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検閲続くミャンマー、新政権が軍に批判的映画の上映を阻止

カテゴリー: 東アジア, ミャンマー (ビルマ), 市民メディア, 抗議, 政治, 映画, 検閲, 歴史, 芸術・文化
「ビルマの黄昏(原題 Twilight Over Burma)」の映画ポスター 出典:人権と尊厳の国際映画祭のフェイスブックページ [1]

「ビルマの黄昏(原題 Twilight Over Burma)」の映画ポスター 出典:人権と尊厳の国際映画祭のフェイスブックページ

ミャンマーの最大都市、ヤンゴンで毎年開催される人権と尊厳の国際映画祭で1962年のクーデターに関する批判的な映画が上映不許可 [2]となった。

政府の検閲委員会によると「ビルマの黄昏~私の人生・シャン王妃~(原題 Twilight Over Burma: My life as a Shan Princess)」には軍に対する否定的な描写があるため国民和解を促進する取り組み [3]を弱体化させかねないと説明している。

ミャンマーは従来ビルマと呼ばれていた。

この映画はシーポー公国の王子サオ・チャ・センに嫁いだ、オーストリア生まれのインゲ・サージェントの実話をもとにしたものである。

王子は1962年のクーデターの際軍に拘束された少数民族の指導者の1人だ。彼の死は依然として謎のままである。

2012年に始まった [4]人権と尊厳の国際映画祭では

promote human rights awareness in Myanmar by using the power of film, the persuasive strength of audiovisual communication and to create a space for encouraging human rights discussions amongst the general public in Myanmar.

映画の力の源泉である圧倒的な映像と音声表現を利用して、ミャンマーでの人権に対する理解を促し、人々の人権に対する論議を後押しする機会の提供を目指している。

40以上もの映画 [5]が今年の6日間に及ぶ映画祭で上映された。

2010年まで軍事政権がミャンマーを支配してきた。

軍事政権の後に発足した準文民政権は政治犯の釈放、メディア検閲の廃止や自由選挙の開催といった複数の改革を実施した。

軍の流れを汲む政党は昨年の選挙に敗北し、 [6]ミャンマーが民主主義政治体制へ移行する流れが進展した。

ミャンマーには100を超す少数民族が存在し、その内の一部の少数民族は独立を求めてここ数十年もの間戦闘を繰り広げている。

昨年政府は少数民族武装勢力と停戦合意に署名した。しかしながら和平プロセスを停滞させる断続的な戦闘は続いている。

ノーベル賞受賞者アウン・サン・スーチー氏の主導する [7]新政権は、全ての少数民族を招待して和平について議論する国民会議の開催を予定している。

政府は「ビルマの黄昏」の上映で軍への憎悪を煽(あお)られて、国民和平会議の足を引っ張られることになってはと懸念している。

映画祭主催者は「ビルマの黄昏」の上映キャンセルを関係者へ謝罪した [8]

新政権は軍の抑圧やメディアへの検閲と戦ってきた党により率いられているだけに、映画審査委員会の土壇場の決定を大半の人々は予想もしていなかった。

人権運動家であり映画祭の審査員でもあるイゴール・ブラジェヴィッチ氏は、真実をもみ消すことによって和解が達成されることはないとミャンマーの権力者へ指摘した [9]

If Myanmar genuinely wants to address human rights abuses, culture, art and media should be encouraged to bring truth, painful stories and wrongdoings—both past and present—into the open.

ミャンマーが心から人権侵害に取り組みたいのであれば、文化、芸術そしてメディアは、真実や悲惨な話や罪を、過去と現在の両方から、明るみに出すように働きかけられるべきである。

映画監督であるワイン氏はミャンマーにおける検閲が未だ強いられていることを思い知り [10]失望した。

This act is very ugly under a civilian government. The new information minister clearly doesn’t understand the film. The censorship board remains the same as under the previous government. It shows that there is no freedom for filmmakers.

文民政権がこのような行動を取るとは不快であり見苦しい。新情報大臣は明らかにこの映画を理解していない。検閲委員会をみれば前政権と依然変わらぬままであることに気付く。それは映像製作者のための自由がないことを示している。

校正:Mitsuo Sugano [11], Yuko Aoyagi [12]