日本の労働者を苦しめ続ける「パワハラ」と「過労死」とは?

(原文の掲載日は2018年4月7日です)

Karoshi in Kobe

ゼッケンには「パワハラ 長時間労働による20歳の若者の死を労災であると認めてください」とある。写真はグローバルボイス提供。

2018年3 月、3 人の活動家が神戸市灘区 のJR六甲道駅でビラを配り、署名を集めていた。3人はジャケットの上に青いゼッケンを被り、そこには日本語でこう書いてあった。

パワハラ長時間労働による20歳の若者の死を労災であると認めてください

ビラを配るのは前田颯人さんの死を人々に注目してもらうためで、前田さんが亡くなったのは「パワハラ」 すなわち職場でいじめられた結果だと、彼らは主張している。自殺を図る以前に前田さんが働いていた ゴンチャロフ製菓は、神戸駅に出店する地元でも有名な会社である。

2017年の12月の産経新聞の記事によると、前田さんは二十歳のときにゴンチャロフ製菓に入社し、神戸西部にある工場で働いていた。入社後、前田さんの労働時間は急激に増えていった。すなわち、上司に無視されたり怒鳴りつけられたりすることが重なって、ひと月に109時間もの残業をすることがしばしばあった。とうとう前田さんは、2016年6月24日に神戸のJR摂津本山駅で飛び込み自殺を図るに至った。

日本語で「パワハラ」と言えば、不規則な労働時間、無給での残業、言葉による嫌がらせ、そして精神的虐待が 挙げられる。この国の経営哲学の手法は非常に上下関係が厳しく、「天皇制」とも言われるほどで、そのため、よりパワハラが起こりやすい環境にある。

前田さんの死は度を越した長時間の残業の結果生じたもので、 過重労働による死亡、すなわち「過労死」と言ってもよい。経済協力開発機構(OECD) に加盟する国々の労働者たちがワークライフバランスを保つ取組みをしているなかで、日本の職場環境において「過労死」は 40年も長いあいだ深刻な問題と認識されてきた。日本政府が最近発表した「労働白書」は、実に​5社のうち1社の割合で従業員が毎月80時間の残業をしており、深刻な健康被害を被る危険がある と報告している。

「過労死」は、​日常の会話の中で一般的に使われているが、実際は労働条件​について言及するときの用語として定義されているわけではない。日本の医師たちはしばしば、「過労死」を 「過重労働が引き起こす心不全や脳卒中の結果​起こる​突然の死​」とし、過労の末の自殺も同様であるとみている。日本の​労働法により上限​が定められているとはいえ、従業員は勤務時間外に無給の労働を強いられている。他には、従業員が必要に応じて時間外労働を正式に同意することを可能にする法律 もある。

日本では、過重労働のせいで 毎年おおよそ200人が亡くなっている。おそらく今最も注目を浴びているのは、 大手広告会社電通の社員 高橋まつりさんの自殺だろう。高橋さんは自殺する前月に105時間の残業をしていて、毎夜の睡眠時間はわずか2時間だったとツイート していた。

日本の裁判所は高橋さんの死は激務が原因と判定を下した。メディアから追求され電通の社長は2016年12月に 辞職に追い込まれた。続く捜査で電通側の就業規則違反が発覚し 50万円 の罰金が同社に課せられた。起訴された経営陣はいなかった。

電通は、今後数年間で20%の労働時間削減に取り組むと同時に、在宅勤務も奨励していくと発表した。日本では「過労死」は今なお社会問題として残っている。 2016年には、過重労働により、発電所の従業員が死亡 し、電通でも2人目の犠牲者が出ている。更に最近では、北日本に住む男性が月に 80時間以上の時間外労働を続けた結果亡くなったと伝えられている。

「過労死」が社会問題として認識されても、日本政府は悪い慣習を改善しようとしてはいない。労働力不足と生産性低下に対処するために、 安倍政権 は最近、労働者がもっと働けるように、時間外労働を規制する法律を緩めようとしている。しかし、 間違ったデータ(訳注:7月17日現在、リンク先は閲覧できない状態になっている) の発覚で、政府はこの法案をしばらく棚上げした。

一方、母和美さんの産経新聞のインタビュー記事を除けば、前田颯人さんの死は、日本のメディアでは、ほとんど注目されていない。しかし和美さんは、息子の早すぎる死の補償を以前の雇用主に求めていくことを固く決意している。ゴンチャロフは地方労働局の裁定を待っているが、母は子供を失ったままだ。和美さんは「明るくて優しい息子を失って悲しい」と産経新聞に語っている。

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