- Global Voices 日本語 - https://jp.globalvoices.org -

台湾LGBTコミュニティーの闘い:誰もが平等に結婚できる社会を目指して

カテゴリー: 東アジア, フランス, 台湾(中華民国), 人権, 同性愛者の権利 (LGBT), 女性/ジェンダー, 市民メディア, 法律
Jacques Camille Picoux's solo exhibition poster in 2012. [1]

2012年に行われたジャック・カミーユ・ピクー氏の個展のポスター

あるゲイのフランス人教授が、伝えられているところでは昨年パートナーを癌で亡くした喪失感から立ち直ることができずに亡くなったという。この教授の死をきっかけに、保留になっている同性婚法の可決を台湾立法院に求める声が高まっている。

ジャック・カミーユ・ピクー氏 [2] は、1948年に生まれ、1979年に台湾に移り住んだ。パートナーの死から1年後の2016年10月17日、台北にある自身のアパートの外で、彼は遺体となって発見された。台北警察によると、ピクー氏は10階建てのビルの最上階から飛び降りて死亡したとのことである。アパート内にもビルの屋上にも争いの形跡が見られなかったことから、警察 [3]は殺人の可能性を否定した。

ジャックは台湾で著名な芸術家だった。2005年にフランス語教師を引退した後、芸術作品の制作を続け、2012年には 個展 [4] を開いた。彼はまた、受賞映画作品「The Assassin [5](訳注:邦題『黒衣の刺客』)」(2015年)においても重要な役を演じた。

彼の生徒や友人は、2015年にパートナーを亡くしたことよる鬱病が彼を死に追いやったのだと信じている。自分達の関係性が法的には認められなかったという事実に、ジャックは苦悶していた。

Jacques Camille Picoux and his partner. From Yen-Jong Lee's Facebook. [6]

ジャックの元教え子である李晏榕(イェンジョン・リー)氏は、ジャックのパートナーが亡くなった後の2015年10月に二人の写真をフェイスブックに 投稿し [7] 、彼らの物語について次のように書き綴った。

這是關於兩個男人的真實故事。
他與他,是一對愛好生命、愛好生活的伴侶,兩人在一起生活了35年,曾經許諾相伴終生,但是比較年輕的那位卻提前因病撒手人寰…我們姑且喚他作C?—C因癌症復發住院,之後病情?況愈下…病重的他只有一個執念,那就是讓J能?繼續住在他們兩個人的家,留下足?的錢給J,讓J的餘生可以無憂無慮地生活。這是一個多麼簡單的願望阿,但是他們沒有結婚、彼此沒有法律上的親屬關係,這樣一個簡單的遺願,現實上就是無比地複雜。…幾個與J相熟的學生是到很?期才得知C不久於人世的消息,大家?到醫院後,才知道C的家人已經開始進行財?的移轉…35年的共同生活,只因為沒有婚姻關係,到了最後還是任人宰割。
幾天後,C的?況越來越差,差到已經沒有意識…J心裡面明白,C是希望一切盡早結束的,「越快越好」,他?。然而,醫師的對口是C的家人,作決定的是C的家人,只因為J與C沒有結婚,他們在法律上,就是兩個不相關的陌生人。
C走了。那一天,J在家裡,不願意進食,只不斷地喝著伏特加,昏睡,醒來,哭泣。

これは二人の男性にまつわる実話である。

彼らは愛し合うカップルで、パートナーとして35年間共に過ごして来た。二人は生涯を共にすることを誓ったが、若い方の彼が病気でこの世を去ってしまった。ここでは彼をCと呼ぼう。Cは癌の再発により病院に運ばれたが、容態はすぐに悪化していった。[中略]病院にいる間の彼の願いはたった1つだった。それは、パートナーのJが二人のアパートで生活を続けることと、Jが生活を送るのにあまり心配せずに済むように彼に十分なお金を残すことだ。それはとてもささやかな願いだった。しかし、彼らは結婚しておらず、二人の関係性には法による保護がなかった。Cの小さな願いを実際に叶えることは、極めて難しいと判明したのだった。[中略]Jの友人と生徒達は、Cの容態を末期になるまで聞いておらず、病院に駆けつけた際に、Cの家族が彼の財産を自分たちに移し始めていたことを知った。[中略]CとJは35年間共に暮らしていたにもかかわらず、JはCの財産譲渡に関して何もすることができなかった。なぜなら彼らは法的には結婚していなかったから。

数日後、Cは容態が悪化し、意識を失った。Cができるだけ早く痛みが取り除かれることを望んでいるとJは知っていた。Jは医者に言った。「一刻も早く」と。しかし、医者はCの家族の意見にしか耳を傾けず、(蘇生の)意思決定をしたのは、Cの家族だった。結婚していないというだけで、JとCは、法的に言えば関係のない赤の他人として扱われたのだ。

Cが亡くなったその日、Jは家にいた。彼は食べることを拒み、ウォッカを飲み続けた。寝て、起きて、そして泣いた。

Jacques Picoux [8]

ジャック・ピクー氏と彼の作品

ジャックの死に駆り立てられ、台湾の人々は、立法院で保留になっている同性婚法の可決を強く要求するようになった。

この法案は、2012年に立法院に提出され、2013年に第一読会を迎えた。しかしながら、2014年に同性結婚に反対する大規模なデモを受けて、法案の審議は一時中断された。台湾現総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)氏は、LGBTの権利を強く支持しているが、LGBTコミュニティーは、蔡政権がこの法案の審議を引き延ばしている [9] ことに失望している。

台湾は、LGBTに優しい環境であることから、アジア有数のリベラル国家と考えられている。しかし、ジャックの死が、この「優しさ」がいかに不十分かを物語っている。
ジャックの死のニュースを聞いた、自身もレズビアンである瞿欣怡(シンイー・チュウ)氏は、LGBTの権利に対するリップサービスを批判し [10] 、支持へのより具体的な行動を呼び掛けた。

畢安生老師也在今天走了。
為什麼在一起35年的伴侶卻不能以合法的配偶身?生活,不能以合法的配偶身?一起面對疾病與死亡?
這個世界根本就很?假!?什麼台灣已經對同志很友善,根本就是口惠,口頭上?支持同志,卻一點點權益都不願意鬆手,那根本就是?偽!
?什麼同志平權,假的!只要同志婚姻不合法化,一切都是假的!

ピクー教授は今日この世を去った。
35年間ある人のパートナーであった人物が、どうしてその人の法的な配偶者として生きることができなかったのか。どうして法的な配偶者と同じように共に病気に立ち向かい、死を迎えることができなかったのか。
この世界は偽善的だ! 台湾はLGBTに対して大変優しいと言う人々がいるが、これらの言葉は これらの言葉はリップサービスに過ぎない。 彼らはLGBTを支援していると言うが、LBGTに対して何の権利も与えようとしていない。この「優しさ」は全くの偽善だ!
「LGBTコミュニティーに平等な権利を」などと口先だけで空々しく支持するのはやめろ! 言葉だけでは空虚なものだ! 同性結婚が合法化されない限り、何の意味もない!

LGBTコミュニティーでは、また、10月29日の来たるプライド・パレードを法律制定を促す最後の一押しとすべく、準備を行っている。 今年のパレードのテーマは「偽善的な優しさのマスクを打ち砕こう [11]」だ。

我們的環境充斥著各種「為?好」的「假友善」?詞,裡面包裹的不僅是幽微、隱形的?視,更是一種自以為是的假性接受,未見LGBTIQA性多樣社群真實的生命經驗與處境,於是?視變的更加難以察覺卻仍舊存在,不只讓性多樣社群無法自在展現,還必須不斷與之角力、對抗,讓人身心?疲,傷痕累累。

我々の社会は、(LGBTコミュニティーに対する)リップサービスにあふれている。親しげでおためごかしの言葉を用いて語り掛けるが、それらの言葉の根幹には隠された微細な差別と偽りの受容がある。人々は現実に起きていることを見ようとせず、LGBTコミュニティーの多様な人々が直面する困難な状況に対処しようとしない。差別は目立たないが、広まっている。このような差別の下では、LGBTの人々は本当の自分でいることが許されず、(親切な言葉に隠された偏見と)闘い続けなければならない。それは悔しく、辛いことだ。

パレード主催団体は、上記の「親切な」言葉の例をいくつか紹介している。

我不反對同性戀,我的孩子不是就好。

ゲイやレズビアンに反対ではありませんよ、自分の子供がそうでない限りはね。

女女我可以,男男我不行。

レズビアンは問題ないけれど、ゲイは受け付けられないかな。

我覺得變性人很勇敢,但還是別讓小孩接觸,小孩子不?。

トランス・ジェンダーの人々はすごく勇敢だと思うけれど、何も知らない子供たちにはトランス・ジェンダーについて教えるべきではないと思います。

得愛滋就好好保重不要出門,否則對別人來?很危險。

もしAIDSに感染しているのなら外出するべきではないでしょう。でないと他の人に危害を与えてしまうからね。

做自己是很好,但女生還是要保守一點。

ありのままの自分でいるのは良いことだけれど、女の子は保守的な方が良いですね。

台湾の立法院で同性婚法が可決されるのは、単に 時間の問題 [12]だと確信している人もいる。しかし、この法案は今現在3年以上保留にされており、一部の人が懸念するのは、政府が同性婚でなく同性間パートナーシップを認める法律へと内容を縮小するのではないか、ということだ。そのほうがより多くの国民から支持を得られるからという理由で。

最新情報:審議が一次中断していた結婚平等法は、同性結婚を認める民法修正案である。本法案は、国会議員の一派により修正の上、10月25日に改めて提出された。新たな修正案を可決するには多大なる時間と労力を要するであろうが、法案はようやく審議が再開される予定である。

自殺の最大要因は未治療の鬱病です。鬱病は治療可能で、自殺は防ぐことができます。自殺願望のある方々や、情緒不安定な方々への相談窓口から助けを受けることができます。あなたの国の自殺防止ヘルプラインを見つけるには、 Befrienders.org [13] のHP(訳注:日本語サイトは「NPO法人 国際ビフレンダーズ東京自殺防止センター [14] 」からご覧いただけます。)を訪れてみてください。
校正:Yuko Aoyagi [15]