アフガニスタン:今もなお強制結婚の犠牲になる少女たち

(訳注:原文掲載日は2017年7月18日)

記事解釈用で写真掲載。撮影: Flickrユーザー サム・ナシム(CC BY 2.0)

今年の初め、アフガニスタンは早期結婚や児童婚の廃絶を目的とした国家行動計画を立ち上げ、「幼な妻」という悪しき慣習に対する先例のない政策に踏み出した。立ちはだかる多くの課題は明確で、政府の実行力は乏しい経過をたどっているが、活動家たちは計画が紙切れ以上に有意なものになることを期待している。 

ガールズ・ノット・ブライズ(訳注:児童婚の廃絶を目指して活動を行う市民団体)の報告によると、この近年、発展途上国では3人に1人の少女たちが18歳を迎える前に結婚させられるという。この悪習はアフガニスタンで特に問題となっており、2016年の児童婚の比率は33%だった。人権擁護団体は、子どもたちが18歳になる前は、いかなる結婚も人権侵害に当たると訴えている。それにも関わらず、アフガニスタンでは現在も児童婚が執り行われている。アフガニスタンの民法では、16歳での結婚は認められているのだ。

アフガニスタンでは、これらの結婚はカブールなどの大都市よりも概して田舎の地域で行われる。

国家計画は女性省と情報文化省により発足し、今年4月に採択された。

アフガニスタンの大統領夫人、ルーラ・ガニは国家計画を最も支持してきた人物の一人で、次のように述べている。

“I urge all Afghan families to avoid child and forced marriages. Your girls face a huge risk when they get married at a young age. Early marriage robs them from their childhood and future opportunities.”

私はアフガニスタンの全ての家族が児童婚と強制結婚を避けることを強く願います。ご息女たちは、若い年齢で結婚すると恐ろしいリスクに直面します。早期の結婚は彼女たちの青春時代や将来の様々な可能性を奪ってしまいます。

児童婚を廃絶し、教育の機会を促進することは、国連による17の持続可能な開発目標の1つである。

アフガニスタンの国家行動計画は、執行力においての実績が乏しい。2007年の女性支援のための行動計画 (NAPWA)や、2009年に立案された女性への暴力の排除を目的とする法律(EVAW)、そして全ての女性支援計画の前進である安全保障理事会決議1325(UNSCR1325)の施行を促す計画も成功したとは言えないだろう。

さらに、早期結婚や児童婚の廃絶を目指すアフガニスタンの国家行動計画は、公には有効でないようである。したがって、政策の立案に関わっていない者にとって児童婚を阻止するための施策が履行されているかや、計画を実現するための構図がどのようになっているのかを理解することは難しい。

ゼフラの悲劇

約1年前の2016年7月18日、ゼフラという少女の悲しい知らせが届いた。強制結婚を強いられ妊娠4ヶ月であった当時14歳の彼女は、夫の家族に焼き殺された(当時のニュース映像は悲惨なものだった)。ゼフラの父親であるムハンマド・アザムはニューヨーク・タイムズ紙の取材に答えた。義理の娘だけでなく夫までもが、ゼフラが妊娠のためアヘン畑で働くことを拒むと、彼女を刃物で刺したり殴りつけたりしたという。

亡くなる前に身体的な虐待を受けていた証拠をもみ消すために、娘は焼き殺されたのだとゼフラの父親は主張した。

ゼフラは、昔から行われている「バード」の犠牲者だった。それは、争いごとの解決に少女たちを巻き込み、彼女たちを別の家族に譲ってしまうというものだ。確かに、ゼフラは父親が夫の家族の女性と不倫したという理由で手放されることになった。彼女は両家族のいざこざを解決するために利用されたのだ。

残念ながら、ゼフラの悲劇は児童結婚ではありふれた話の1つに過ぎない。幼な妻それぞれの結婚物語があるが、幸せな結末を迎えることはほとんどないのだ。

アフガニスタンの家族が娘たちを手放すのはなぜか?

家族が娘たちを手放す決断に至る際、多くの要因を考慮する必要がある。しかし、少女たちを手放す決断は、発言権を持たない女性よりもほぼ決まって男性から下されるという点に注目することが重要だ。

また、ここで大切な要素は貧困である。アフガニスタンの田舎の地域では、多くの家族が金銭や家畜との交換に娘を手放している。家族が子どもたちを養えなくなると、娘を手放すしかなくなる場合も少なからず見られる。羊、牛、そして金銭は、残念ながらアフガニスタンの父親たちにとっては自身の娘たちよりも価値のあるものかもしれない。

この事実を受け、教師で女性の人権活動家であるハン・ワリ・ アディルは、昔から日常的に行われている「バード」に抗議したのだろう。彼は2016年に1ヶ月間アフガニスタンの国会の前で野宿し、アフガニスタンでは「少女たちが家畜のように扱われている!」と訴えた。

多くの幼な妻たちが、ゼフラのように家族間のいざこざを解決するため「バード」の取り決めで交換条件として結婚してしまう。

他の例では、幼な妻たちが家族間で取引される。例えば、アフガニスタンでは男子は女子よりも価値があるとされる。そのため、父親は息子のために嫁をもらおうと、娘を積極的に交換することがある。これは伝統的な慣習の1つで「バダル」と呼ばれる。

バード」と「バダル」ともに、2009年施行の女性への暴力の廃絶を目的とした法律(EVAW)により禁止されているが、どちらの慣習も現在いまだに行われている。

児童婚がもたらす問題

児童婚において最も明白で致命的な問題は、早すぎる妊娠である。若い少女たちの身体は、妊娠や出産の身体的負担を耐えるだけに十分成熟していない。若い年齢で結婚した少女たちは性的虐待により体内に損傷を受ける可能性もある。

田舎の地域では、医療施設や適切な医療処置の不足がこの問題をより一層深刻なものにする。少女たちは妊娠や出産に関わる何の治療も医療的な援助も受けることができない。それは、たびたび少女たちの命を奪うことにつながってしまう。

新しい家族に身体的・精神的虐待を受ける少女たちもいる。その上、彼女たちは新しい家族の「もの」として扱われるため、学校に通うことや、働きに出ることもできないことがよくある。彼女たちが経済的に自立することは不可能だ。

少女たちの多くが、結婚から逃れる方法は自ら命を絶つことだけだと思っている。ボラ・グル・ヘハが、燃え立つ灯油ランプで焼身自殺を図る決心をしたのは、彼女が16歳の時だった。

婦人科医で、女性支援団体メディカ・アフガニスタンの設立者であるモニカ・ハウザーは、アフガニスタン女性革命協会のニュースサイトに報告した。「自殺率は特に都市部で上昇しています。女性たちが強制結婚に抵抗しているのです」。地方に住む少女たちは教育を受ける機会が少なく、助けを求められずに耐え苦しんでしまう傾向がある。

校正:Yoko Kageyama

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