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香港:新たに登場したフードトラック、足並み揃わず

カテゴリー: 東アジア, 香港(中国), 市民メディア, 芸術・文化, 食
Hong Kong secretary of commerce, Gregory So visiting a food truck in Australia last August. Photo from Gregory So's Facebook via HKFP.

2015年8月、香港政府商務経済発展局長官、蘇錦樑(グレゴリー・ソー)はオーストラリアでフードトラックを視察。HKFPに掲載された本人のフェイスブックの写真。

香港の食文化は、多種多様で国際色豊かだと世界中で賞賛されてきた。2015年にミシュランすら、ミシュランガイド香港 [1]に、史上初のフードトラック部門を設けたほどである。フードトラックの登場は、香港のバラエティ豊かな食文化に新たな魅力を加えているはずなのだが、地元住民には外来文化がなじまないようだ。

当初フードトラックを取り込もうという考えは、2015年から2016年の財政予算案 [2]の観光戦略として掲げられたものである。一年の審議を経て、ついに2016年3月30日にフードトラック試行整備計画が開始された。香港政府は設備計画案に向けて公募を行い、16通の許可証を交付した。許可証の獲得競争はし烈だった。192の申請者が16の許可証をかけて争ったのだ。申請者は、非常に厳格な衛生条件を満たす厨房を運営するため、書面による提案書を提出する必要があり、開業資金として60万香港ドル(約7万7400米ドル、約860万円)を準備しなければならなかった。最終選考に残った業者はその後、料理コンテストに出場し、食の専門家、旅行業の代表者、フードトラック営業予定地の代表者、そして政府関係者にセットメニューをふるまった。

予想通り、半分以上のライセンス が、大企業の食品子会社の手に渡り、自社の技術や資金をファーストフード業という分野につぎ込んだのである。

しかし、フードトラック整備計画の内容はお粗末で、不公平だと感じる人も多い。地元の建築家、ケネス・イップもその一人で、ライセンス認可手続きは、ハングリー精神を失わせると批判した。彼は、オンライン紙 「香港フリープレス(HKFP)」にこう発表した:

香港でフードトラックで勝負しようと思う人は、提供する食品の種類、トラックのデザインや財務の堅実性をまとめた企画案を用意する必要がある。申請制度全体が、ゆえに、まるでがんじがらめの管理のようであり、フードトラック文化を生み出したハングリー精神と全く矛盾しているように思える。

実際、地元の個人事業主がライセンス選考プロセスで10点加点してもらったとしても、事業開始資金や厨房管理コストは非常に高価であることは変わりない。なぜならば、政府からは厳しい衛生基準が要求されているからである。

ケネス・イップはさらに、フードトラックの形態が香港の都市景観にそぐわないと主張している。

車社会で有名な都市ロサンゼルスが味が勝負のフードトラック発祥の地というのは、偶然ではない。ロサンゼルスは車を中心として発達した街であり、駐車場などのインフラが十分に整っている。だから、フードトラックが生き残ることができた。逆に、香港は、土地が少なく渋滞が多いことでよく知られた都市である。フードトラックに関する政府の構想が、異国文化の単なる二番煎じだと思われても仕方がない。フードトラックの導入が香港に適しているかどうかよく考えず、無理やり香港に当てはめたのだから。

コンテスト上では、勝者の料理は、東洋と西洋を融合した香港の食文化をよく表していると評価されたが、地元住民は正真正銘の香港料理の味をめちゃくちゃにしていると文句を言った [3]

絕大部份入圍者都不是香港本地特色便宜小食…也無燒賣…魚蛋…牛雜…煎釀三寶……之類的街頭小食。單純看食品的名稱和相片去堆測用料和製法不太快捷及簡單…那到時候的定價是關鍵。如還是30蚊以上一份的話…除了那8個指定位置能獨市(賺位置)經營的優勢外…賣點和競爭力何在?

シューマイ、つみれ、牛のモツ、野菜の肉詰めなどのような、安くて地元ならではの料理をつくった決勝戦進出者はほとんどいなかった。これらのメニューは、その名前と写真をひとめ見るだけで、そんなに速く簡単には作れない、単純じゃないものだってわかるからね。それに、フードトラックを経営する上で、定価は重要だよ。 仮に、1食分を30香港ドル以上で販売したとしよう。何を、セールスポイントと競争力って言えばいいんだろうか? (おまけに、経営者たちは決められた場所で独占状態を満喫してるんだ。)

>到底明唔明咩叫香港街頭小食?

香港のフードトラックの料理がどんなものか、審査員はわかってるのか?

そして、総菜店と屋台を組み合わせた、あのホッとする味を懐かしむ地元住民の気持ちはどうなるのだろうか。そういった料理の復活に対する最大の障壁は、健康と安全に対する政策だ。フードトラックの事業経営に対して厳格な審査や法的枠組みを制定するよりも、政府関係者は単に、業者に交付するライセンスを減らすのを優先してきた。

消えゆく地元のフードトラック文化を守るため、多くの市民団体がフードカート計画 [4] を提案した。それは、 一般の露店商に「ホーカーライセンス」(屋台許可証)を再交付するよう、政府に要求するものだ。市民団体の発案では、約1000米ドル(約110万円)の開業資金しか必要とせず、香港という都市景観によく合う改造自転車型カートを提案している。

美食車的營運地點不應止於小量旅遊景點,而應善於社區不同公共的土地及閒置土地,如公園、荒地、天橋底等,使到美食車能服務一般香港市民。

移動式の飲食サービスは、観光地だけに限られるべきではない。都市部の公共の場所や空きスペース、例えば公園や埋立地、ガード下のスペースなどを有効利用すれば、地元住民もそのようなサービスを楽しむことができる。

政府的方案只是遊客的美食車方案,最終只有集團或企業得益,平民美食車方案,能同時做到推廣多元美食文化,便利普羅市民品嘗美食,創造就業機會,善用社區閒置空間,是一個多贏方案。

政府の企画案は、旅行者や食品企業のニーズにしか対応していない。市民団体発案のフードトラック計画はより多様な食文化、雇用の機会、地域内の使われていない小スペースの有効利用を促すことができ、地元住民に対し安価な食事を提供することができる。そんな案ならば、全てに利益をもたらすだろう

校正: Miki Masamura [5]