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​​​インド:排水から発生した有害な泡が湖面を覆う

カテゴリー: 南アジア, インド, 健康, 市民メディア, 環境, 科学, 経済・ビジネス, 行政, 開発
Its not snow covered waters it is foam covered waters! Its the way water flows in the 130yrs old Bellandur lake! The place had a heavy pungent smell. Image from Flickr by Kannan B. CC BY-NC-ND 2.0 [1]

​雪ではない​。川面を覆う泡である。この川は130年前に作られたベラン​ダ​湖へ注ぐ。強烈な刺激臭を放っている。Kannan Bのフリッカーから転載  CC BY-NC-ND 2.0

​これは雪ではない。インド第三の大都市バンガロール [2]に点在する汚れた湖に浮かぶものは、実は​有害な​泡である。

​この泡は、主としてベラン​ダ [3]と呼ばれる湖で生成される。この湖へは以前からずっと、未処理下水や化学物質を含んだ排水が、適切な処理をされないままポンプで送りこまれていた。降雨時には、​有害物質​を含んだ​湖​水が、湖面上で厚く白い泡の層となる。この泡は、しばしば風にあおられ空中に舞い上がり、湖周辺一帯に広がっていく。

​いま見えているのは、アンモニアとリン酸塩を多量に含んだ​酸素欠乏状態の水です。この水から極めて​有害な泡が生成されています。バンガロールにて

これは本当のことなの​かしら​。私たちは地球にいるの​かしら​​、それとも地獄​にいるのかしら。恐ろしいことだわ。目に見えない大気汚染だって同じように有害だわ。

「​有害な​雪」

​バンガロールは、かつて「​千​の湖​がある​都市」として知られていたが、いまや、​わず​か数十​の湖​が残る [10]のみとなっている。これらの湖は相互に接続されているが、近くには水や汚物を排除できる河川が存在しない。急速な都市化の進展により、かつて美しかった湖は​大打撃を被り、1985年には利用可能な湖が51有ったのに、今はわずか17の湖が利用されているにすぎない。

​かつての湖の​いく​つかは、バス​ターミナル、ゴルフ場、遊園地、住宅団地に変わってしまった。残った湖には、家庭​排水​や産業排水が全市からほとんど未処理のまま​1​日当たり1億3000万ガロン​(訳注:約50万キロリットル)​以上流入する。水質汚濁のおかげで、バンガロールは新しいあだ名を付けられた。その名は、「千の下水溜めのある所」​である​。

​バンガロールに雪があるわけがない。​​湖に変なものを流すから、雪みたいな泡が出るのだ。

​ビダディーの​​​バイラマンガラ湖​が​泡を吹き出している​。バンガロール全部の川のせいよ。

​バンガロールに住む人が、2015年5月にユーチューブに 動画 [17]を投稿した。その内容は、ベラン​ダ湖に浮かぶ​有害な泡の様子を​映した​ものである。

​バンガロール​出身​のIT専門家であり写真家であるデバシシュ・ゴーシュは、ガーディアン紙のウ​ェ​ブサイトにフォトエッセーを発表した [18]。​内容​は下記の​とおり​である。

Bellandur Lake, in India’s technology capital, now carries huge volumes of snowy froth which blocks the adjacent canals. After a downpour, the mass of lather in the canal rises so high that it lands on the roads and causes inconvenience to those travelling on two wheels.

This froth, which would otherwise have been a sight to behold, has a pungent smell and causes irritation on contact with skin. Although the residents have raised their concerns to the authorities, the government has not taken adequate measures to curb the problem.

​インドのハイテク産業中心地にあるベラン​ダ湖。現在​、​湖面には雪状の泡が大量に浮いて​いる。​その泡は、この湖に接続する運河にも押し寄せている。豪雨の後、運河上の泡の塊は高く盛り上がり路上にまで達する。そのため、二輪車で通行する人たちに不便を与えている。

​この泡は、​有害で​なければ素晴らしい眺めであるが、刺激臭があり肌に触れると炎症を起こす。住民は当局に苦情を訴えてきたが、当局は​事態を収める​ための適切な方策をとってこなかった。

​ ​5月には、2箇所の湖で白い泡から火がでた [19]。洗剤、油脂を含んだ大量の産業排水が発火の原因である。

​汚染問題はどうなっていくのだろう​か

​「ベラン​ダ湖を救え、バンガロールを救え [20]」という名を冠した​フェイスブック​ページ​は​、​地域住民​が湖の現状改善について​声を​上げるよう​促すとともに、​​当局側に湖の​汚染​​​防止対策や浄化​対策をとるよう​圧力をかけている。サンチタ・ジャー [21]は、2015年10月11日に開かれた会議 [22]の​議事録を掲載した。この会議には100名以上の活動家と地方紙の関係者が参加した。議事録の内容は下記の通りである。

* Huge [froth] at outlets, was forming even back in 2000
* More than 40% of Bangalore sewage enters the Bellandur lake via many inlets like direct drainage; storm water drains (SWD) filled with industry affluent carried all the way from different parts of the city.
* Pumping stations of sewerage treatment plants attached to Bellandur lake are either not functioning or not up to the capacity of incoming water.
* Due to its size and level of contamination of Bellandur lake, it has been continuously ignored/neglected/feared by government authorities.
* The air is contaminated and also due to lot of mosquitoes from lake, there are around 5-10 Dengue cases reported daily.
* The toxic smell around the lake is so bad that it turns silver articles to black!

​*​​排水口付近の大量の泡は、2000年にすでに生じていた。
​​*​バンガロールの下水の40%以上は、​湖に直結した排水管や雨水​用​排水管を経由してベラン​ダ湖へ放出される。なお、雨水排水管には各都市部から流下する産業排水が流入している。
​*ベラン​ダ湖に接続する下水処理場のポンプ施設は機能していないか、またはポンプ排水能力が、流入水量に対応できていない。
*ベラン​ダ湖の汚染は、あまりにも広範囲、高濃度なために、政府にとっては常に懸念材料でありながら見捨てられ放置されていた。​
​*大気汚染および湖で発生する大量の蚊のせいで、毎日5~10人程度のデング熱患者が​報告されている​。
*ベラン​ダ湖周辺の​有害ガスの臭気がひどく、銀製品は黒色に変色するほどである。

​サンチタは、署名運動 [23]も始めた。そして、汚染防止の合言葉を広めた。​カルナ​ー​タカ州首相​シッダラマイア​氏​はついに要望に応え [24]、自治体当局に対し現地に行き問題に対処するよう指示を出した。

​​​私は、バンガロール都市圏委員​(​BBMP Com)に電話をした。そして、ベラン​ダ湖の汚染問題を恒久的に抑制する対策を講じるよう要請した。

​カルナ​ー​タカ州汚染防止対策委員会​(​KSPCB​)​は、全市にわたる湖沼保護監視委員会の設立準備 [28]を進めている。汚染防止をさらに進めるため、監視委員会の構成員には、利害関係者として地域住民を含めることとしている。しかし、バンガロール在住のアシュレシュ・ガラテ [29]は、自分のフェイスブック上で、次のように言っている。つまり、1999年に最高裁判所は、各市当局にベランダ湖を浄化するよう指令を出した。しかし、17年後も同湖は汚染されたままである。​一体どれだけ時間がたてば、ベラン​ダ湖を浄化し、バンガロール市内にあるその他の湖の汚染も食い止めることができるのか。現時点ではまだわからぬままだ。

校正:Maki Ikawa [30]