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シリア・東グータの若者たちが空爆下の市民の苦しみをリポート

カテゴリー: 中東・北アフリカ, シリア, メディア/ジャーナリズム, 人権, 市民メディア, 戦争・紛争

シリア政府軍の空爆により破壊された東グータの街を撮影するヌールとアラ。(写真は掲載許可済み)。

この記事は、東グータから発信された一連の体験談の続編にあたる。ダマスカス郊外の東グータにおける、一人の看護師 [1] と 一人の歯科医 [2]の体験談は2018年2月20日と同年3月4日に、こちら [3]から読むことができる。

反政府勢力の支配下にある東グータは、2013年末から [4]バッシャール・アサド大統領率いるシリア政府軍とその同盟勢力の包囲下にあるが、ここ数週間で砲撃は極端に激しさを増した。国境なき医師団(MSF)が明らかにした医療施設からのデータ [5]によると、2月18日の夕刻から3月3日の夕刻までの2週間で、4,829人が負傷、1,005人が死亡した。これは1日に344人が負傷、71人が死亡したということになる。  民間人のためのインフラも深刻な打撃を受けた。25か所以上の病院や医療センターが空爆を受け [6]、なかには4日間で複数回の爆撃をうけた施設もあった。

東グータ生まれの二人の姉妹12歳のヌールと8歳のアラは、継続する包囲攻撃について自らの体験をツイートし始めた [7]

姉妹とその母親、シャムス・アル=カティーブは、 親も家もない何十人もの子供たちが、親の死後誰にも世話されず放置されているのを見てきた。アル=カティーブ は二人の娘のためにTwitterのアカウントを作成し、人々がグータで起こっていることを知り、 行動に移すことを願っている。

グローバル・ボイス(GV)は幼いヌールに直接取材をした。その折、彼女はなぜジャーナリストになりたいかを語ってくれた。

I want to be a journalist to convey the innocents’ suffering or study chemistry to make medicine to the people.

私はジャーナリストになって、罪のない人々が苦しんでいることを伝えたいの。それか、化学を学んでみんなのために薬を作る仕事がしたいわ。

かつてヌールは包囲中でも学校に通っていて、際立って優秀な5年生だった。しかしその学校が最近、アサド政権側とみられるジェット機の爆撃を受けた。その後も軍事行動が続いているため [4]ヌールは他の学校に通うこともできなくなってしまった。

現在ヌールと彼女の家族はほとんどの時間を家で過ごしている。

家の近所が狙われた空爆で、家族の命に別状はなかったが、アラは比較的軽い怪我を負った。

時折姉妹は、深まる人道的危機について撮影や対談をするため、通りを歩いたり避難所を訪ねたりしている。母親のアル=カティーブがGVに語ったところでは、姉妹は絶望感にとらわれてきているという。

Most of the time the girls stay close to me and hug me and start crying when an air strike hit nearby. We don't have much food, only some herbs like parsley, nor water to drink or shower.

ほとんどの時間、娘たちは私にまとわりついてきて、近くで空爆が始まると泣き始めるわ。食料もほとんどなくて、あるのはパセリなどのハーブだけ。
飲み水も、シャワーを浴びるための水も無いのよ。

2018年2月22日の空爆直後の様子が撮影されTwitterに投稿されている。(閲覧注意:傷口の映像あり) 。

どうかお願いだから私たちを助けて!

このビデオでヌールはこのように叫んでいる。

Why is he bombing us? What have we done to him? And what does he want from us?

なんで私たちが爆撃されるの? 私たちが何をしたというの? 私たちにどうして欲しいの?

ヌールとアラの望みは、他の子供たちと同様に早く空爆が終わり、学校へ戻って普通の生活を送ることよ。母親のアル=カティーブはこのようにGVに語った。

内戦を記録する

シリア内戦は歴史上で最も記録に残されている内戦であるとよく言われている。それはシリア人自らが、それを記録に残しているからだ。

20歳のマハロス・マゼンは7年前(訳注:シリア内戦の始まった年)には授業に出席していた。その頃は自分が故郷の人々の苦しみを追うフォトジャーナリストになるとは思いもしなかった。彼の故郷はドゥマ、東グータの街のひとつである。

しかし、シリアで起こった内戦の悲惨さを伝えるために、マゼンは写真家になることを決意した。

シリア政府軍による空爆を撮影するためにカメラを構える マハロス・マゼン 。(写真はTwitterより) [13]

マゼンは毎日のように写真をTwitterやfacebook、Instagramに投稿したり、それらを通信社に送ったりしている。
彼はGVにこう語る。「そうしたら、世界もこれらの惨状を目にすることができるでしょう?」

ドゥマを拠点とし、包囲下にある東グータの人々の日常を追う写真家。
このアカウントを応援して。みんなありがとう。

マハロスがGVに語ったところでは、彼の父親は2014年に政府軍のジェット機による空爆で殺されたという。彼は現在、家族と近所の人々と共にグータの避難所に住んでいる。

避難所はごく普通の地下室であり、空爆から人々を守れるような適切な装備はない。

Every shelter hosts 30 to 40 family, I've visited one in Arbin that hosts 120 families.

各避難所は30から40組の家族を受け入れているんだけど、120組もの家族を受け入れているアービンの避難所に行ったこともあるよ。

マゼンはこう続ける。

It's very hard to get an internet connection in order to upload the photos and videos because of intensive shelling. Many families are still buried under the rubbles and can't be reached by White Helmets [18].

砲撃が凄まじいからなかなかインターネットが繋がらなくて、写真やビデオをアップロードできないんだ。多くの家族がまだこの瓦礫の下に埋まっているんだけど、
ホワイト・ヘルメット(シリア民間防衛隊) [18]でもそこまで入れないんだよ。

マゼンは、グータを絶対に離れないと言う。彼は、2016年に壊滅したアレッポの街 [19]のように、グータも完全に破壊されてしまうことを恐れているのだ。
現政権は住民を安全に避難させると確約しているが、そうした合意はこれまでさんざん破られてきていて、信用できないと彼は言う。

彼はまた、国連の援助トラックが食糧を配布していた現場近くでジェット機の攻撃があったことから、シリアでは国連さえも標的にされている [20] と指摘する。
3月5日には、グータに向かう医療物資も政府に差し押さえられている。 [21] 

校正:Yuko Aoyagi [22]