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マゼランの航跡をたどる海洋探査船 フィリピンに到達

カテゴリー: 東アジア, フィリピン, 市民メディア, 旅行, 歴史, 科学
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フィリピンのセブに到達したフルールデパッション号 メイヤン・アラウンド・タウンの動画ビデオのスクリーンショット

2012年は、フェルディナンド・マゼラン [2]が世界一周航海を達成してから500年目を記念する年である。これに先立ち、研究者たちが帆船でマゼランの航跡をたどっている。この航海は、ジュネーブにある非営利団体Foundation Pacifique [3]が企画したもので、人類が海洋及び環境へ与える影響を調査することを目的としている。2015年4月に、研究チームはマゼランの航跡を再現するためにスペインのセビリアを出帆した。4年かけて世界を一周する計画である。

フルールデパッション号の航跡を示す地図のスクリーンショット 探査航海のウエブサイトから

マゼランはポルトガルの探検家で、1519年にスペインのセルビアを出帆し航海を始めた。そしてこの航海で史上初の世界一周を成し遂げた。1521年に彼がセブ島に到達したことにより、結果としてフィリピン諸島はスペインの植民地となった。

スイス籍の探査船フルールデパッション号(元はドイツ海軍の掃海艇であったが、武器を撤去して科学探査船に改造された)は、2017年12月19日にフィリピンに到達し、フィリピン中部のセブ州ラプ=ラプ市内の港に停泊した [4]。その間、同船の乗組員はこの航海の目的の一環として地元の人たちを同船内に招き、この航海の研究目的や社会的役割について啓発を行った。セブ州内で活動するブロガーのメイヤン・アラウンド・タウンは、フルールデパッション号の乗組員との体験や動画をブログ上で公開した [5]

マゼランの航跡をたどる航海の事務局は、主にスイスの都市国家ジュネーブ当局と協働して様々な教育文化事業を一般市民に公開している。

フルールデパッション号上で企画されている科学啓発活動の中には下記のものがある。

注目:スイスの帆船フルールデパッション号がセブ州マクタン島に停泊している。この船は今、4年かけてマゼランの航跡をたどり世界を一周する航海の最中だ。海洋中のプラスチック、サンゴ白化現象、および温室効果ガス濃度に関するデータを収集するのもこの航海の目的の一つである。

また、この航海では教育事業として「若者の海洋体験」などの取組みを実施している。つまり、フルールデパッション号に若者を最大2か月間滞在させ海員の実務を体験してもらうなどのプログラムが用意されている。2015年以降、34名を超える10代の若者がこのプログラムに参加している。また、フルールデパッション号は芸術構想の一環として、「マゼランの鏡」という文化事業を主催している。これは、スイスその他世界各地から漫画家を同船に招き、今回の航海の目的や実施内容を紹介する絵 [9]を描いてもらい、企画の内容をより広く人々に周知しようとするものである。

フルールデパッション号は、次の寄港地への出航を控えた1月20日、ミンドロ島のプエルト・ガレラで行われた今年のシヌログサントニーニョ祭 [10]水上行進に参加した。この祭りの参加者は、セブ島のキリスト教発祥を祝うシヌログ大行進の前日、同島の守護者サントニーニョ [11]の像を携えてマクタン・チャンネルを越えていく。サントニーニョ像は、セブ島住民のキリスト教への改宗を記念してマゼランからセブの女王フアナに贈られたものといわれている。マクタン島ラプ=ラプ市の名前は、部族長ラプ=ラプ [12]に因んで名付けられた。彼の部下たちが、スペインによる同島の植民地化に抵抗してマゼランを殺害したのである。

フィリピンのファッション・ブロガー、デイビッド・グイソンはフルールデパッション号のデッキからシヌログサントニーニョ祭の行進を写真に撮り公表した。

シヌログサントニーニョ祭の行進 セブ島、フィリピン

2007年に設立されたFoundation Pacifiqueは、人類が海洋に及ぼす影響を理解する一助として教育、文化、および科学的な調査を実施してきた。フルールデパッション号の航海の様子は Foundation Pacifiqueのウエブ上で見ることができる [15]。また、フェイスブック・ページ [16]およびユーチューブ [17]で更新が行われている。マゼランの航跡をたどるフルールデパッション号の航海は2019年8月に達成される計画となっている。

校正:Misaki Sato [18]