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トルクメニスタン:スターバックス開店はフェイク・ニュース

カテゴリー: メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 経済・ビジネス, 芸術・文化, 食

Atvatan Turkmenistanが記事にしたこのスターバックスは本物ではない。画像はそのウェブサイト [1]のスクリーンショット。

この記事は EurasiaNet.org [2]共同 [3]で、許可を得て転載しています。

トルクメニスタンの首都アシガバートにある豪華なショッピングモールに「スターバックス」の看板を掲げ、開店したばかりのカフェが話題になっている。その外観はまさにスターバックスといった感じで、フラペチーノは15マナトで売られている。(訳注:マナトはトルクメニスタンの貨幣単位)

しかし、想像通りこのスターバックスは偽物なのだ。

グルバングル・ベルディムハメドフ大統領による独裁政権のもとで、昨年大々的にオープンしたショッピングモールに、いつの間にかスターバックスができているとソーシャルメディアはしばらく騒然となっていた。 [4]

トルクメニスタン専門ニュースサイトはそのカフェの写真を掲載 [1]している。カフェは白い大理石が目を引くバクチャールィク・モール(Bagtyyarlik mall)の中の観葉植物で飾られた一角に店舗を構えている。そしてそのカフェは明らかにシアトルを拠点とする企業のロゴを掲げ、一見本物そっくりである。

トルクメニスタンに駐在するアルメニア大使もそのカフェの写真を撮り、世界で最も閉鎖的な国の一つといわれるトルクメニスタンでもグローバリゼーションが到来したのだ [5]と歓呼の声を上げた。

しかし残念ながら、スターバックスはこのカフェが世界的に展開している自らのチェーン店とは全く関係ないものだと『EurasiaNet.org』に伝えている。

「我々はトルクメニスタンには出店していないことを確認しています。」スターバックス広報部長ジェイミー・ライリーはEメールでそうコメントした。

70か国にある24,000店舗のスターバックスの位置を調べられる店舗検索機能アプリケーション(Starbucks’ store locator app)を使っても、その場所でチェーン店舗は見つからない。(隣国カザフスタンではたくさんのスターバックスを見つけることができる。)

その偽のスターバックスでは、カプチーノのグランデを12.5マナトで飲むことができる。だが、その値段はアシガバートにある他のトレンディなカフェにおけるカプチーノの平均価格の倍以上である。

そのカプチーノの値段は公定為替レートでドルに換算して3ドル40セント以上の価格となるのだが、注目すべきは闇市場で1ドルが6マナト以上で取引されているということだ。

エネルギー商品の世界的な価格下落によってもたらされているトルクメニスタンの財政危機は輸入品の急激な価格上昇を引き起こしている。偽のスターバックスがどのような種類のコーヒー豆や商品を仕入れるかによって商品の価格は決められる。つまりそのカフェで支払う金額は、まさにトルクメニスタンの国内通貨購買力の低下を表しているのだろう。

世界中で知られている商標が旧ソ連の中央アジア諸国でしばしば乱用されている。キルギス共和国の首都ビシュケクでは、ティージーアイ・フライデーズのブランド名を使用したレストランが、そのアメリカのレストランチェーンから脅迫めいた抗議状を受け取ったあと、2014年に営業を停止した。ビシュケクにはワッツアップカフェ『Whatsapp cafe』(訳注)や偽のバーガーキング『Burger Kiиg』もある。明白な著作権侵害にならないようにキリル文字を斬新に用いたことに関しては、この偽バーガーキングが一本とったという感じだが。(訳注:WhatsappはアメリカのWhatsApp Incが提供するアプリの名)

トルクメニスタンは著作権をある程度保護するベルヌ条約 [6]の加盟国だ。しかし、キルギス共和国とは違い、知的財産権を本格的に取り扱う世界貿易機関には加盟していない。

今回のトルクメニスタンでのケースで特に興味深いのは、問題になっているそのカフェの企業形態だ。

グルバングル・ベルディムハメドフ大統領がバクチャールィク・モールのオープニングセレモニーに出席していたところをみると、そのショッピングモールが経済的に重要な場所であることは明らかだ。さらに、この独裁国家において実業家が政府の支援もないまま事業を成功させることはほとんどない。それゆえ、何者かがこのカフェに対して政治的な庇護をしているのではないかという疑問が湧いてくる。

偽のスターバックスは、トルクメニスタンで9月半ばから下旬にかけて開催される2017アジアインドア・マーシャルアーツゲームズに先立ってオープンした。残念ながら、この模造スターバックスは大会のためにつくられたいわば模造のオリンピック村からとりわけ近いというわけではなさそうだ。そのため、コーヒー好きのスポーツファンがこの模造シアトル系カフェを体験するには、時間と労力を使って足を運ばなくてはならないだろう。

校正:Moegi Tanaka [7]