モザンビーク ごみ集積場で崩落事故 16名が死亡 誰が責任を負うのか

この記事の原文は2018年2月25日に掲載されました。

崩落事故で隣人を失った生存者 写真:マルコ・シモンセリ 掲載許可済

2月19日ゴミの堆積場が崩落し16人の命が奪われた。モザンビーク政府はこの事故により、国内最大の廃棄物処分場の閉鎖を急がなければならない状況に追い込まれた。今回の惨事で首都マプトにおける廃棄物管理の杜撰さが露呈した。同時に、同処分場周辺に住む数百のゴミ収集作業員の不安定な状況も明らかになった。
同国を襲った強雨により、マプト郊外のフーレン廃棄物処分場で崩落事故が発生し、数戸の家屋がゴミの下敷きになった。この事故により成人9人と子供5人が犠牲になった。そのほか、成人4人と子供2人が病院へ運ばれた。事故は、住民が就寝中の午前2時ごろに発生した。7戸の家が全壊し、120人以上の人が事故現場から避難した。
崩落した野外廃棄物処分場は1972年に、マプト市域のみを対象として開設された施設で、その規模はモザンビーク最大である。マプト市は百万を超える人口を抱え、一日に約1トンのゴミを排出する。フーレンB地区は、マプト中心部から約7キロメートル離れたところにあり人口密度が高く、面積は17ヘクタール強(サッカー場ほぼ24ヶ所分)である。

 

1977年から1992年の内戦の間に、多くの人が安全を求めて廃棄物処分場のある地区に移住した。その結果、彼らはゴミ収集の仕事に就くことができ、今日ではこの業務が多くの家庭の収入源となっている。マプト市には公的なゴミ再利用システムは存在しない。ゴミの再利用は、民間のゴミ収集業者がフーレンに住むゴミ収集作業員を使ってゴミの収集をして行っている。

何年にもわたりフーレン廃棄物処分場閉鎖の議論が続いていた。今回の事故を受けて、政治家は同処分場について真剣に考えるようになり、閉鎖の議論は加速されるようである。事故の翌日、中央政府はマプト市当局にフーレン廃棄物処分場周辺住民を迅速に移住させるよう勧告した。

 

移住問題と同時に、フーレン廃棄物処分場の閉鎖により今後発生する廃棄物の受け入れが停滞するといった問題も生じる恐れがあると、 国土・環境・地方開発大臣セルソ・コレイアは語る。また彼は、閉鎖までには少なくとも5年の歳月が必要で、国民に1億1000万ドルの負担をかけることになるだろうとも語った。残存するゴミの山に何が起こるか予想できないし処分場自体に何が起こるかも予想できない。

上記のような事情があるので、ゴミはマトレメル埋め立て処分地に持ち込まれることとなる。同処分地はマプト市からおおよそ20㎞離れたマトラ市に設置されることになっている。この処分地は、2019年の初めから両市の廃棄物を受け入れる 予定である

新しく設置される処分地には、日量200トンの処理能力を持つリサイクル設備が設置される計画である。また、バイオ燃料の一種であるバイオガスからエネルギ―を生産する設備や廃棄物処理施設も設置される計画である。これらの設備はフーレン廃棄物処分場が廃棄物を受け入れるだけの施設であったため備えていなかったものである。

ラジオ・インディコの記者ロット・シグガクが作成した動画には、フーレン廃棄物処分場周辺地区が住宅地としての最低基準さえも備えていないことが示されている。

「諸外国では、辞職に値する」

中央政府報道官アナ・カモアナは、事故の翌日2月20日グローバルボイスも参加した記者会見で、今回の事故は「悲惨な事故」だと述べた。しかし市民は、政府が適切な措置を取っていたならば今回の事故は避けることができたはずだと主張している。

環境ジャーナリストのイザック・ナイエニによると、フーレン廃棄物処分場周辺の住民はこのような事故が発生する危険性を以前から警告していた。彼はフェイスブックに下記のように記している

[…] entrevistei um sem número de famílias que residem nas redondezas da lixeira de Hulene, que relataram o drama que é viver ali […] e durante a conversa, algumas pessoas já previam que uma tragédia como a da última madrugada viesse a ocorrer. Dito e feito. Talvez agora que o pior aconteceu, as autoridades tomem consciência da necessidade urgente de se encerrar a lixeira de Hulene.

[前略]私はかつてフーレン廃棄物処分場周辺の住民から何回となく話を聞いたことがある。すると、彼らはこの地域での生活の様子を話してくれた。[中略]その中で、今朝起きたような惨事は間違いなく起こると語った人が何人もいた。つまるところ、最悪の事態が生じてしまったのだから、当局はつべこべ言わずフーレン廃棄物処分場閉鎖措置を至急取る必要がある。

マプト市長、デヴィド・シマンゴは2013年の選挙運動の際にフーレン廃棄物処分場の閉鎖を約束しているので、今回の事故の責任を受け入れた。しかし、今回の事態を回避できたか否かについての「議論」は先送りした。

惨事の起こった日に行われた記者会見でシマンゴ市長は下記のように語った。

[…] Nós assumimos a responsabilidade de tudo que aconteceu […] Queria pedir a todos para nos concentrarmos no socorro das pessoas em vez de fazer um debate da lixeira […] Não queria discutir se foi por negligência ou não, eu prefiro dizer que temos a responsabilidade no que aconteceu e assumimos. Agora, se é na amplitude ou na forma limitada, esse debate vamos deixar para depois.

[前略]マプト市は、今回生じたことに対してすべての責任を負います。[中略]廃棄物処分場の話よりまず被害に遭われた方々の救出に専念したいので皆様のご理解をいただきたいと思います。[中略]今回の事故は怠慢によるものか否かを議論するつもりはありません。しかし、今回の事故の責任は市当局にあることを受け入れます。いずれにしても、処分場問題はのちに検討したいと思います。

政治学者でソーシャルメディア上の熱心な解説者でもあるビットン・ヴィータジの 見解では、フーレン廃棄物処分場の責任者は犠牲者を出した責任を取って辞職すべきだという。

Em outros países isso valeria renúncia por parte do Presidente e dos vereadores para área de saneamento e das infraestruturas. Por uma questão de ética e de vergonha na cara o Edil deveria renunciar em nome da dor que estas famílias terão que carregar por toda a vida.

諸外国では、こういった施設の最高責任者および評議員は全員、衛生管理および基盤設備管理の責任を取って辞職するのが当然である。犠牲者の家族が今後背負っていく苦痛を考えれば、当局責任者は、倫理や威厳の名のもとに辞職するのが当然である。

2月23日、モザンビーク大統領フィリペ・ニュシは、Bairro Ferroviario(鉄道近隣地区)に市が設置した2つのテントに避難している家族を訪ねた。そして、大統領の公式フェイスブックページにそのことを公表した。同時に、フーレン廃棄物処分場周辺は保健衛生や安全の最小基準さえも備えていないので戻らないように避難住民に訴えた。

「死者を出した廃棄物処分場は、この周辺に住む人たちを支えている場所でもある」

市当局は2014年にフーレン廃棄物処分場の閉鎖を約束している。しかし、これまでに市が取った措置は数名の住民を他地区へ移住させたことだけである。しかも、マプト市健康・社会行動事務局長ヨランダ・マニュエルの言によると、移住した人たちの何人かは元の地に戻ってしまったということである。

 

この点についてデルシジオ・テンビは、フェイスブックに下記の書き込みをしている

 

Muitos deles se não forem todos há anos foram indemnizados para sair daquela zona, mas só saíram por um tempo e voltaram, afirmo isso, porque conheço uma família que tinha saído e voltou, optando por usar o dinheiro e vender os terrenos disponibilizados pelo governo. […]

移住した人全員とは言えないが、多くの人は数年前に移住したときに補償を受けた。しかし移住地に定着したのはほんのわずかの期間で、すぐに元の地へ戻ってしまった。政府から与えられた土地を売って金に換えてしまったのである。[後略]

しかし、グローバルボイスが面談した人たちは、上記の内容を否定している。実際に移住した人たちはフーレン近隣の洪水の被害を受けた地区の人たちで、廃棄物処分場に隣接して住んでいる人たちではないというのだ。

フーレン廃棄物処分場、モザンビークの首都マプト市のゴミのみを受け入れることされている。写真:マルコ・シモンセリ 使用許可済

また、移住した人たちは、移住はしてみたものの移住地には電気、街路、市場など生活に必要な最小限の基盤さえ整備されていないと 不満を漏らしている

移住先での収入が保証されないまま、移住をすることは家庭の崩壊に繋がる危険がある。多くの家庭の収入源となっているのは廃棄物処分場であるということを考慮すれば当然のことだと、別のフェイスブックの書き込みでホセ・マシャドは強調している。

A lixeira que hoje matou mais de uma dezena de pessoas é a mesma que alimenta mais de uma centena de famílias. […] Parem de querer encerar a nossa fonte de rendimento sem antes nos dizerem pra onde devemos ir, de forma humilde, ganhamos o que ganhamos nessa nossa pobre actividade de todos os dias e assim criamos os nossos filhos e sustentemos as nossas famílias.

十数名もの死者を出した廃棄物処分場は、同時に、数百以上の家庭を支えている場所でもあるのだ。[中略]移住先の目処が付くまで住民の収入源を閉鎖することなどはしないでほしい。我々は、実入りの少ない仕事の中から僅かばかりの日銭を稼いで子育てをし家族を養っているのだ。

#PrayForHulene(フーレンに祈りを)

この惨状を見てモザンビークの人たちは先週から活動を始めた。ツイッターユーザーは、移住を余儀なくされた32家族の人たちの救援活動をするために #PrayForHuleneというハッシュタグを用いることとした。

私たちは団結して、持てる物やできることを被害者に少しでも差し出せば、より強い力を発揮することができます。そして、今まさに苦しんでいる人たちを助けることができるのです。

画像の訳文:私、ヤラ・ボンゴはフーレン事故被災者を助けるための社会活動に参加しています。衣類、保存食、衛生用品の提供を心よりお願いします。是非ご協力ください。連絡先:842928023
#TwitterFriends #PrayForHulene

ツイッターの訳文:みなさん、私たちは親身になって対処するつもりです。また、硬く結束するつもりです。どのような支援も歓迎します。#TwitterFriends #WeBack #PrayForHulene

寄付を続けてください。#PrayForHulene#TwitterFriends

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または、ダイレクトメッセージ

モザンビークを襲った豪雨により、これまでのところ約13万人が被害を受けている。特に市街部における洪水の影響が著しい。

校正:Misaki Sato

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