中央アジアとコーカサス:美女の変遷で100年をたどる動画集

12Cut.com制作の「美女の100年(100 Years of Beauty )」シリーズのスタイルにならい、旧ソ連諸国の映像作家たちが、各々ユーラシア大陸片隅における女性ファッションの歴史を記録したオリジナル動画を作っている。これらは、世界的に好評を博したネット上の流行を長続きさせるのに、一役買っている。

かつてロシア帝国の下腹部を成していた国々の中で、最初に思いつくのはキルギスタンだ。人口6百万人の国で、山が多く比較的水が豊かな、中央アジア東部にある。

動画の視聴者は、キルギスの伝統的な遊牧民衣装を通して歴史を見ることができる。キルギスではシャーマニズム的信仰からイスラム化に至るまでの道程が長く、19世紀半ばにようやくピークに達した。

どのような服装までをこの国の宗教的許容範囲とすべきかについては、現在でも意見の分かれるところである。キルギスのアルマズベク・アタンバエフ大統領は率直で時にけんかっ早い人物だが、外国からの悪影響としてニカブ・ベール着用に警戒を促す立て看板を、全国に広げることについては賛同している。
(訳注:ニカブは目だけ出して顔を隠す黒いベールで、キルギスの伝統衣装とはかなり異なる。ニカブ姿の女性からイスラム過激派を連想させるような謎の立て看板が、突如首都各所に立てられる事件が2016年7月にあり、その折大統領は看板を擁護する発言をした)

旧ソ連地域の「美女の100年」動画に共通する特徴として、1940年代に悲しげな場面が見られる。この地域が連合国側についてファシズムと戦った時代であり、地域一帯でのもっとも一般的な呼び方は「大祖国戦争」である。

またカザフスタン版では、1930年代でのモデルは沈痛な面持ちに見える。そのころのカザフスタンはウクライナと同様、スターリンの農業政策により引き起こされた飢饉が最もひどい時期だった。

カザフ版動画のモデルが他民族との混血らしく見える件で、視聴者の間で論争が起きた。

Bakittas Sanitas: 60% Asian 30% Turk 5% Iran 5% Slavic

バキータス・サニタス:アジア系6割でトルコ系3割、あとイラン系とスラブ系が半々だな。

Zhyldyz Urazalieva: 50% Kazakh+50% Kazakh!!!

ジルディズ・ウラザリエバ:半分カザフ人、もう半分もカザフ人だよ!!!

次の動画はまた別のカザフスタン版で、地元ニュースサイトのテングリ・ニュース推奨である。

チュルク語系の産油国アゼルバイジャンにも100年動画が2種類あり、ユーザーの注目を引こうと競い合っている。

どちらの動画からもわかるのは、アゼルバイジャンがトルコ同様に、独自のスタイリッシュさを保ちながら、東西のファッション要素を取り入れてきたことだ。

ナゴルノ・カラバフという係争地域をめぐって軍事紛争の火種を抱えているため、現実の世界ではアゼルバイジャンから直接ではそう簡単には行けない国だが、次に紹介するのはアルメニアだ。

アルメニア版でモデルが着ている独特な衣装は、おそらくこの国がキリスト教徒を多数派とする社会として世界初であったことと関連している。オスマン帝国衰退期に起きたアルメニア人虐殺の時期には、悲しげな場面がある。

また、おかしなことに、1980年代にモデルが小型携帯電話を持っているのが見受けられるが、これは実際に普及した時期より前である。

旧ソ連地域における「美女の100年」最新の動画は、タジキスタンからのもので、YouTubeに2016年10月22日にアップされている。

モデルの衣装は、昔風のタジク北部、それに古代シルクロードの都市サマルカンドやブハラで長年着られてきた衣装を反映したものだ。これらの都市は、現代ではウズベキスタンの州となっているが、イラン語系列のタジク語を話す人々にとって特別な文化的重要性を持ち続けている。

この動画からは、西洋の影響を全く受けていないばかりか、中東におけるイスラム文化の服装とも異なる様式であることがわかる。

シリーズがすべて揃うには、まだジョージア(グルジア)やトルクメニスタン、ウズベキスタンからの動画投稿が待たれるが、今ある動画だけでも、ますます均一化へ向かう世界において多様性の良さを広めていくのに、大いに役立っている。

YouTubeユーザーのDas Staubkornが、もっともな意見を述べているので、ここにご紹介する。

I am usually in favour of globalization, but it definitely ruined the unique and beautiful clothing of every country. Folk costumes are so beautiful, we should wear them again.

私は常々、グローバリゼーションはいいことだと思っているが、それによってあらゆる国で独特の美しい衣装が廃れてしまったのは間違いない。民族衣装はこんなにも美しいのだから、また着るようにしなければ。

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