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ハンナ・マウンシー トランスジェンダーのオーストラリアンフットボール選手、州リーグへの参加を認められる

カテゴリー: オセアニア, オーストラリア, スポーツ, 女性/ジェンダー, 市民メディア
Hannah Mouncey - Transgender footballer [1]

ハンナ・マウンシー。YouTube「60ミニッツ (オーストラリア版) 『ガール・パワー』(2017年)」からのスクリーンショット

(原文掲載日は2018年2月25日)

トランスジェンダーのオーストラリアンフットボール [2]女子選手に対し、とうとう州リーグでプレーすることが認められた [3]。 2017年、ハンナ・マウンシーは、オーストラリアンフットボール女子リーグ(訳注:全国リーグ。以下、AFLW)のドラフトへの参加を拒否された [4]。AFLWのシーズンは現在すでに始まっている。

ドラフト参加の却下にあたって、問題 [5]とされたのは、彼女の「強靭さ、スタミナ、体格」であった。ハンナの身長は190センチ、体重は100キロ。彼女はかつて、2013年の世界男子ハンドボール選手権に、豪州代表カラム・マウンシー [6]として出場したこともある。

ホルモン治療を経て、現在ハンナのテストステロン値は、国際オリンピック委員会の定める基準値を下回っている。昨年のドラフト参加却下は非常に物議を醸した。「生来男性であるハンナが女性としてプレーすることは不平等」という非難から、そもそもトランスジェンダーの存在そのものを拒絶する意見まで、この決定を支持する声高な主張がさまざまな形でなされた。

今回の参戦受け入れ決定についても、同様の反応がツイッターで巻き起った。これは自称サイクリング専門家のBolarのツイートである。

これは人気のツイートにはならないだろうけど、生物学的には男性、体重100kgを超え、性転換後も変わらぬタックルができるハンナ・マウンシーという選手が、平均体重60kgの女子選手と戦えるなんて冗談だろう。可愛そうなことに、このせいで女子選手たちには数えきれない程あざができてしまうだろう。

Dreama40のように、ハンナに対し共感的な人もいる。

I admit i dont understand the whole Trans thing BUT, i do believe that it is very REAL to them and i respect their courage for living life as their true selves because that must be very hard to do.

トランスジェンダーについてよく知っているとは言えないけれど、きっと当事者たちにとってはとても切実なことなのだと思う。そしてひどく大変な思いをしているに違いないのに、本当の自分として生きる彼女たちの勇気を、私は尊敬する。

当該スポーツの管理団体であるオーストラリアンフットボール協会 (以下AFL) とハンナは、彼女に州リーグ参加の許可が下りた後、ソーシャルメディアからの反発を受けている。しかしツイッターユーザーのCatkinは、そういった反発ツイートの後ろ向きな姿勢を非難した。

ハンナ・マウンシーにプレーの許可が出たことを支持する投稿に対する挑発的なコメントを見ていたら、全部男性からのものじゃないか。とにかく、ずっと前に解決されているべきことではあるにしろ、彼女がプレーできることになって嬉しい。

ダニエル・キャロルも同様だ。

ハンナ、あなたは注目に値する人だ。負けずに頑張れ。あなたのことを心から応援している人がたくさんいる。

ハンナは最新の報道に対する返答として、動画をアップした。

彼女はAFLの決定に対して率直にこう言ったのだ。

I cannot thank the AFL for allowing me to do something that is open to every other Australian and which the science and research has supported all along.

[…] many people will wonder why I say football doesn't matter when for so many people is such a huge part of their life and clearly mine but to understand why I feel that way you need to first understand what so many people trans people go through on a daily basis and not just when they transition.

AFLが許可したのは、他の全てのオーストラリア人には当然認められていることで、私にも許可されるべき根拠となる科学的診断結果がずっとありました。AFLに感謝する気持ちにはなれません。

[中略] 「フットボールは大した問題じゃない」という私の発言を不思議に思う人もたくさんいるでしょう。多くの人にとって、またもちろん私にとっても、フットボールは人生の大きな一部分を占めているものです。私の発言を理解してもらうためには、多くのトランスジェンダーの人々が、性別変更するときだけでなく、日々の生活の中でどんな思いをしているのかを知ってもらう必要があります。

彼女は、家探しや就職で日々受ける差別、家族や仲のいい友達からの拒絶といったトランスジェンダーの人々に立ちはだかる問題を提起した。

ハンナが皆を納得させるには程遠く、彼女がまるでAFLWでプレーする権利を「既に得ている」かのように振舞っている、と非難する者もいた。ウェブ開発者でランナーのマイク・ヘイドンは、理性的な議論を試みている。

ハンナ・マウンシーの件。彼女が受けた診断テストについて我々が詳細を知っている訳ではなく、知るべきでもない。AFLが、彼女が女子部門でプレーすることができ、彼女にその能力があるというのなら、どんどんやるといいと思う。ケースバイケースだが、とても珍しい状況であることは間違いない。

インターネット上で、この問題に偏見なくアプローチできる人が増えることを祈るばかりである。

校正: Yoko Higuchi [11]