)ほどを要求されている。

校正:Rie Tamaki [15]