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プエルトリコの人々に元気を届けたミュージカル、リン=マヌエル・ミランダの「ハミルトン」大成功

カテゴリー: カリブ, ラテンアメリカ, 北アメリカ, アメリカ, プエルトリコ(米領), 市民メディア, 朗報, 歴史, 芸術・文化, 音楽

(訳注:原文掲載日は2016年4月22日であり、記事内容は当時の状況を反映している)

Ademas del premio Pulitzer, Hamilton gano tambien el premio Grammy por mejor album de teatro musical. Imagen tomada de video. [1]

ピューリッツァー賞に加え、「ハミルトン」は2月にグラミー賞の最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を受賞。YouTube [1]画像。

プエルトリコの報道機関もソーシャルメディアも、今週はリン=マヌエル・ミランダの話題で大にぎわいだ。ミランダは自分で音楽から脚本まで手がけたミュージカル「ハミルトン」 [2]で、権威あるピューリッツァー賞演劇部門 [3]の今年度受賞者になったのだ。

ミュージカル「ハミルトン」は、作家ロン・チャーナウが著したアレクサンダー・ハミルトンの伝記に基づいている。彼はカリブ諸島から独立前のアメリカに移住し、そして英国からの独立後、のちに初代財務長官を務めた。ミランダは、2012年の演劇「スプーンひとさじの水」で受賞したクイアラ・アレグリア・ヒューズ [4]についで、その栄誉にあずかった2人目のプエルトリコ人である。

「ハミルトン」はブロードウェイでセンセーションを巻き起こし、批評家や一般客から賞賛されている。リン=マヌエルは自身のミュージカル「イン・ザ・ハイツ」で2008年度トニー賞を受賞し、2016年にはタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」 [5]の1人に選ばれた。映画製作者のJ・J・エイブラムス [6]はタイム誌へ彼に関するこのようなコメントを寄せた。

Lin-Manuel Miranda conceived, wrote and stars in this breakthrough masterpiece, cementing his place as one of the most miraculous creative minds of our time. Like Alexander Hamilton, Miranda is a powerful reminder that greatness comes from unlikely places. His Puerto Rican parents’ collection of Broadway-musical records was as strong an influence during his New York City upbringing as the hip-hop he would come to love. There is no recipe for genius, but one can see the disparate elements that Miranda has miraculously seized and synthesized, embraced and celebrated, to create something profoundly moving and wholly original. He has redefined the musical and made us see anew the origins of the remarkable experiment called democracy.

リン=マヌエル・ミランダはこの画期的な傑作の構想・執筆・主演の全てをやり遂げた。そしてこの時代の最も素晴らしい芸術家の1人としてその地位を固めた。アレクサンダー・ハミルトンのように、ミランダは「ひょうたんから駒が出る」ことを強く思わせる人物だ。ミランダはニューヨークでの少年時代、プエルトリコ出身である両親のブロードウェイ・ミュージカルのレコードコレクションを聴いて育った。そしてのちに夢中になるヒップホップ同様にその強い影響を受けた。天才にレシピは不要だ。しかし、ここには他人にはない何かを目にすることができる。それはミランダが驚くべき感覚でとらえてまとめ上げ、心から信じ讃美してきたものだ。こうして人を深く感動させる全くオリジナルなものを作り上げたのだ。彼は改めてミュージカルの意義を明らかにした。そのおかげで私たちは民主主義という素晴らしい実験が新たに始まるのを目の前にしたのだ。

イリノイ州選出のプエルトリコ系米下院議員ルイス・グティエレスは、エイミー・グッドマンの独立ニュース番組「デモクラシー・ナウ!」のインタビュー [7]で次のように意見を述べた。彼は1950年代のニューヨークのギャング抗争を描いた舞台と映画「ウエスト・サイド物語」を引き合いに出した。

Isn’t it a difference when we get to write the scripts for the Broadway plays? The depiction in West Side Story [8] of me and fellow young Puerto Ricans, and today the depiction of us as a community when we get to write the scripts, it’s very, very different. I’m so proud that I live in both the America in which a West Side Story showed us as gangbangers, as foreigners, as people that weren’t from here, and someone who writes about the history of the United States, Hamilton, in a way that all Americans celebrate.

私たちプエルトリコ人がブロードウェイ演劇の脚本執筆をすると、一味違ったものになると思いませんか?ウエスト・サイド物語 [9]に描かれた私たちプエルトリコの若者の姿と、コミュニティーとして今描かれる私たちの姿は大きく違っています。2つのアメリカに暮らせるなんてこんな光栄なことはありませんよ。ウエスト・サイド物語で、プエルトリコ人はならず者のよそ者でアメリカ生まれではないとされたあの時代のアメリカ。そして「ハミルトン」というアメリカの歴史を書いた人物のおかげで、プエルトリコ人が全てのアメリカの人々から賞賛を受けている今の時代のアメリカに。

プエルトリコ大学の出版物「ディアログ」(Dialogo of the University of Puerto Rico)の中で、アナ・ガルシア・ローマンはこのような歓迎すべきニュース [10]を振り返りながら不安定な経済と財政管理状態に対して言及した。

En un momento en el que las cosas en la Isla se tornan un poco grises, levantarse con noticias como esta, le sube el ánimo a cualquiera.

プエルトリコの状況が少し悪くなってきている今、このようなニュースと共に目覚めると誰でも元気が出るというものだ。

確かにリン=マヌエル・ミランダの偉業は、プエルトリコを取り巻いている不安定な経済情勢への効果的な解毒剤だ。そしてプエルトリコの人々が皆、誇りに思って良いものだ。とにかく今週は、プエルトリコの人々が自信を取り戻せるようなニュースが国の新聞の第一面を飾っていた。

校正:Yasuhisa Miyata [11]