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パナマ文書と難民問題の比較からみる世界的格差

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Looking out across the bay at some of the most expensive land in the world. CC Image courtesy of Shreyans Bhansali on Flickr.

インド、ムンバイのチョウパティー海岸。湾の対岸に見えるのは、世界最高級の住宅地。写真:シュレイヤンズ・バンサリ(CC BY-NC-SA 2.0)

著名な富豪たちのオフショア金融活動を暴露する文書が大量にリークされ、世間を騒がせている。このスキャンダルのために、欧州連合(EU)とトルコの間で結ばれた難民合意をはじめとする他の国際ニュースは、すべて影が薄くなってしまった。

これは驚くようなことではない。結局のところ、貧しく飢えに苦しむ人たちよりも、政治家やセレブ、麻薬密売人や有名スポーツ選手、大富豪の方が、世界のメディアにとってずっと重要なのだ。彼らのスキャンダルの方が、貧困層の苦悩よりもニュースとしての価値が高いと判断される。しかし、パナマ文書のリークについてのニュースと、EUとトルコ間で締結された合意の影響についてのニュースを比較して読んでみることは、世界的不平等の深刻さを理解するのに有用な試みだといえるだろう。

“. . . . reading news about the Panama Papers leak and the aftermath of the agreement struck between Brussels and Ankara side by side is a useful exercise in understanding the depth of global inequality.”

2016年4月3日は、パナマ文書のスキャンダルが勃発した日として歴史に記録されるだろう。パナマの法律事務所、モサック・フォンセカ所有の情報1150万点を「南ドイツ新聞」が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)にも共有された。76カ国370人以上のジャーナリストによる1年間にわたる調査の結果、世界で最も有名な(そして悪名高い)人たちが、課税回避、資金洗浄、武器・麻薬取引といった目的のために、タックスヘイブン(租税回避地)にあるオフショア会社をどのように利用したかが暴露された。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)
速報:「パナマ文書」。政治家、犯罪者、そして自分たちの現金を隠したペテン業界

その翌日、2016年4月4日は、EU・トルコ間での移民難民問題に関する合意が成立した日として記憶されるだろう。

欧州対外国境管理協力機関(Frontex)はBBCに対し、この物議を醸している計画に基づいて4月4日、最初の移民136名がギリシャからトルコに無事送還されたと伝えた

アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチといった国際的なNGO団体は、トルコは難民にとって安全な国ではないとして、この計画を激しく批判した。これら著名なNGO団体は、トルコはシリア人を紛争下の祖国へ送り返している疑いがあると主張している。

アムネスティ・インターナショナル
シリア難民の違法な大量送還は、EU・トルコ間の合意がいかに不完全なものであるかを示している。

利潤の追求と、その影で苦しむ人々

パナマ文書(#PanamaPapers)により、モサック・フォンセカが、北朝鮮やジンバブエ、ロシアやイラン、シリアの政府を支援したとして制裁が科されたクライアント少なくとも23人を抱えていることが明らかになった。

リークされたパナマ文書からは、シリア政府による空爆に使われた燃料を提供した企業3社も明らかになった。この空爆の結果、何千人ものシリア国民が犠牲となり、また何千人もが必死の思いでヨーロッパ国境へと向かうこととなった。

調査は370人以上のジャーナリストにより行われた。これによると、タックスヘイブンに登録された企業の中には、ロシアのプーチン大統領や英国のキャメロン首相、サウジアラビアのサルマン国王といった世界の元首の家族や関係者につながるものもあるという。この3名はいずれも、シリア内戦に自国を巻き込むという決定を下している。また、リャド(訳注:サウジの首都)やロンドンは、現在の人道危機を招くことになった中東の他の紛争に非常に深く関わってきた。

トルコ・EU間の移民対策合意のニュースは、パナマ文書リークのニュースを前にたちまち影が薄くなってしまった。しかし、パナマ文書と難民対策合意というニュースが、立て続けに世界の報道局とソーシャルメディアに入ってきたことで、それはすぐに富の不平等な配分について議論するきっかけへと変わった。

モサック・フォンセカ所有の文書によると、サルマン国王は英領ヴァージン諸島にあるオフショア会社からの金を使って定員30人のヨットを購入したという。これに比べシリア人は、戦争から逃れるためには、再び命を危険にさらして定員超過の小型ゴムボートでヨーロッパの海岸を目指すしかない。

あるいは、政治から離れるが、サッカー選手リオネル・メッシの心が温まるニュースについて覚えているだろうか? 黒いマジックでメッシの名前と背番号を書いたポリ袋製のユニフォームを着て写真に写っているアフガニスタン人の少年。メッシはこの少年に、自分のサインが入ったアルゼンチン代表のユニフォームを贈ったのだ。しかし、週に47万5000ドル(訳注:約5000万円)稼ぐメッシのために入念な脱税計画とみられるものが用意されていたことを知っても、このニュースに心が温まるだろうか? または、EUが亡命希望者8万人をアフガニスタンに送還しようと計画していることを知っても?

世界の超エリート層におけるモラルの崩壊と、最貧困層における深刻な物不足。これらの現象が進んだ背景に、より深刻化する、収入と富における不平等があったことは否定できない。ハーバード大学の経済学者リチャード・B・フリーマンの言葉を借りれば、「グローバリゼーションと市場資本主義の大勝利は、何十億もの人の生活水準を改善した一方で、何十億という富をごく少数の間に集中させた」のである。

“. . . the point that shines through in the documents revealed by the ICIJ is the fact that doors were opened at every turn for wealthy criminals and politicians with corrupt connections—doors which are routinely slammed in the faces of refugees seeking a path out of war and destruction.”

オックスファム(訳注:貧困撲滅に取り組む国際協力団体)によると、2010年以降、減速する世界経済とはまったく対照的に、世界の最富裕層はその資産を増やすことができた。その一方で、世界人口のうち経済的に見て下からの半分にあたる人々が所有する資産は、1兆ドル(訳注:約107兆円)減少した。2016年、全人口の1パーセントにあたる富裕層が、それ以外の人口が保有する資産の合計よりも多くの資産をコントロールし、その富を享受している。

英国のキャメロン首相やアイスランドのグンロイグソン首相、トランスペアレンシー・インターナショナル(訳注:汚職に取り組むNGO)のチリ支局長といった、格差是正に取り組むべき立場の人たちが、逆に格差拡大を助長していたことも発覚し、事態に対する人々の反感はより強まった。

パナマ文書により明らかにされた、これら課税を回避した何十億ドルは、不平等の単なる象徴というだけではなく、それ自体にも意味がある。これらの金は、健康や教育、インフラのための資金にできたはずのもので、もしそうできていれば、世界で進行する貧困を止めるまではいかなかったとしても、その負担を軽減することはできていたはずのものだった。ジョン・キャシディが雑誌「ザ・ニューヨーカー」に書いたように、「[略]クローニー・キャピタリズム(訳注:縁故資本主義)と脱税は、低所得や中所得の国において非常に大きな問題だ。国際通貨基金(IMF)によると、これらの国に本来入るはずの税収が毎年何千億ドルも少なくなっているという。この仕組みを詳細に明らかにするという点において、パナマ文書は、今まで公開された分ですでに重要な社会貢献を果たしたと言える」のだ。

オフショア法人というのは別に目新しいことではないし、必ずしも違法というわけでもない。しかし、ICIJが暴露した文書によってはっきり浮き彫りにされたのは、金にまみれたコネを持つ裕福な犯罪者や政治家に対しドアは至るところで開かれていた一方で、戦争と破壊から逃れる道を探す難民に対しドアはその鼻先でしょっちゅうピシャリと閉ざされていたということだ。

私たち皆に影響を及ぼすこの矛盾から抜け出そうとするならば、法律と民主主義に則った手段で、一致団結の上、自分たちの要求を大きな声で断固として明確に訴えかけていかないといけない。今、政治的変化を引き起こしているアイスランドでの抗議行動を考えてみよう。それを今度は地球規模で考えるのだ。

エドワード・スノーデン
アイスランドの人口はたった33万人。人口比から言えば、史上最大の抗議行動では?