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アリペイの新アプリは、個人情報を悪用して中国の格差を広げている

カテゴリー: 東アジア, 中国, テクノロジー, 女性/ジェンダー, 市民メディア, 検閲, 経済・ビジネス, 言論の自由, GV アドボカシー
Screen capture of "White Collar Diary" circle via Twitter. [1]

「ホワイトカラー日記」サークルの画面(ツイッターから引用)

中国最大のオンライン決済システムである「アリペイ(支付宝)」は、先週の11月24日に新しいSNS機能「サークルズ」を発表した。このSNSの特徴は、ユーザーのオンライン活動を追跡し、身元情報、社会的地位、オンラインでの支払い記録に基づき、セサミと呼ばれる信用ポイントをつけることである。

アリペイは、イーコマースの巨人アリババの子会社、アント・ファイナンシャル・サービス・グループが運営しており、4億5千万ユーザーを抱えている。この新しいSNSアプリには、サークルと呼ばれる趣味、消費性向、学歴、職歴などに基づくユーザーグループがあり、現在およそ100サークル [2]ある。

たとえば、ペットフードや金融投資商品をネットで購入し、特定のオンラインゲームを頻繁にプレイするプログラマが、アリババ関連アプリに本名や個人情報を登録している場合は、IT専門家、ペット好き、金融投資家、オンラインゲームなどのサークルに招待される。

サークルごとに入会条件が決められており、国営メディアや一般のネット住民は、エリートでないユーザーを入会させないルールについて非難している。このアプリは、かなり下品な方法で社会的格差を称賛しているように見受けられる場合もある。

問題になったサークルは、「キャンパス日記」と「ホワイトカラー日記」で、どちらも国営メディアに目をつけられ、11月29日に閉鎖させられた。

両サークルの入会条件は次のようなものだった。

A typical post on White Collar Diary with a suggestive message that said: See who can comment on me :) :). Image via Twitterer @kerotto. [1]

ホワイトカラー日記の思わせぶりな投稿「誰が私にコメントできるかしら :) :)」
(@kerottoのツイッターより引用)

1. 女性しか投稿できない
2. 男性は、読む、いいねをつける、(アリペイで)チップを払うことしかできない
3. 750セサミ以上を持つ男性は、記事にコメントもできる

以下は、男性の覗き見を誘うかのような、ホワイトカラー日記のウェルカム・メッセージである。

歡迎各位來到「白領日記」!
本圈子只有白領女士才可以發佈動態哦!你可以在這裡聊聊你的職場經歷,也可以記錄每天的生活瞬間。
不能發佈動態的小伙伴,你可以盡情的點贊、打賞。用你的雙眼發現美!

ようこそ、ホワイトカラー日記へ!
ここでは、ホワイトカラーの女性しか投稿できません。仕事のことを話したり、日常の写真を投稿したりしてね。
男性は投稿はできないけど、「いいね」やチップはOK。かわいい子を見つけよう!

男性からチップをもらうため、女性は彼氏募集のメッセージをつけたセクシー写真を投稿するようになった。

この2つのサークルは、案の定すぐに公序良俗を乱すサービスに指定され、ネット市民はこのアプリをアリピンプ(ピンプは売春斡旋の意味)と呼ぶようになった。男性が高額なチップを払い、セサミポイント得るというルールは、中国の金持ち男性と一般女性間の金と力の不均衡をあらわにした。

ツイッターユーザーの@straighteaは次のように指摘 [3]している。

支付宝圈子当然不是一个好产品,它内核都烂成渣了,这有什么好辩驳的?产品基石就是消费阶层、物化女性,运营自导自演出了问题再嫁祸给用户。即使是要寻求社交转型,就真的没有更好方式了吗?脸都不要。

アリペイのサークルは、ひどいアプリで話にならない。これは、社会的ステータス自慢や女性の商品化が前提になっており、ユーザーから批判されるのも当然だ。アリペイは、いくらSNS事業に進出したくても、恥知らずと後ろ指を指されたくなかったらもっとマシな手段を選ぶべきだ。

国営チャネルのCCTVも、すぐにこの考えを批判し、11月28日の放送 [4]で、これらサークルのルールは猥褻かつ道徳規範を乱していると指摘した。

同日、アント・ファイナンシャル・サービス・グループの広報担当者は、謝罪し、ネットコミュニティの規範を犯している投稿とユーザーをすべて削除すると述べた。そして2つのサークルは、次の日に閉鎖された。

個人情報についての問題

2つのサークル閉鎖後も、この新しいSNS自体が持つ問題は残る。つまり、ユーザーのオンラインショッピングや金融取引の履歴等のビッグデータが悪用される可能性があるからだ。たとえば、アリペイでの購入商品を公開する機能がある。これは、ユーザーのプライバシーを侵害し、裕福自慢の風潮や中国に広がる格差を助長することにもなりかねない。

アリペイはWeiboで謝罪文 [5]を掲載したが、それに対するコメントを見ると、ユーザーの経済状態がサークルの入会条件になっていることに多くの人が憤慨している。

做好钱包功能,不要捆绑社交。

オンライン支払い機能を、SNS機能とは紐づかないようにしてほしい。

我存钱的东西和我的钱包不需要跟别人社交,只认识我一个人就行了。

他人が私の貯金や支払いを見る必要はない。私自身を見て欲しい。

圈子可以搞,但拜托再新建一个app,不要和钱包挂钩。不要共用账号。

サークル機能自体はいいけど、支払い機能とは別のアプリとして開発してほしい。アカウントも別にしてほしい。

掌握点客户信息就想搞社交大数据?那银行不无敌了?想清楚自己是干嘛的,一个钱包就别搞社交。

顧客情報を自由にできるからSNSでそれらを活用して、さらに情報を増やしたいのだろう。でも、銀行がSNS事業をしますか?自分の立場をわきまえて支払いサービスに徹しましょう。SNSという武器は放棄しなさい。

别再搞社交了!钱花在哪了本来就很隐私的事,我现在就害怕一个不小心就把花钱的动态分享出去了,整天付个钱担惊受怕的。

SNSから撤退せよ。お金の使い方は個人情報です。自分のアリペイでの購買記録が、SNS経由で他人に漏れることが心配でなりません。

校正:Hiromasa Mita [6]