マレーシア人画家が作品「マザー・ガイア」に込めた環境保護と女性の権利への思い

「歓喜」 アクリル・油彩・カンヴァス 61×91cm ジェニファー・モウリン作 2017年5月22日 許可を得て掲載

マレーシア・ペナンで近ごろ開催された展覧会で、ジェニファー・モウリンの最新作が注目を集めている。モウリンは作品を通して環境保護を積極的に訴えている画家として知られる。

モウリンの今回の作品群のテーマは「マザー・ガイア」。これは彼女が環境問題に関する気がかりな記事を読み概念化したものだ。ガイアとはギリシャ神話に登場する大地の女神を指す。

グローバル・ボイスが行ったインタビューで、モウリンは今回の作品制作につながる着想について説明してくれた。

My “Mother Gaia” series imbibes the need to take stock of what we are sacrificing in the name of greed, selfishness, over-consumption and so-called economic growth. These new paintings assert the need to respect, protect and defend our planet and her progeny against abuse, exploitation, depletion and death. My personification of Mother Earth in the women I paint surrounded by the animals facing extinction stares people in the eye calling for people to change, for the killings to stop!

「マザー・ガイア」の作品群で描いたのは、欲望、利己心、過剰消費、いわゆる経済成長という言葉で私たちが犠牲にしているものについて、改めて考える必要があるという点です。これらの新作では、地球とその未来に対し敬意を払い守ること、そして破壊的行為、開発、消耗、死といったものに立ち向かう必要があるという思いを表しました。女性像として描くことによって私が表現した母なる大地は、絶滅の危機にある動物たちに囲まれています。そして、こちらをじっと見つめる目は、鑑賞者に向かって、改めよ、生命を奪うのは止めなさい、と訴えているのです。

「誓い」 アクリル・油彩・カンヴァス 91×61cm ジェニファー・モウリン作 許可を得て掲載

モウリンはまた、マレーシア国内において絶滅の危機にある動物種のいくつかを取り上げて作品に描いている。彼女は、マレーシアではシンボルとして人気があるにもかかわらず、絶滅の危機が目前に迫っている可能性があるとされるマレートラ(ハリマオ・マラヤ)について話した。(訳注:ハリマオはインドネシア語で「トラ」、マラヤはマレー半島を表す)

I find it so bitterly ironic that this majestic animal is used as a symbol on the Malaysian coat of arms, is the name of our national football team (Harimau Malaysia), is revered as part of Malaysian identity, but the real life animal is disappearing! The magnificent tiger is dying off because humans hunt, kill and trade in their skin, teeth, meat in some misguided belief that these will give people, especially men, power and sexual prowess? what sacrifice for such foolish vanity, arrogance and selfishness!

Similarly, I also feature the Hornbill. I fondly remember these beautiful birds from my childhood when my family lived in the state of Pahang, and they used to fly around freely close to my home. Malaysia is the home to 10 species of hornbills, and these need to be protected!

何というひどい矛盾でしょうか。威風堂々としたこの動物はマレーシアの国章のデザインに使用され、サッカーの代表チームの名称(「ハリマオ・マレーシア」)であり、マレーシア国民のアイデンティティを形成するものとして崇められています。その一方で、現実に生きているマレートラはこの世から消えつつあるのです。この崇高なトラは、人間が狩りをし、殺し、毛皮や歯、肉を売買するために死に絶えようとしています。一部の人は、マレートラの肉を食べれば、特に男性は、よりエネルギッシュで、より強い性的能力を持てるという誤った話を信じているのです。マレートラはそのような馬鹿げた虚栄心、傲り、利己心の犠牲にされています。

同じように、私はサイチョウにも光を当てています。子供のころに見ていたこの美しい鳥のことを懐かしく思い出すのです。当時は一家でパハン州に住んでいたのですが、そこではサイチョウが私の家のそばを自由に飛び回っていたものです。マレーシアには10種のサイチョウが生息しています。彼らを守らなければ。

「神秘」 アクリル・油彩・カンヴァス  51×51cm ジェニファー・モウリン作 許可を得て掲載


モウリンはさらに、民族衣装であるサロンを身にまとった南アジア各地の女性にも賛辞を贈る。

Memories of my mother’s Thai village in the eastern state of Kelantan have turned my love of the sarongs the strong women wore (including my mother, grandmother and villagers) into totems of my artistic identity.

マレーシア東部のクランタン州にあるタイ人居住地のことを母から聞いて育った私は、母や祖母をはじめ村に住むたくましい女性たちが身に着けていたサロンが好きになり、やがてそれが私の芸術的アイデンティティの象徴となっていきました。

「記憶」 アクリル・油彩・カンヴァス 61×61cm ジェニファー・モウリン作 許可を得て掲載

芸術家としてのモウリンは女権論者としても知られる。今回の新作にもそれがよく表れている。 

Another recurring theme is women breastfeeding, as I am incredulous at how such a loving, nourishing and nurturing act as breastfeeding is often considered a controversial “obscene” act by society. Mothers deserve to be supported and loved. In the Mother GAIA series, breastfeeding is symbolic of how mother earth provides for us, feeds and sustains us.

繰り返し扱っているもう一つのテーマは、母乳を与える女性です。母乳育児ほどの愛情に満ちた、子供に必要な栄養を与え育む行為が、なぜ社会から「卑猥だ」としてしばしば論争の的とされるのでしょうか。母親は支えられ愛されるに値する存在です。「マザー・ガイア」の作品群では、母乳育児を象徴的に描き、母なる大地がいかに私たちを養い支えてくれているのかを表現しています。

最後にモウリンは、地球の環境破壊を阻止するために行動することが急務だと訴えた。

People need to remember how much Mother GAIA gives so all can live and be sustained! Is it any wonder that she will react against humankind's hubris, carelessness and selfishness? We are all in the same boat, and if humankind continues at the pace we are witnessing it will be at our own peril!

私たちはマザー・ガイアにどれほどの恩恵を受けているかを思い起こす必要があります。その恩恵によって私たちは皆生き、命を守ってゆくことができるのですから。私たちは皆、運命共同体なのです。もし人間が今のままの歩みを続ければ、それは私たち自身に向けられた危機となるでしょう。

「謝意」 アクリル・油彩・カンヴァス  91×61cm ジェニファー・モウリン作 2017年9月8日 許可を得て掲載

モウリンの作品はマレーシア・ペナンにあるヒン・バス・デポ・アートセンターで開催されているグループ展に出展されている。

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