権力者の慰み者にされたアフガン少年たち:社会復帰の道は?

バチャ・バジ男性たちのダンスをカブールのホテルで撮影した動画より、スクリーンショット。動画は2013年9月9日、ユーザーのSofiによりYouTubeにアップされた。プライバシー保護のため顔にボカシを入れている。

バチャ・バジとは、アフガニスタンで何世紀も続く男色の風習だが、当事者間の関係は対等にはほど遠いものだ。

「boy play(お稚児遊び)」などと訳されるこの行為は、年長男性と14~18歳の少年が関わるのが典型的だ。年長男性は多くの場合権力ある軍幹部で、政府軍側にもタリバン武装勢力側にも見られる。

少年たちは売られてきたり、時には親元から誘拐されてくる。そして踊りや遊戯、性的快楽を供する目的で、それぞれ武装勢力の長の下に留め置かれる。彼らは軍幹部の仲間内での地位を高めるための私的財産とみなされており、社会復帰したくてもうまくいかないことが多い。

ディプロマット誌に掲載されたアキレシュ・ピララマリの記事によると、現在も横行しているバチャ・バジ行為によってくっきり見えてくることがある。それは、「アフガニスタンでは同意の上の同性愛関係は死刑になるにもかかわらず、少年に対する搾取的関係は見て見ぬふりをされる、という悲劇的状況」だという。

歴史的起源

歴史的起源をたどるのは難しいが、バチャ・バジ行為は文学によく登場する。ハーフェズ・シーラーズィーやジャーミー・ヘラーティーといった14世紀以降の偉大なペルシャ語詩人たちも、自分の少年の美貌を称える詩を詠んでいる。著書『シャーヘドバーズィー・ダル・アダビーヤーテ・ファールスィー(ペルシャ文学におけるバチャ・バジ)』の中で、テヘラン大学ペルシャ文学教授のスィールース・シャミーサーが主張する説によると、ペルシャのロマン派詩人の創作意欲を喚起した無名のミューズには、女性よりむしろ男性が多い。

アフガニスタンにおいてバチャ・バジ行為が廃れないのは、一説によると、伝統的に男女席を同じうせずの距離が、幼少期から青年期まで一貫して保たれているためだという。

しかし、1979年のソ連のアフガン侵攻に続く抵抗運動の時期に、この行為が流行したことは疑う余地もない。侵略軍と戦うムジャヒディーン(訳注:イスラム義勇兵)は地元を離れ、長期にわたって辺境の山岳地帯に潜んだが、そこによく少年兵を同伴した。

最近でも、2016年12月のアフガニスタン独立人権委員会(AIHRC)の警告によると、アフガン北東部での激戦後にバチャ・バジ行為が再び急増している。委員会はバチャ・バジ禁止法を可決するよう国会に求めた

この伝統は、ソ連侵攻への抵抗運動が10年以上集中したアフガン北部地域と関わりが深いが、現在最も加害者となっているのは、アフガン南部や東部を根城にする武装勢力タリバンである。

タリバンも2001年米国主導の侵攻以前に政権を握っていた頃は、この行為を違法とし、関わった年長男性を罰していたというのに。

アフガンのソーシャルメディア上で反タリバンの人たちは、タリバンのバチャ・バジ行為関与を強く非難している。しかしこうした批判によって、少年たち自身に付きまとう汚名がかえって強調されてしまうという、悲しい副作用がしばしば起こる。

لواطت و بچه بازی، لذت جنسی بردن از پسران جوان در بین طالبان مسلح افغانستان بیداد میکند.

ソドミーにバチャ・バジ、アフガン武装勢力タリバン内部での幼い少年相手の性的搾取には、言葉を失うよ。

Posted by Said Azami on Sunday, June 5, 2016

タリバンの魚雷

バチャ・バジの少年たちは、従軍慰安「夫」としてだけでなく、人間兵器として配備されることもある。2015年4月、アフガニスタン国家保安局は16歳の少年を自爆攻撃未遂で逮捕した。報道によると少年はタリバンの手によって輪姦された上、攻撃目標であるカブール州バグラミ地区警察本部に差し向けられた。

AFP通信の特報によると、タリバンはこうした少年たちを、アフガン政府の兵士や警官をおびき寄せる餌としても利用している。

あるアフガン人Facebookユーザーが怒りをぶちまける。

Afghanistan is only an Islamic country by name and no Sharia law is implemented in here. Because in Islam those who change their gender are cursed and are supposed be punished hard. But in Afghanistan Bacha Bazi  almost have became a culture. [Sic]

Posted by ‎فیس بوک وطنی‎ on Monday, January 20, 2017

アフガニスタン(訳注:正式名称は「アフガニスタン・イスラム共和国」)は名ばかりのイスラム教国、シャリーアをないがしろにする地だ。イスラム教の下なら性転換者は呪われ罰せられるはずなのに、アフガニスタンではバチャ・バジがもはや文化になっている。

戦場以外でも披露宴やパーティーで、少年たちは女装させられ踊り子として使役される。

18歳を過ぎると彼らの多くは主人の下から解放されるが、問題はそれだけでは終わらない。

少年たちは犯罪者でなく戦争被害者 

人権委員会(AIHRC)はバチャ・バジ行為を法で禁じるよう求めているが、アフガニスタンにおける法執行には慢性的問題があることから見ても、禁止法はたいして被害者の助けにならないだろう。

確実に変えなければならないのは、バチャ・バジの被害者に対する世間の見方である。被害者は不道徳でみだらな存在だと見られているせいで、自身の家族や社会全体から排斥されることになる。ひとえにこうした見方があるために、被害者はますます過激武装組織に食い物にされる。「神の意志」なるものを追い求めることによって罪の贖(あがな)いをせよ、と組織は被害者にしつこく勧めてくるのだ。

目下アフガン社会は、この問題が拡大していることをしぶしぶながら認めようとしている。また、こうした少年たちが他のこの国の戦争被害者、例えばタリバンの地雷や国際治安支援部隊連合軍のドローン攻撃被害者と同様だということも、なんとか認めようとしている。

人権委員会(AIHRC)自体も、社会復帰の手立てのひとつになりうる。現在、委員会にはDV被害を受けた女性を支援する部門はあるが、バチャ・バジの被害者男性向けには特に設けていない。

心に傷を負ったこうした青少年のためにより良い支援制度ができれば、彼らがいわれなく受けてきた汚名をそそぐのに少しは役に立つことだろう。

校正:Rie Tamaki

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