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中国:新たな規則ではSNS上で情報をシェアするにも許可が必要

カテゴリー: 東アジア, 中国, テクノロジー, メディア/ジャーナリズム, 市民メディア, 検閲, 行政, 言論の自由, GV アドボカシー

(原文掲載日2017年5月5日)

オイワン・ランによって合成された写真

中国の国務院情報部は5月2日、個人のブログとWeibo、WeChat等ソーシャルメディア上で個人がニュース記事を書き込んだり読んだりすることを制限する最新版の規制を公表した。この規則のもとでは、利用者は記事をソーシャルメディア上で書く、または配信する前に許可を得ることが必要とされる。

最新版 [1]の「インターネットニュース情報サービス管理規定」は2017年6月1日より施行される。

新規則ではニュース報道の制限に加えて、個人がニュース情報サービスを利用する際に、実名登録することを義務付けている。

元の規定は、2005年9月に、オンラインのニュースサイトが「非合法」な情報源に基づいたニュースを書き掲載するのを制限するために導入された [2]。すべてのオンラインのポータルサイトが、当局のインターネットニュース情報サービス部門によって公的許可を与えられている報道機関のニュースしか配信できないようにするのが目的である。

中国では、よく知られる幾重の検閲があるにもかかわらず、デジタルメディア環境により、個人がオンラインで重要な情報を活発に発信するという状況 [3]が生まれている。この国の様々なソーシャルメディアプラットフォームにより、さらに多くの個人の発信者がブログやWeibo、WeChatといった公共のプラットフォームで、注目される記事を書いたりコメントしたりすることができるようになった。個人ジャーナリストや商業メディアの中には、読者からの現金のチップや宣伝広告の収入により仕事を維持することができるようになったケースさえある。

政治的にデリケートな情報を掲載する個人ブロガーは、中国政府やSNSの公共プラットフォーム上の社会違反通報システムによる厳しい検閲の影響を受けやすい。しかしなお多くの個人ブロガーは、政治的・社会的規則を破らずに重要な情報を共有する記事を書く方法を心得ている。携帯向けライブ配信アプリの存在は、生放送で行われる報道を当局が検閲し配信停止させることをさらに難しくした。

新たに発表された規定は、これまでの制限範囲を広げ、ウェブポータルとオンラインのニュースサイトから全てのソーシャルコミュニケーションプラットフォームに延長させていて、これまで可能であった情報の発信を抑制する可能性がある。

有名なテックブロガーのウィリアム・ロンは、最近の投稿で、新規定がソーシャルメディア利用者にもたらす影響について、規制の中でも改正された条項を強調することで説明した [4]

第五条 通过互联网站、应用程序、论坛、博客、微博客、公众账号、即时通信工具、网络直播等形式向社会公众提供互联网新闻信息服务,应当取得互联网新闻信息服务许可,禁止未经许可或超越许可范围开展互联网新闻信息服务活动。

第5条:ウェブサイト、アプリ、フォーラム、ブログ、マイクロブログ、モバイル公共プラットフォーム(WeChat等)、インスタントメッセージ、ライブ配信を利用するインターネットニュース情報サービスは、インターネットニュース情報サービス部門に許可を得なくてはならない。無許可のインターネットニュース情報サービスを禁ずる。

ロンは旧・新規制を比較し、すべてのソーシャルメディアへの規則範囲の拡大について指摘した。

之前原《规定》里,主要是针对网站进行监管,即网站提供新闻信息服务,需要取得互联网新闻信息服务许可,新《规定》将范围扩大到新媒体、自媒体、社交网站等,也就是说,在微信、微博里转发门户网站的新闻,需取得互联网新闻信息服务许可,否则将处一万元以上三万元以下罚款,新媒体不再是“自由世界”了。

旧規定の対象範囲は、インターネットニュースサービス許可システムによるニュース情報サービスを提供するウェブサイトに限定されていたが、新しい規則では対象をニューメディア、ミーメディア、ソーシャルメディアまで拡大した。これにより、WeiboとWeChatの利用者もニュース情報を配信する際に許可を得なければ、1~3万人民元(おおよそ17~51万円)の罰金が科せられる。ニューメディアはもはや自由な世界ではない。

規定によるとニュース情報とは、政治、経済、軍事、外交、速報を含む社会的・公共的出来事に関するコメント、報道のことを指すという。「インターネットニュースサービス」という用語は、ニュースの報道、編集、配信、拡散と配信プラットフォームの運営を指す。

ボイス・オブ・アメリカとのインタビューの中で、アメリカに拠点をおく中国出身で反体制派のウェン・ユンチャオは、一般の個人とウェブサイトにとって、ニュース情報について当局の許可を得るのはほぼ不可能だろうと指摘した [5]

所以一般個人乃至普通的網站想申請新聞信息服務許可證,我想都是一個不可能的任務。我想在這個條例下,所有跟新聞時政相關的,包括評論,包括論壇,包括內容的話,我想都會受到極大的限制。

一般人とウェブサイトがニュース情報の許可を得るのはほぼ不可能なことだと、私は思う。このような規制の下では、時事や政治に関する全てのコンテンツ、報道、コメントが制限される。

新しい規制はさらに、インターネットニュース情報サービスを利用する際、読者に実名登録を義務付けている。

第十三条 :互联网新闻信息服务提供者为用户提供互联网新闻信息传播平台服务,应当按照《中华人民共和国网络安全法》的规定,要求用户提供真实身份信息。用户不提供真实身份信息的,互联网新闻信息服务提供者不得为其提供相关服务。

第13条:インターネットニュース情報提供者は、インターネットニュース情報プラットフォームサービスを個人に提供する際、「中華人民共和国サイバーセキュリティー法」に基づく規制に従い、実名登録をしなくてはならない。インターネットニュース情報提供者は、実名登録をしていない利用者にサービスを提供することはできない。

この新しい条件はソーシャルメディア上でのニュース関連の会話内の匿名コメントを減らす目的で作られたと、ロンは考えている。

这条新《规定》主要是针对网民,也就是新闻的读者,对于网民的最大影响是,看新闻需要实名了,如果用户不向新闻平台提供真实身份,新闻平台不得为之提供相关服务,据我推测,这项规定主要是为了预防用户在新闻里匿名发布评论,实名之后,用户再发“违法”评论就容易抓了。

新しい規制は、ニュースの読者である一般のネチズンを対象としている。(訳注:ネチズンとはネットワーク市民のこと)最大の影響は、ニュースを読むことができるのが実名登録をした人だけに限られるということだ。利用者が実名登録しなければ、ニュースプラットフォームは彼らにサービスを提供することができない。私の予想は、この措置は利用者が匿名コメントをニューススレッドに残すことを妨げるためだということだ。実名登録により、「違法」なコメントをしている利用者を発見しやすくなる。

中国から亡命し現在ドイツを拠点に活動するチャン・ピンも、実名登録はソーシャルメディアのニューススレッド上の匿名コメントをなくすためだという点に同意している [5]

雖然它可能很難操作,它可能最終能管住的就是,你實名登記了,你就不能匿名發評論,而不是真正的實名看新聞…

(記事の読者の実名登録を)実施するのは難しいが、一番あり得るのは読者が匿名でコメントできなくなるということだ。

規制はさらに、インターネットニュース情報サービス提供者に、ニュース記事を処理するための報道許可証を所持する専門の編集者とジャーナリストを雇うこと(第11条)、個人の資本投資家がニュース編集室の運営に一切干渉しないことを要求している。

2013年以降、中国当局は主に中国のうわさ法 [6]を用いて、ソーシャルメディア上で個々のネチズンが不確かなニュース情報を配信することを禁止してきた。うわさ法では、どんなニュースや情報も政府筋からの公表ではない場合、うわさと見なされる。

新しい規制では、独自の目撃情報の発信、非合法な情報源に基づくニュース情報の発信、ニュースへの匿名コメントをいずれも禁止しており、ネチズンの自由に発言する権利を奪う合法的根拠が増えたと言える。

この規制は6月1日に施行されるが、関連機関とソーシャルメディアプラットフォームが全ての条件を実施できるのか、多くの人が疑いを投げかけている。

真正实施的话,新浪微博要死,或者卖给国家,腾讯说说也不会有了,各大公众号也不会有了,朋友圈也许不算是公众,还可以幸免

規定が完全に実行されるなら、Weiboは廃止されるか国に買収されるかしかない。Tecentも同じだろう。WeChatの公共プラットフォームも機能できなくなる。モーメンツ(訳注:WeChat内の機能)は公開されていないから生き残れる……

等于说,大家直接把所有通讯软件都卸载就行了,否则,只要你说话,就犯法!扼杀创新,真是悲哀

すべてのコミュニケーションツールを削除せよ。さもないと発言したらいつでも法律違反になり得ると言われているようだ。(このような規制が)革新を抑制している。とても悲しいことだ。

也就是说我到街上录一段视频或者直接打开直播软件就是违规了?另外将新浪科技的这条微博转发到qq、微信、或者我自己的微博也是违规的?因为我没有许可证啊,这是规定明令禁止的转载服务啊,话说现在有几个人没有往微信、qq、自己的微博转发过新闻链接或者新闻图片的?

これって、道端で動画を撮影したりライブ配信のアプリを開いたりしたら、法律違反になるかもしれないってこと? この投稿をQQ、WeChatか自分のブログに横断投稿しても法律違反になるってこと? 許可を得ていないからという理由で。私は許可を持っていないし、この法律では許可されてない情報を拡散することは禁止されている。情報や写真を自分のWeChat、QQやブログで一度も拡散したことない人なんて、この世に存在する?

この規則の実行がほぼ不可能であることから、法執行機関かソーシャルメディアプラットフォームが部分的に規制を実施するという事態が避けられないだろう。

这个立法还是普遍违法选择执法了

この規制は、ありとあらゆるオンラインの活動を非合法化し、結果的には部分的な施行に留まるだろう。

今はまだ、この規制が6月1日以降どのように施行されるかを厳密に知るには早い。しかし、ソーシャルメディア上での個人の情報発信がさらに抑制されるだろうということは予想して良いだろう。

校正:Moegi Tanaka [7]