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ジャマイカ:若きろう者たちの挑戦、おいしいコーヒーをあなたに

(記事中のリンク先はすべて英語のページです)

2015年3月19日、ジャマイカの首都キングストンで正式オープンしたDeaf Can! Coffee(写真提供:Deaf Can! Coffee、掲載許諾済)

2015年3月19日、ジャマイカの首都キングストンで正式オープンしたDeaf Can! Coffee(写真提供:Deaf Can! Coffee、掲載許諾済)

おいしい、煎りたてのジャマイカ・ハイマウンテン・コーヒーはいかが? ハニー・ラテは? それともニトロ・コールド・ブリュー? こうしたメニューも、コーヒーショップではたいして珍しいものではないかもしれない。けれども、このカフェは一風変わっている。

先日、社会的企業Deaf Can! Coffee(デフ・キャン・コーヒー)の本部を訪問したときのこと、27歳のカーライル・ガビドンと、同僚で21歳のファビアン・ジャクソンは、人懐こい笑顔で私たちをもてなしてくれた。二人ともろう者(deaf=デフ)だ。

参加、準備、自信。これがこのベンチャー事業のモットーだと、共同創設者で指導者でもあるブレイク・ウィドマーは、グローバル・ボイスに語った。

Engagement is getting the young men involved and excited about the enterprise, ensuring they have a genuine sense of ownership. Once the interest is there, then it's important to be equipped — not just with the right skills — but the mindset and ‘I can’ attitude, along with the physical equipment. Empowerment just happens. It grows, naturally, as the business develops.

参加とは、この仕事に熱意を持って打ち込むことができる若い人たちを採用し、真のオーナーシップを持てるようにすること。ひとたび仕事に興味が湧いたら、次は準備を整えることが肝心です。正しい技術を習得するだけではなく、考え方や「自分はできる」という心構え、そしてもちろん機材の準備も必要になります。自信は自然に湧いてくるものです。事業が発展していくにつれ、おのずと身についていきます。

Deaf Can! Coffeeの本部は、「ろう者のためのカリブ・キリスト教センター」キングストン・キャンパスの広大な敷地内にある。このセンターは島内3か所で学校を運営している教育機関で、後の2校は北海岸のモンテゴ・ベイと、首都の西に位置するノックパトリックにある。キャンパス内を歩いて行き、草が踏みしだかれた広い運動場を通り過ぎると、新しい建物にたどりつく。そこでは海外から集まったボランティアの人たちが、ペンキ塗りに精を出していた。

大きな窓がいくつもあって、自然光にあふれた明るい本部は、太陽光発電にかかる資金提供をディジセル財団から受けた。同財団は、ジャマイカで、権利を侵害されている若者たちの支援に重点的に取り組んでいる。2015年3月19日、Deaf Can! Coffeeはグランドオープンした。その1年後、再びディジセル財団からの資金援助を受けて、設備の整った養成施設を新たにオープンした。

ここで学生たちが学ぶのは、コーヒーの入れ方だけではない。事業を営む上でのあらゆる課題を学び、自分の技術に自信を持てるようにするのだ。現在、Deaf Can! Coffeeには、一般の人がふらりと立ち寄れるような店舗はない。しかし機動性に優れた彼らは、機材一式をバンに積んで、会議や展示会、商業イベントへと、コーヒーの出張サービスに出掛けて行く。また、焙煎(ばいせん)したコーヒー豆や、目を引くロゴをあしらったTシャツ・マグカップなどのグッズも販売している。このロゴは、両手のこぶしを縦に重ね、豆をひくように上のこぶしを回す動きを表していて、ジャマイカ手話でコーヒーを意味する。

以前はタイル張り職人の訓練を受けていたという、店長兼チーフバリスタのガビドンは、次のように語った。

We work together as a team. The important thing is to keep developing, practicing, and improving, knowing that mistakes will come but they are learning experiences. We don't want to sit back and do nothing. We want the whole world to know about us, to know that we are just like any other person.

私たちは一つのチームとしていっしょに働いています。大切なのは、成長し、技術を磨き、向上し続けていくこと、ミスをしてもそこから何かを学べるんだと気づくことです。何もせずに座っているだけなんてごめんです。世界中の人々に、私たちにろう者を理解して欲しい、私たちも他の人々と同じだということを知って欲しいと思っています。

ガビドンもジャクソンも、親の世代に農村部から首都キングストンへ出てきた。残念なことにジャマイカではいまだにろう者への偏見があり、二人もそんなレッテルを貼られて傷ついたという。ジャクソンはこう述べた。

We're not ‘disabled’. Everyone has their own talents. I hate it when people call us ‘dummy’. We are not dumb. Ironically, some people who call us dumb don't even have the literacy skills that we possess.

ぼくらは「障害者」じゃない。みんなそれぞれ才能を持っているんだ。「バカ」呼ばわりされるのは、まっぴらだ。ぼくらはバカじゃない。皮肉なことだけど、バカって言ってくる人たちは、ぼくらにできる読み書きすらできなかったりするんだよね。

ジャクソンは続けて語った。

We are always told, ‘You can't.’ But we don't want others to see us negatively. We want to challenge the world and tell them: ‘We can do anything!’ We are not nervous any more. We are very confident.

ぼくらはいつも「きみにはできない」と言われる。でも、否定的に見るのはやめてほしい。ぼくたちは世界に挑みたい。だからこう言うんだ。「なんでもできるよ!」って。ぼくらはもう臆病じゃない。胸を張って生きているよ。

セント・エリザベス教区から来た、ろうの農夫イヴリン・クラークは、Deaf Can! Coffee設立のきっかけとなった人物である。キングストン滞在中にコーヒー器具を試しているところ(写真:エマ・ルイス、掲載許諾済)

セント・エリザベス教区から来た、ろうの農夫イヴリン・クラークは、Deaf Can! Coffee設立のきっかけとなった人物である。キングストン滞在中にコーヒー器具を試しているところ(写真:エマ・ルイス、掲載許諾済)

この事業の着想は、のどかなセント・エリザベス教区にある村トップヒルへ、17人の学生グループが調査旅行に出掛けたことから得られた。ここはウィドマーの妻、タシ・ベント=ウィドマーの生まれ故郷だった。この村で、学生たちは、ろうの農夫イヴリン・クラークに出会った。クラークは自分でコーヒーの木を育て、豆を焙煎をしていた。学生たちは、彼を手本とすることにした。

ジャマイカのキリスト教奉仕団体ハーベスト・コールの援助を得て、学生たちは学内にコーヒーショップを作る活動に取り掛かった。カフェの扉はまだ一般客には開かれていないが、Deaf Can! Coffeeはケータリングサービスで日々大忙しだ。先日おじゃましたとき、私たちは最初に作ったコーヒーショップを見せてもらえた。そこには、クラークが豆をひくときに使っていたという昔ながらの乳棒と乳鉢や、学生たちが自分たちでお金をためて買った初代の備品が置いてあった。

Deaf Can! Coffeeの設立後間もなく、米国アイオワ州シーダーフォールズの「サイドカー・コーヒー」がジャマイカにやってきて、若者たちにコーヒーの入れ方研修を2日間みっちり行った。また、学生たちは地元のコーヒーアートの講師からも技術指導を受けた。ついには立場が逆転、クラークが次に訪れたときに、学生たちは自分たちのやり方で豆を焙煎し、コーヒーを入れて見せた。

Deaf Can! Coffeeの成長を支えたのは、こうした力強い協力の存在だった。ろうのグラフィック・デザイナー、ジャスティン・フォーブスは、Deaf Can! Coffeeの新商品のロゴを手掛けている。ニトロ・コールド・ブリューとコールドコーヒー・エナジードリンクの二つだ。一方、同校の卒業生で、現在はロチェスター工科大学で情報科学を学ぶIT企業家のケモイ・キャンベルは、躍動感あふれるウェブサイトをデザインした。今夏は、自動券売機のデザインに関する実務研修に参加する予定だ。ブルーマホーの木で作った、つややかな美しいカウンターは、ジャマイカ・デフ・ヴィレッジの居住者たちが製作した。ジャマイカ・デフ・ヴィレッジは、島の中央部に建設中のプロジェクトだ。このように、ろう者たちは互いに協力し合っているのだ。

チーフバリスタのカーライル・ガビドン(写真:Deaf Can! Coffee、掲載許諾済)

チーフバリスタのカーライル・ガビドン(写真:Deaf Can! Coffee、掲載許諾済)

Deaf Can! Coffeeは2月にスペシャルゲスト迎えた。米国初の、ろうの黒人女性弁護士、クローディア・ゴードンである。ジャマイカの田舎に生まれたゴードンは、11歳のときに米国へ移住し、ろう社会のために政府の弁護士となった。現在はホワイトハウスの市民参加室次長として障害者問題の顧問などを務め、オバマ政権を支えている。

Deaf Can! Coffeeは、近い将来、ドリンク類だけでなくフードメニューも展開しようと計画中だ。先日訪問した際には、スーパーバイザーのスティーブン・マクファーレンが、これから導入予定の新しい設備を見せてくれた。その中には、オーブンや、サラダバースタンドもあった。

「Deaf Can! Coffeeで、組織的、健康的、協力的文化」を作ること、それがゴールだ、と共同創設者のブレイク・ウィドマーは語る。

It is a social enterprise with purpose, and we also want it to be sustainable. It must be an inclusive culture, too, that draws people to it…

つまりは目的意識のある社会的企業です。うまく軌道に乗ってくれたらと思っています。そして誰もが働きやすい企業風土でなくてはなりません。人々が引き寄せられるような……。

ジャマイカには多くの非政府組織(NGO)があり、リスペクト・ジャマイカなどは差別のない寛容な社会を目指して活動している。しかし、こうしたベンチャー事業ができることは、差別の壁を壊す手助けにすぎない。Deaf Can! Coffeeについてさらに詳しく知りたい方は、同団体のウェブサイトへ。FacebookTwitterインスタグラムはこちら。

校正:Takako Nose