これは2017年2月13日付でPRI.orgに掲載されたトレーシー・トンによる記事である。PRIとグローバル・ボイスの提携によりここに再掲載する。
ジシャン・バガワディはいつも何か新しい歌を探し求めている。正確には新作と言えないが、最近素晴らしい歌が見つかった。45年以上も前のジョージ・パーキンスの1970年作品、「クライング・イン・ザ・ストリート」だ。
この歌はその2年前に起こった公民権運動の指導者、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺事件に抗議して書かれたものだ。
しかしバガワディは、現在の平等権を求めるたたかいのためにも「クライング・イン・ザ・ストリート」を歌えると確信した。そのようなわけで、今の時代にこの歌を蘇らせたのだ。
原曲の歌詞について彼はこう語る。「『ストリートをデモ行進する人がいる。ストリートで泣いている人がいる。ストリートで命を落とす人がいる』打ちのめされたね……。とてもわかりやすかったし、心にグサっときた。すごく大切なことを歌っていたよ」
バガワディは自分の経験からも「クライング・イン・ザ・ストリート」に共鳴した。彼はインド系アメリカ人としてシカゴに生まれ、ムスリムとして育った。父親のブルース、ソウル、ゴスペルなどの幅広いレコードコレクションを聴いて大きくなった。「オーティス・レディング、サム・クック、カーティス・メイフィールド、ジェームス・ブラウン……みんなぼくの子供時代のサウンドトラックみたいなものだったよ」と彼は言う。
彼の父親はフリーのジャーナリストだった。インドに住んでいたが、そこからアメリカの公民権運動を支援していた。バガワディはこう語る。「父は黒人文学の論評を書いていた。黒人文学の芸術的表現にいつも夢中になっていて、ラングストン・ヒューズやゾラ(ニール)ハーストンを読んでいたよ」
この父の姿がバガワディに多大な影響を与えた。彼はブラック・ライブズ・マター運動の同志になった。これは黒人に対する暴力や組織的な人種差別主義への反対運動だ。「この運動でするべきことは簡単さ。僕らの為に道を切り開き、たたかいの最前線で踏ん張ってきた人たちがいる。僕たちムスリムはそんな人たちと共闘しなきゃいけない。つまりそれは僕らのたたかいだし、その苦しみは僕らの苦しみなんだよ」
言葉だけより音楽はずっと強力だ、と彼は続ける。「カーティス・メイフィールドが『みんな、用意はいいか、もうすぐ汽車が着く』と歌うのを聴いてごらん。マヘリア・ジャクソンの『ジェリコの戦い』に耳を傾けてごらんよ。こんな歌を聴いて気合いが入らない人には、一体どんなショックが必要なんだ?」
ジシャン B ークライング・イン・ザ・ストリート (公式ビデオクリップ)