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カンボジア政府による「いきすぎた人権の行使」への警告動画、リビアとシンガポールの画像を混同

動画で「リビア」として使われた、シンガポールの遠景。画像はユーチューブから。

動画で「リビア」として使われた、シンガポールの遠景。画像はユーチューブから。

カンボジア政府は先日、反対意見の表明や表現の自由といった市民の権利を「過剰に」行使することは社会にとって有害だとする動画を公開し、国民に注意を促した。
(訳注 : 動画が公開されたのは2016年5月29日。本記事の原文は6月1日に公開された。)

「無秩序な中で権利を行使すること」と題された動画が、カンボジア政府のユーチューブ公式チャンネルで公開され、そのあと非公開に設定変更された。(訳注 : リンク先の動画は現在非公開の設定になっている。)動画はリビアとシリアで起きたことをそれぞれの国の過去と現在の写真を使って例に挙げ、社会に混乱を招くやり方で権利を「誤用する」ことの危険性を国民に訴える内容になっている。

しかしこの動画には誤りがあった。反政府デモを契機として内戦状態に陥ったリビアのかつての姿として、シンガポールの遠景の映像が使われていたのである。
運よく、この動画は非公開にされる前にプレアヴィヒア・メモリアルによって再度アップロードされた。

政府傘下機関であるカンボジア人権委員会は、この動画の製作にあたって技術的な過失があったことを認めたが、このミスは取るに足らないもので他意はなかったと主張している。

しかしながら、この動画が物議をかもすことになった理由は国の画像を取り違えたという失態だけにあるのではない。活動家グループの中には、動画で流れるメッセージは人権の擁護を無政府状態と同一視していると見る向きもある。

動画の字幕は、シリアとリビアの苦難は自分たちの国に内戦状態を引き起こした国民自身に原因があると説明している。

This is the result of how the rights were misused…The excessive use of rights will bring about destruction, broken families and loss of hundreds of thousands of lives, loss of habitat, bloodshed… As a result, all the rights were lost.

権利の使い方を誤ったために何が起きたのか、見てみましょう。権利が乱用された結果、町は破壊され、家族は離散し、何十万もの人が亡くなり、住む場所が失われ、殺戮 (さつりく) が起き…ついには、すべての権利は失われてしまったのです。

リビアとシリアでは、2011年に強権的な指導者に抗議する民衆暴動が起きて破滅的な内戦に発展した。武装集団のISILは両国で勢力をふるっているが、事態を悪化させただけだった。

また、動画の終盤では国防相が演説において「色の革命」に言及し、カンボジアでも同様のことが繰り返されうると述べている。「色の革命」は旧ソ連諸国で起きた非暴力革命のことで、演説の中では西欧諸国の勢力によって焚き付けられたものだとされている。活動家たちは、国防相は政治的敵対勢力への取締りの激化に対して人権団体が毎週行っている抗議行動、通称「ブラックマンデー」のことを言っていると確信している。政府は、社会の平和や秩序を乱す意図を持った集団による違法な集まりを警察は決して許容しないと主張している。

さらに、この演説の中で国防相は「我々はカンボジアに大虐殺時代が再び訪れることを、なんとしてもくいとめなければならない」と述べて、人権を擁護する団体がクメール・ルージュにつながるものであると示唆しようとしている。クメール・ルージュは、1970年代のカンボジアで100万人以上の人々を死に追いやった罪で起訴されている政治勢力である。

カンボジア人権センターの事務局長、チャク・ソピアップは、この動画に対し以下のように懸念を示している。

The goal of this video is clearly to intimidate ordinary people from the full and peaceful exercise of their human rights, and represents a serious misrepresentation of both domestic and international human rights law. It is a rather unsubtle reminder that this government is not beyond resorting to serious violence, if necessary, to hold on to power.

この動画の目的が、広く平和的に人権を行使しようとする一般市民を威圧することにあるのは明らかですし、動画は国内外の人権法について全く誤った説明をしています。現政府は権力を持ち続けるためなら、必要とあらば激しい暴力に訴えることも辞さない、と露骨にくぎを刺しているのです。

政府がこの動画を公開した狙いは国民を委縮させることにあったのかもしれない。しかし実際には、動画が公開されてからの2日間で、リビアの部分にシンガポールの画像が使われているという失笑ものの誤りに多くの人が気づいた。以下のツイートは、インターネットにあふれた感想である。

あららら、これが政府広報? 本当に恥ずかしい。カンボジアのプライドはどこに行ったんだ。

ジョージ・オーウェルの小説に出てくる監視社会みたいだ。カンボジア政府制作の動画で、シリアやリビアの争いが「人権」のせいにされ、軍隊がそれを防ぐと言っている。

そんなばかな。みなさん、信じられないだろうけれど、実は権利とは爆弾のことなのです! 絶対に使ってはいけませんよ! …ってね。カンボジア人権委員会の皆様お仕事お疲れ様です。やれやれ。

シンガポールの写真が使われたのは技術的なミスだったのか、国民を欺くつもりだったのか。あるいは、当局の無能ぶりを示しているということなんだろうか。