紛争下でも学びたい! 若者たちが運営するカシミールの臨時学校

(原文掲載日は2016年9月20日です。また、記事中のリンク先はすべて英語のページです)

カシミールの若者たちは無料の臨時学校で子どもたちに勉強を教え始めた。YouTubeの動画よりスクリーンショット

カシミールの若者たちは無料の臨時学校で子どもたちに勉強を教え始めた。YouTubeの動画よりスクリーンショット

この記事は、当初、「ビデオボランティア」に掲載されたものである。「ビデオボランティア」はインドを拠点に活動する国際的コミュニティメディア団体で、数々の賞を受賞している。内容を一部編集し、コンテンツ共有の合意のもとにグローバル・ボイスに転載する。

インド北部、カシミールのシュリーナガル地域では2か月以上紛争が続いているにもかかわらず、子どもたちに対する教育サポートが続けられている。

今年7月に起こった衝突で、カシミール分離独立を目指す武装組織ヒズブル・ムジャヒディンの指導者であったブルハン・ワニが殺害された。それ以降、続く情勢不安の中で、カシミール地域の多くの子どもたちが毎日学校に通うことができないでいる。大量に駐留している治安部隊や夜間活動禁止令により、この地区の学校、企業、その他公共機関の施設などは閉鎖されている状態だ。

もっとも苦しんでいるのは、家から出られないで、教育を受ける権利までも奪われている子どもたちである。

こうした困難な状況で、カシミールの若者たちは無料のカーフュー・スクール(外出禁止令学校)を開き、子どもたちに勉強を教え始めた。これらの臨時学校は8月に始まった。先生はボランティアの若者たちだ。地域のあちこちから集まってきた彼らは、様々な専門分野の知識を持っている。

「学校は閉鎖中だから、このセンターに試験勉強をしに来ています」アービド・フサインは、カシミール地方シュリーナガルで、ビデオボランティア地域特派員のシャファト・ミール・フセインに語った。この一時的な学校は個人宅であったり、モスク、またコミュニティーホールを利用して開かれており、子どもたちにとって安全に教育を受け続けることのできる場所となっている。アービドはそんな学校で教育をうける多くの子どもたちの一人だ。

広義の国際法では、紛争当事者は可能なかぎり一般市民を保護しなければならない、と定められているにもかかわらず、学校や大学を軍による利用から守る明確な基準や規範はない。そのため、このような教育機関はしばしば様々な目的で軍によって利用される。

ジャム・カシミール州のナイーム・アクタール教育相はカシミール州教育委員会に対し、卒業試験の準備を行うよう指示を出したが、リポートによると、シュリーナガルでは学校の敷地が軍に占領されている状態である。

9月8日、50回目の国際識字デーを迎え、世界中の子どもたちのより良い教育と未来が誓われたが、いまだ世界の国々には紛争のため満足な教育が受けられない子どもたちが数多くいる。ここ数か月に起きた、独立派住民と治安部隊との衝突で、同州では82人が死亡、負傷者は千人を超えた。

ユネスコによる最新の「グローバル教育モニタリングレポート」によると、インドは2050年を目途に初等教育の完全普及が目標とされており、前期中等学校教育の普及は2060年まで、全国民の後期中等学校教育は2085年までに達成されることが指標とされている(訳注:「前期中等学校教育」と「後期中等学校教育」はそれぞれ日本の「中学校教育」と「高等学校教育」に相当する)。インドは今後グローバル・リーダーとして成長していくだろうとみなされているが、教育制度がしっかりと整わなければ、格差の縮小や責任ある消費行動の促進、国民全体の健康的な生活などを実現することは不可能である。

ビデオボランティアの地域特派員はインドのうち捨てられた地方の出身者たちで、まだ報道されていない情報をビデオにしています。その内容とは、「そこに生きる人々のニュース」です。国際的な人権問題や開発問題を、地域に密着した出来事から読み解きます。
校正:Rie Tamaki

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