中国:貧困にあえぐ少年たちを救えるのか? ある総合格闘技クラブが抱える複雑な倫理問題

男の子はファイトクラブでのトレーニングと決別するための書面にサインを強要され家に送り返された。画像は北京ニュースの動画より。

(この記事の原文掲載日は2017年9月1日です)

ビデオの中、総合格闘技(MMA)のファイターがリングで闘っている。群衆からは声援が送られ、決着が付くまで試合は行われる。ファイターは社会的に恵まれない思春期の少年たちだ。このビデオが最近になり中国のウェブ上で拡散された。結果、傷つきやすい少年たちを暴力的なスポーツへいざなう行為の倫理性について広範囲に渡る論争の引き金となった。

これに応じて行政関係者は(一見したところ面目を保つために)事前警告することなく数名の少年たちを「クラブ」から強制連行した。少年たちは泣いており、中国のネット民は少年たちの将来を案じている。

最初の報道は「MMA孤児たち:闘わないなら家に帰ってジャガイモを食べておけばいいさ」と題されており、オンラインメディアの支局であるPear Videoにより製作されている。その中では、12歳から14歳の多くの少年たちが闘っており、顔から流血している子もいる。

少年たちはエンボー・ファイトクラブに所属している。このクラブは、四川省の首都、成都にあり、エン・ボー氏によって創立された。エン・ボー氏は、かつて中国人民武装警察部隊に従事し、地方の軍隊武術選手権で2度優勝している人物だ。

このビデオによれば、エンボー・ファイトクラブは約400人のイ族の子供を抱えている。イ族は涼山イ族自治州の少数民族だ。この地域では、薬物乱用、HIV、貧困の比率が高く、ファイトクラブの少年たちのほとんどは、片親、あるいは両親を失っており、家族を支えるため必死に働かざるをえない状況である。

このクラブの少年たちは、本来ならば口にすることができないであろう牛肉や卵を食べている。クラブの従業員の1人は、少年たちは営利目的の試合でお金を稼いでいて、お金はクラブが管理し、必要に応じて少年たちに与えられると説明している。

ある少年は言う「トレーニングは厳しいが、クラブでの生活は故郷に帰るのに比べればずっと良い」と。彼の究極の夢は、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)で優勝し、腰にゴールドベルトを巻くことだ。

驚くことではないだろうが、エンボー・ファイトクラブは、ビデオが拡散された後に非難を浴びることとなった。中国のネット民は、傷つきやすい少年たちが総合格闘技クラブといった組織に所属することについて、倫理的な議論を激しく展開した。

十几岁就这样强训练的格斗以后身体会吃不消吧

まだ思春期の子供たちが激しいトレーニングを始めるなんて、将来、体に一生もののダメージを残すことになるよ。

这也是一条很好的出路,比起在大山里长大在出社会好多了!

より明るい未来への道のりでもあるな。山奥なんかで育ってから都会に出ようとするよりずっと良い。

让小孩训练了参加地下格斗比赛,边上一帮人下注或者欢呼叫做正确的人生道路么?我的天。

ギャンブラーを楽しませるために子供たちをトレーニングして、地下組織の格闘技の試合に出場させてるわけ? これって道を踏み外してないか? 信じられない!

为什么从小打乒乓、练体操、打篮球就不会被冠以没出路之名,练格斗就成了没梦想、只会打架斗殴、未来的社会隐患?

幼少の時期に卓球、体操やバスケットボールを始めることは悪くないのに、格闘技の選手になるためにトレーニングすることは将来性がないわけ? それって、ただ肉体的な格闘を教えこんだだけで社会に潜む危険な人物になってしまうってこと?

行政の面目はファイトクラブの子供たちより重要?

このように注目を浴びるようになった後、2017年8月17日、四川省涼山イ族自治州の地方当局が介入した。少年たち数名をクラブから連行し、故郷へ帰したのである。そして彼らに勉強に集中するよう働きかけ、毎月748元(約1万2700円)の奨励金を極貧の人々へ約束した。

しかし、クラブの創設者エン・ボー氏が少年たちを受け入れ、トレーニングしていることは行政も認識していたのである。涼山イ族自治州の役人数名が彼に接触し、最初のクラブ生を送りつけたのだとエン・ボー氏は釈明している。後に、引き続き少年たちを受け入れるための取り決めがなされた。

批判の中には、中国における9年間の義務教育を受ける機会を奪われている少年たちに重点を置いたものもあった。エン・ボー氏は、少年たちを成都にある学校へ入学させようと試みているものの、地域の居住許可を準備するために、子供1人当たり3万~5万元(約50万~85万円)の支払いを要求されていることを北京ニュースに説明している。結局のところ彼は4人の非常勤講師を雇い、中国語と数学を教えるためにクラブ内で独自の夜間学校を運営することにした。

インタビューの間、エン・ボー氏は、クラブを去ることになっている少年たちについて話す時、声を詰まらせた。次のビデオは、その少年たちのクラブ最後の日を記録した詳細なレポートである。※訳者注:現在再生できません

https://youtu.be/NqNWjKxOGVw

北京ニュースでインタビューされた幾人かの少年たちは、ファイトクラブでの生活が最後の日になるであろうことを知り、涙ながらに語っている。このビデオでは、クラブから強制的に連行されている様子が放映されており、これが引き金となってネット上ではもう一つの議論に発展した。この時は、公衆の倫理と地方自治体が議論の的となった。

这是我今年看到的最心酸的视频!以“善”的名义集体作恶的结局!

今年見た中で、もっとも嘆かわしい映像だ。行政のやることは表面上は「思いやり」だが、人の道には背いてるよ。

你父母吸毒、赌博,要么死了要么人间蒸发,你在老家大山里饱一顿饿一顿。突然有一天,大城市一流运动俱乐部收留了你,不收培训费,还供你吃穿,老板送耐克鞋给你,让世界冠军给你当教练,你在这里有了师傅,有了朋友,有了自信……突然,一切又结束了,你得重新回山里去。——换我可能会自杀

「考えてもみろ」親が麻薬常用者、ばくち打ち、あるいは失踪者。山奥で常に飢えている。ある日、街でトップレベルのスポーツクラブが指導料なしで迎え入れてくれた。そして食べ物とナイキの運動靴を与えられ、世界的にもレベルの高い指導者が教えてくれる。教師と友達もいて自信を養っていける……が、ある日突然それら全てが終わり、山に帰らなければならない。もし自分なら、自ら命を絶つかもね。

敬佩恩波,伟大的梦想制造者。

すごいぞエン・ボー、偉大なる夢の創造者だ。

政府脸面有孩子们重要吗

行政側の面目は子供たちより重要なのか?

你们把孩子强制带走时,问过孩子的想法吗?你们只不过是把自己的欲望加到孩子身上,还认为理所就当。

役人さん。子供たちを力ずくで連行して、彼らがどう思うか考えもしなかったのか? あなた方はただ子供たちより自分たちの面目を優先したかっただけだろ。そしてそれが正しいと信じてる。

恩波要利用这次机会更好地给自己做个宣传,对的路一定要走下去!格斗运动也是一项特别好的运动项目!加油!

エン・ボーはこの機会を利用してファイトクラブを宣伝すべきだ。それが自分の信じる正しい道ならばね。総合格闘技はすばらしいスポーツだよ!

議論は今後も続くにちがいない。そして少年たちに将来幸あれと願うことしかできない。

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