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メキシコ政府:地元の反対を受けて中断中のガスパイプライン建設工事を再開  

カテゴリー: ラテンアメリカ, メキシコ, 人権, 先住民, 市民メディア, 民族/人種, 環境
Tribu Yaqui en consulta. Foto del usuario Flickr Malova Gobernador. Usada bajo licencia CC 2.0

ヤクイ族​の集会​ 写真:フリッカーユーザーのマロヴァ・ゴベルナドル [1] 使用条件​:CC 2.0

​メキシコ北部で行われているガスパイプライン工事が、ヤクイ族の地域社会を巻き込み大問題となっている。ヤクイ族は、自らの保留地を縦貫するアグア・プリエタ・ガスパイプラインのルートに不満を示している。​

2016年10月21日、事態はさらに悪化した。ガスパイプライン建設推進派の人たちが反対派の人たちを 襲い [2]、​死者1人、負傷者8人を出すとともに甚大な物的損害を与えたからだ。

ヤクイ族​​は、​長い​弾圧 [3]に耐え​るとともに様々な抵抗運動を積み上げてきた歴史も持っている。​​​彼らはメキシコの他の先住民族と同様に、私企業による侵略や非先住民の支配と戦い、仲間の命を失ってきた。​​ちょうど2年前​(​それは​アグア・プリエタ・ガス​パイプライン​をめぐる紛争が起​こる​前のこと​だった​)、大規模水路 [4]の建設に異議を申し立てた。この水路は、ヤクイ族に残された神聖な川から分水し、エルモシージョ市へ送水するためのものだった。​​​

アグア・プリエタ・​​ガス​パイプライン事業計画によると、​​同​管路の起点は米国のアリゾナ州で、終点はメキシコのソノラ州となっている。一部はヤクイ族保留地内に延長90㎞にわたり敷設される [5]ことになっている。この保留地はメキシコの法により彼らのために保障された土地なのである。公平性と透明性が確保されたと見なされる説明もなく、かつヤクイ族コミュニティ全体を対象としたと考えられる説明会ももたれないまま​​ガス​パイプラインを敷設するのは、ヤクイ族保留地の主権を侵害 [6]するものだと、コミュニティリーダーは言う。

ロマ・デ・バクムのヤクイ族は最近、ガスパイプライン工事の一時中止を勝ち取った [7]。しかし、地方メディアによると [8]、メキシコ政府当局はガスパイプライン工事を続行すると宣言した。「一地方」の要求により「次世代の利益につながる事業」を中断することはできないというのだ。

ソリダリダード・トリブ・ヤクイ [9](​Solidaridad Tribu Yaqui​​​​​、「ヤクイ族の連帯」の意​)のFacebookページによると、公正かつ透明性の確保された説明会や交渉が​​​まったく行われないままに、 工事は進められる [10]ということである。

On one hand, the Yaquis of Loma de Bácum oppose the pipeline and have legally filed an appeal against the work. Thus far, the project has been carried out beneath a simulated consultation of SENER (Secretariat of Energy) [11]Them, together with the company Sempra Energy, the government of Hermosillo, the local media, and the municipal governments (all of which have supported the work) have sought by any means necessary to debilitate the opposition of Loma Bácum.

The other visible actor in this conflict, backed by the supporters of the project, are Yaquis from 7 other towns, who in a rather surprising event, have become the cannon ball of violence and intimidation so that the construction of the gas pipeline penetrates the territory of Bácum.”

ロマ・デ・バクムのヤクイ族は​​ガス​パイプライン​の建設反対の立場をとり、工事差し止めの提訴を​起こした​。だが、これまでのところ、この事業はSENER(エネルギー省) [11]のまやかしの諮問の下に続行されてきた。​​SENERは、センプラ・エナジー社やエルモシージョ市 [12]、地元メディア、その他の地方市当局など、この事業を支持する組織と結託して、​​​なりふり構わず​ロマ・デ・バクム住民による反対運動を弱体化する手段を​探ってきた。

今回のいさかいで、​​ガス​パイプライン建設​推進派の後ろ盾を得て、目立った活動をしているその他の集団としては、他の7ヶ所の町に住むヤクイ族の集団がある。驚くことに彼らは​バクムの保留地内を貫通する​​​​ガス​パイプライン​を建設しようと、反対派に対して​まるで大砲玉を打ち込むような強大な暴力と脅迫を仕掛けてきた。

​ソリダリダード・トリブ・ヤクイ​はまた、差別と民族を代表する議員の不足について懸念を示した​​ [10]

“These rich men don’t care about the life of one, two, or three people, much less if they are indigenous. They are those whom don’t care if an indigenous government falls. They are those that don’t care if the Yaqui culture is exterminated. What is important to these rich men is to conclude the work and pocket all the profits, solidifying the appropriation of the Yaqui Territory.”

富裕層は、1人や2人の生活がどうなろうと知ったことではないのだ。ましてや、先住民の生活など目もくれない。先住民の統治が崩れようと、文化が絶滅しようと富裕層はお構いなしである。彼らにとって重要なのは、ヤクイ族保留地の歳出予算を揺るぎないものとして、事業を完結させ、利益のすべてをポケットに入れることなのだ。

メキシコのジャーナリスト、ジェマ・ビレラ・バレンズエラは、性差別の視点に立って反対運動を伝えてきた。彼女は、アグア・プリエタ・​​ガス​パイプライン​建設反対運動が始まって以来、​ロマ・デ・バクムのヤクイ族女性たちが直面した脅迫 [13]の事例を取り上げた。

“Mujeres de la comunidad Yaqui (que pidieron el anonimato por seguridad) informaron que la construcción del ducto a cargo de la empresa Gasoducto Aguaprieta ha generado violencia que va desde enfrentamientos entre los mismos miembros de la comunidad, hasta amenazas a líderes Yaquis y mujeres de la misma etnia, defensoras de los Derechos Humanos de los pueblos indígenas y de la tierra.

Explicaron que se han provocado incendios de automóviles y riñas que han terminado en homicidio. Algunas mujeres de la comunidad han tenido que permanecer en lugares que consideran seguros, por recomendación de las autoridades Yaquis del pueblo de Bácum, porque al oponerse a firmar el permiso colectivo para la construcción del ducto, han recibido amenazas.”

​ヤクイ族​​コミュニティの女性たち(身の安全のため匿名を希望)は、ガソドゥークト・アグアプリエタ社(訳注:メキシコの​​ガス​パイプライン​会社)が計画する​​ガス​パイプライン建設​に伴う様々な暴力沙汰や脅迫にについて語っている。例えば、同じ​ヤクイ族​間の衝突をはじめ、​賛成派から​反対派のリーダーや女性に対する脅迫、その他、先住民の人権擁護を訴える人たちや環境保護を訴える人たちへの脅迫を挙げている。また、住民間の衝突の結果、自動車に火がつけられたり、取っ組み合いが生じたりして死者さえ出たとも伝えている。住民女性のなかには、​バクム​のヤクイ自治当局の勧めに従い安全な場所に避難しなければならなくなった者もいた。彼女らは​​ガス​パイプライン​建設の共同許諾書に署名をすることを拒否したために脅迫を受けたのだ。

ジャーナリストのアルダビ・オルベラ [14]によると、​ロマ・デ・バクムのヤクイ族住民はメキシコ人権委員会および米州人権裁判所に不服申し立て [15]を行ったということである。先月には、ジェマ・ビレラ・バレンズエラは、​​ガス​パイプライン​建設に反対するヤクイ族住民が 今もなお脅迫を受けている [13]と伝えた。

校正:Rie Tamaki [16]