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「#清廉なケニアへの回復」を目指す「キーボード戦士たち」

カテゴリー: サハラ以南アフリカ, ケニア, デジタル・アクティビズム, 市民メディア, 抗議, 政治, 若者, 行政
A screenshot of a YouTube video of Kenyans taking part in #TakeBackKenya protest in Nairobi singing with raised fists. [1]

ケニア民衆が拳を振り上げて「清廉なケニアへの回復」を求め、抗議活動をしている。Youtubeのスクリーンショット。ケニア、ナイロビにて。

20161212日、ケニアはイギリスから独立して53周年を迎えた。この日はジャムフリ(スワヒリ語、共和制の意味)記念日である。これまでのナイロビでは、色々な建物に国旗が掲げられるくらいで、ビジネスの中心街は閑散としていて、外を出歩くケニア人はほとんどいない。このように一日が過ぎるのが普通だった。

しかし、一般のケニア人特に若者たちが、この記念すべき日にある行動に出た。ツイッターのなかのケニア人(KOT)として知られる彼らは、中心街を平和行進するという計画を立てたのだ。この計画はハッシュタグ「#清廉なケニアへの回復 [2]」という名で数か月前から計画されていた。このデモを実施するにあたり、ウェブサイト [3]告知 [4]もし、警察当局から必要な許可も得ていた [5]

この平和への行進は、汚職まみれ [6]で役立たずの政府を糾弾しようという目的で始まった。にもかかわらず、警官らが人々を追い散らそうと男女かまわず催涙ガス弾を投入した [7]ことで、デモ側と警察が激しく争うことになった。デモ隊はトム・ムボヤ・ストリートからジェーバンジー・ガーデンズに差し掛かったところで、国を讃美する歌を唄いながら「リパ カマ テンダーズ(不正入札した資金を、我々に回せ)」、「ケニアを取り返せ」と声を上げていた。

ケニアの民衆が独立記念日にあるにも関わらず、催涙ガスで攻撃を受けるという皮肉な出来事に対し、ネット市民は黙っていなかった。53年前、彼らの先人たちが必死に勝ち得たものが自由であった。その自由を制限する与党ジュビリー連合(訳注:ケニアの連立政権)に対し、彼らの多くが声を上げ始めた。

ケニアでは他に類を見ないほど汚職が蔓延 [8]している。昨年、国際汚職指数(CPI)での指標 [9]も散々だった。0から100の指標(0に近づくほど汚職の度合いが高い)のなかで25と示された。

プライスウォーターハウスクーパーズ社による、公的横領に関する2016年の調査 [10]によると、 ケニアは世界で3番目に汚職にまみれているとのことだ。ウフル・ケニヤッタ大統領は汚職問題への取り組みを放棄した [11]ことで有名だ。 彼の政府もひどく腐敗しているとされる疑惑について、次のように語ったのを動画 [12]に収められている。「Sasa Mnataka nifanye(今さら何をしろって言うんだ)」と。 

ハッシュタグ「#清廉なケニアへの回復」運動は批評家、ネット市民や中流階級が主導した。彼らはしばし「キーボード戦士」と呼ばれる。この市民たちは以前、インターネット上ではあるが、政治改革や政治責任を追及しようとしたとして訴追されたことがあった。

この運動は既存の社会組織などへの参加型ではなく、初めての市民の主導型となった。政治改革、公的資金のより良い説明責任に対する彼らの思いや不満、要求をソーシャルメディア空間から現実世界へと持ち出した。

ジャムフリ記念日にはハッシュタグ「#清廉なケニアへの回復 [2]」は国内でトレンド入りし、運動自体も現実のものとなった。そしてケニア市民からも厳しい質問が飛んだ。特に、国立病院の医師たらが全国規模のストライキも行っていたのも同時期であった。公的資金の流用疑惑が明らかになっていたのだ。政府職員の働く、まさに行政機関であるケニア保健省に根を張る汚職である。このような背景があり、医師らは給与の引き上げを求めた。

医師とそして一般市民が同時に活動したのだ。ここにおいてはハッシュタグ「#不正入札した資金を、我々に回せ [13]」を使った。不正入札した資金と同等の給与を医療関係者に支払え、と要求したのだ。

「#清廉なケニアへの回復」運動の運営者たちは、市民主導の住民参加であり、積極的な市民性を発揮した運動であると明示したが、ケニアのメディア局はこの運動の参加者を活動家として言及している。

ルイス・ムレーマは、ツイッターでこの運動に参加した。彼はそこでケニアの「横領政権」に対し、次のように要求をした。

私は現横領政権に対し、以下のように求める。ケニア人のみんな、ケニアを奪還しようではないか。

別のツイッターユーザー、フーンディ・ンデグズはケニヤッタ大統領による独立記念日のスピーチをもじって、このように言った。

あんたらは催涙ガスで武装して何をしようって言うんだ。

マーティン・ンダムブーキはこう問いかける。

「ケニアの我が仲間たち」ってことば以外に、ケニヤッタ大統領が真実を語った部分があっただろうか。

新年を迎えるにあたり外国人らが政権交代を求めている、というケニヤッタ大統領の声明に対し、ガットウィーリはこう話す。

違う。ウフルは政権なんて手にしていない。彼が手にしているのは悲劇よ。そんなの2017年中に終わらせなさいよ。ああ神さま。彼はなんて芝居じみた大統領なのでしょうか。

ケニアでは2017年の8月に選挙がある。そして現状への不満は国中に広がっている。

ルイーズ・キヌーシアはこうツイートした。

#TakeBackKenya我が国の政府首脳による搾取。いつか自分の口座にさえ手を付けるだろう。公用口座と思い込んで。

ワイグルは、この間、反汚職倫理委員会(訳注:EACC)という組織を挙げて、ケニアという国がいかに皮肉的であるかと考えた。

EACCは汚職と戦っているようで実際は何もしていない!

ケイト・ムブートはこの行進への参加を次のように振り返った。

「清廉なケニアへの回復」運動で、私は初めて抗議したわ。朝食事をとるのも怖かった。だけどおかげで私は権力に立ち向かえるようになったの。

ハッシュタグ「#清廉なケニアへの回復」が国内でのトレンド入りをしてから、多くのケニア人たちは、汚職について互いの立場を問いかけるメッセージをシェアし始めた。この運動はケニアにおけるアラブの春 [35]になりうるのではないだろうか。

校正:Etsumi Itai [36]