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中国武術VS総合格闘技 どちらが強い? 果てしない論争の行方は?

カテゴリー: 東アジア, 中国, スポーツ, 市民メディア, 芸術・文化

総合格闘技VS太極拳(キャプチャー画像)

10秒ほどで決着はついた。中国人の総合格闘家、シー・シャオトンが太極拳の達人ウェイ・レイを打ちのめしてしまった。2017年4月27日、成都市で行われた果し合いでの出来事だ。この果し合いは、数ヶ月におよびネット上で展開された両者間の口論の末に行われた。口論の内容は中国武術の発展に関するもので、シー・シャオトンは、伝統的な中国武術を批判した。彼によれば、武術団体を会社のように運営する官僚主義者たちのために、中国武術は最早、見世物レベルと化し、実戦的な格闘技術を失っていると言うのである。

「偽物の格闘技」に対するシー・シャオトンの非難の数々は、伝統武術の代表者に対する公然とした挑戦であり、ネット上で騒ぎを引き起こし、それは1週間以上も続いた。

シー・シャオトンとウェイ・レイの果し合いの映像はソーシャルメディアを介して、ネット上で拡散された。次の映像はYoutubeに転載されたものである。

この果し合いの後、太極拳の団体は「ウェイ・レイは本物の達人ではない」と示唆することで、その名声を取り戻そうとした。同じくして、この対戦のルールが伝統的な中国武術にとって公正さを欠いていると指摘する者もいた。

シー・シャオトンは、WeChat [1]を介して反応した。 [2] 中国武術にはびこる「やらせ」の実態を世にさらすため、中国武術の重要人物たちに挑み続けるであろうと。

我徐晓冬,在中国武术界打假,要打也要打大老虎,我今天39也不年轻,有年轻的掌门我打,有老的掌门,我一晚上连打两个或三个!那些掌门不要逃避,都掌门了,怎么不敢打?

俺、シー・シャオトンは、いんちき中国武術と、その達人たちを、さらしものにしてやるつもりだ。俺は今39歳だが、対戦相手が若かろうが年寄りだろうがやってやる。一晩に2試合でも3試合でもな。逃げないで下さいよ。主要な中国武術流派の代表者の方々。それとも、とても対戦する気にはなれませんか?

2017年5月7日、シー・シャオトンのWeibo(訳者注:中国版SNS)とWeChatのアカウントが停止された。

「やらせ中国武術」のパフォーマンスに関する問題は、ここ数年間、一般市民の怒りをかっている。もっとも知られているのが、2012年9月、太極拳の達人イェン・ファンが行った「気」に関する公演である。そこで公開されたやらせのパフォーマンスは4人の大男を「気」で押し倒すものだが、1人のリポーターにより現地リポートされ、その模様が拡散された [3]。イェン・ファンは、ホーペイ武術協会の5代目副議長であった。

こうした背景から、中国のネット民の多くはシー・シャオトンを支持し、さらなる対戦が公開されることに期待を膨らませた。しかし、太極拳の師範チェン・チュンレイは、シー・シャオトンの挑発に乗らないよう、門下生に強く促した。

チェン・チュンレイ氏の書簡は次のとおり。これは中国のソーシャルメディアを介して広まったものだ。 [4]

各位弟子大家节日快乐!我和你们师母昨晚访欧归来!看到网上炒作徐晓东挑战武林高手之事沸沸扬扬!我看是别有用心的人在故意挑逗武林流派门户之争,这样下去不利于武林团结发展!我建议国际武联和中国武协应出面制止一下!徐要真有能力,让他到国际赛场上去为国争光!这是我给中国武协领导的建议。并得到回复,明天上班就研究措施。并嘱咐让我转告陈家沟的拳师们不要冲动,盲目应战。如这样正当下怀,上当受骗。狂徒在媒体漫骂可以通过法律程序控告他,所以我特告戒咱们的弟子们要谨言慎行,且勿盲目冲动。通过此事也要求弟子们加强练功,增强功力,一旦遇到挑战,要为师门争光,为国争光!师父陈正雷。

良き祭日に(5月1日、国際労働節)門下生達へ。皆さんがが母と慕う師範と私は昨夜、欧州ツアーから帰国し、シー・シャオトンとカンフーの達人と称する者の試合の映像が拡散しているというニュースを読みました。私には、悪意に満ちた人たちが、中国武術界を挑発しているように見えます。このようなことは、中国武術界内部の結束力を無きものにしてしまいます。私は、国際武道連盟と中国武術協会の両者が、このような風潮を止めることを提案します。もしもシー・シャオトンに能力があるのなら、国際大会に参加して国の名誉のために戦えばよいのです。これは、武術協会の指導者たちに対する私からの提案です。武術協会からは返答を得ており、協会はこの問題を明日調査することでしょう。武術協会はまた、チェン流の太極拳の門下生達に、このような挑発に乗らないよう、すなわち彼のわなに落ちないよう、強く要請しています。もしも、この狂った男が他の者の名誉を汚し続けるなら、私たちは法的手段を取る準備があります。聞いてください。これは私からの要請です。皆さんは良識を持って行動してください。私たちが将来、挑発行動に直面した時、チェン流太極拳の名誉のため、そして国のために戦うことができるよう、稽古を続けてくださることを、強く願います。

ブロガーのCheng Wangdongは、この太極拳の達人が記した国家主義的な文面を、中国武術が利益を追求しようとする姿勢 [5]現れ [6]であると見ていた。

众所周知,这些年大家都在做民族复兴这个梦,有些东西,是很奇怪的,一旦成为口号,也就成了绝对正确。

而中国武术,恰恰又是复兴梦中一个不可分割的部分,一荣俱荣,一损俱损,就成了一个捆绑真实,也就更容易从一个个人摩擦事件,上升到整体家族的火拼斗殴。

[…]当一个武林门派,出了问题不用武林门派的规矩解决,首先噗通一声就是跪在权力的面前求庇护,我觉得陈正雷宗师已经不是武林人士了。

誰もが知っている。ここ数年、我々は国家再生の夢を実現しようとしていて、そのスローガンは疑う余地無く正しいように見えていることを。中国武術界はこの夢と切り離せない部分になってしまっている。栄光と恥が結びついているのだ。特定の人たちの対立が、公衆の出来事になってしまった。[中略]武術界において、問題が表面化しているにも関わらず、彼らはその独自のルールをかざし問題を解決しようとせず、自己防衛するために権力を利用している。思うに、チェン・チュンレイは最早、武術界に属する人間とは言えないのではないか。

予想通り、2017年5月3日、中国武術協会は声明を発表した [7]。シー・シャオトンが「けんかを売っている」と非難する内容で、彼の行為は違法であり、中国武術の美徳に背くものと主張している。

一般の人々の武術に対するイメージは、武術界の発展と組織化の裏で地に墜ちてしまった。ローカル局の北京ニュース [8]は、中国武術ビジネスに関する調査報告を放映し、主要な伝統武術の流派が全て、武術学校の運営、映画の制作、漢方薬の販売、観光史跡の開発と、営利法人に姿を変えていることを明らかにした。これらには少林寺 [9]武当山 [10]青城山 [11]峨眉山 [12]、そして崆峒山 [13]も名を連ねている。

中国武術協会からの声明は、門下生たちが挑発に乗ることを禁止することで、首尾よく主要武術流派の重鎮たちの面目を保ったのである。

しかし、中国武術団体に属さない部外者たちは、彼ら独自のルールの下で、シー・シャオトンとの対戦を切望している。その1人、少林寺(少林拳)の門下である「気」の達人フォ・チョンは、シー・シャオトンに電動ドリルでの対戦に応じるよう敢えて挑戦している。

[14]

フォ・チョンの電動ドリルによるパフォーマンス。スタンドニュースの拡散画像(Weiboより)。

徐晓冬那么能打,有本事让我拿电钻来钻他的太阳穴、喉咙等部位,钻不进去,不会受伤,我就认同他功夫了得,认同他打假传统武术的说法

シー・シャオトンがそんなに優秀な戦士だというのなら、彼のこめかみ、喉、体のいたる所に電動ドリルを当てさせてもらいたいね。もし彼が無傷で済めば、彼の武術と、彼の中国武術に対する非難の数々を認めさせていただこう。

校正:Jiro Tominaga [15]