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宇宙への切符は手にいれたのに、地球上での移動は制限されてしまうという皮肉

カテゴリー: 西ヨーロッパ, イギリス, テクノロジー, 人権, 健康, 市民メディア, 文学, 移住と移民

イギリス在住のイスラム教徒でメンタルヘルスに関する活動家であるフセイン・マナワール氏は民間宇宙飛行機の搭乗券を勝ち取った。同氏は来年、地球の大気圏外を旅行する予定だが、地球上の国際線飛行機に乗ろうとする度に保安上の理由で足止めを食うという。写真提供:フセイン・マナワール

この記事は当初アンドレア・クロッサン [1]により2017 年3月23日にPRI.orgに掲載 [2]されたものである。PRIとグローバル・ボイスの提携によりここに再掲する。

フセイン・マナワール氏は自身が足止めの疫病神に捕らわれていると考えている。事実ロサンゼルスからマケドニアに向かう時、空港で何度も尋問されてきた。しかし彼は、有名人になったので今後は足止めされずに済むだろうと軽口をたたいている。

「イスラム教徒だからといって皆テロリストだという汚名をそそぐにはいったい何をしたらよいだろうかと、ちょうど探していたんです」とマナワール氏は言う。

マナワール氏はパキスタンの血筋だが、イギリスのエセックス州に生まれ育った。一遍の詩を書いたことで宇宙飛行を獲得したマナワール氏が、タイでの優勝スピーチで「私の名前はフセイン・マナワールです。けれども私はテロリストではありません」と言ったことが彼を一躍有名にした。彼が身をもって受けてきた数多くの人種差別的な仕打ちに抗って述べたことだ。

拘留されたり尋問されたりしたことを全部記録しているのかという問いかけに対して、「もううんざりしてやめました」とマナワール氏は言う。「まったく、私が拘束された時間を足し合わせたらとんでもない時間になりますよ」

優勝者には宇宙旅行券が与えられるという、18歳から30歳を対象にしたライジングスター(訳注:新星となる人材の発掘の意)コンテストをクルーガー・カウン社 [3]が主催した。90を超える国からおよそ30,000人がこのコンテストに参加し、2018年打上げを予定しているXCOR(エックスコア)社の宇宙飛行機Lynx(リンクス)のたった1つの座席を競った。

「私の名前はフセインです」というタイトルの詩が優勝を勝ち取った。3分間で語られるその詩は、ある少年の母親宛ての遺書から始まり、後半には母というのは実は母なる大地のことだと明かされる。

審査員と聴衆の前で詩を披露するマナワール氏の姿:
One Young World(ワン・ヤング・ワールド)でのスピーチ

「私は詩人である、それが私の使命なんです。人々の生活がより良くなるように、また共感できる社会になることに願いを込めて詩を書きます。詩に宇宙が降りてきたんです。このコンテストに参加することで、もっともっと私の作品を真剣に受け止めてもらいたかっただけなのです」とマナワール氏は言う。

YouTube上の同氏によるチャンネル「フセインズハウス」 [4]は彼自身の詩や面白い映像を集めたものになっているが、彼の主題は常にメンタルヘルスとそれを取り巻く偏見についてだ。

26歳のマナワール氏は、コンテストに優勝して以降、この主題への関心を高めるためのトークを発信し続けている。マナワール氏は友人がうつ病と診断されたのをきっかけにメンタルヘルスについて強い関心を持つようになったが、このことを家族に打ち明けるのはとても気詰まりだった。しかし今はメンタルヘルスについてごく普通に自由に話せるようになり、また、宇宙旅行することでよりメンタルヘルスについて語る機会が増えることを望んでいる。

メンタルヘルスのことになると、どうしても熱くなってしまうんです。私たちは素晴らしい時代に存在し、この日々や時代の中で大人になろうとしています。しかし、私たちは皆同様に、人とつながることも、同時に切り離されてしまうことも起こるのだと思います。申し上げたいのは、同じ空間でつながるよりも、世界中でつながるほうが簡単だということもあるのです。

宇宙に行くことなど夢にも思わなかった。恵まれた機会に感謝をするかたわら、宇宙旅行が本当に現実なのかと思うこともある。とマナワール氏は続ける。

「こっそり言うとね、飛ぶ日が着実に近づいてくるのは分かっているんですけど……行くのが正直ちょっとだけ怖いんですよ。」

校正:Moegi Tanaka [5]