フェイスブックとケンブリッジ・アナリティカ社(訳注:以下CA社と表記する)によるデータ不正利用事件発覚後の後遺症はまだインドに残っている。インドの政治家たちは、似通った手法を用いて地方選挙の操作を行ったと互いに非難合戦を繰り広げている。
上記2社は数日間マスコミの注目を浴びることとなった。ことの起こりは、CA社の内部告発を行った 元同社社員クリストファー・ワイリー氏がニューヨーク・タイムズとオブザーバー紙にCA社の内部情報を提供したのが始まりだった。その情報は、イギリスに拠点をおきデータマイニングを専門とするCA社が、およそ数千万人分のフェイスブックユーザーのデータ(主に性格テストから得られたもの)を業務の一環として、ドナルド・トランプ氏の大統領選挙活動が有利に進められるように不正使用したというものである。フェイスブックは、現時点で少なくとも8700万ユーザのデータが影響を受けたと推測している。
現在、ナレンドラ・モディ首相が率いる与党インド人民党(BJP)と最大野党インド国民会議(INC)は両党ともCA社との関わりを否定しているが、互いに相手がCA社のデータを使用したと批判しあっている。
インド人民党最高幹部で情報通信大臣のラヴィ・シャンカル・プラサード氏。
What link does Cambridge Analytica have with social media management of Rahul Gandhi and Congress Party? Asks @rsprasad
— RSPrasad Office (@OfficeOfRSP) March 21, 2018
ケンブリッジ・アナリティカ社と、ラーフル・ガンディー氏のソーシャルメディア支配や国民会議党との繋がりは何だろう?
インド国民会議党議長のラーフル・ガンディー氏。
BJP lying factory at work:
Journalist set to break big story on how Cambridge Analytica (CA) was paid to infiltrate and sabotage the Congress in 2012.
BJP rushes Cabinet Minister to lie and spin fake news:Congress worked with CA!
Real story vanishes.https://t.co/zMX7VJAAfa
— Rahul Gandhi (@RahulGandhi) March 23, 2018
稼働中のうそ製造工場、インド人民党。
記者は、CA社が2012年にインド国民会議党にひそかに入り込み妨害したときにどのようにして金銭を受け取ったかという大ニュースを暴いた。
インド人民党は、閣僚に偽ニュースを至急ねつ造するよう強要している。インド国民会議はCA社と癒着しているというのだ。
事実は消え去ってしまう。
テクノロジーと政策に関する著名なブログ「Medianama」によると、インド選挙管理委員会は2017年に少なくともフェイスブックと 3回 提携をして若者に投票を呼びかけた。選挙管理委員会の委員長O.P.ラワット氏は、「不正利用予防対策」を講じたうえでフェイスブックとの提携を続けると言っているが、同委員会はフェイスブックとの提携で悪用が行われる可能性について再調査を行っている。
マーク・ザッカーバーグ氏は、フェイスブックに保存されたデータの流出防止策についての概要を幾つか示したが、ニューデリーのコミュニケーション・ガバナンス・センター研究部長チンメイ・アルン氏などの専門家は納得していない。
Mark Zuckerberg is doing the gracious thing after the event has occurred. Apology isn't going to change anything. If he couldn't fathom the possibility of data leak, then, he was really negligent. 'oops, I am sorry will not work at this point of time': @chinmayiarun@AvanneDubash pic.twitter.com/Aq4kectmto
— ET NOW (@ETNOWlive) April 5, 2018
データが流出してもマーク・ザッカ―バーグ氏は優雅な生活をしている。謝罪はしているけれど、全然改善されていない。データ流出の可能性に無頓着でいられるなんて、ザッカ―バーグ氏はいい加減な男だ。「おっとすみません。今は休憩中なんです」とでも言いたいのだろうか。
インド政府はデータ流出に関してフェイスブックに要請をした。これに答えて、フェイスブックは335人が性格テストアプリケーションにアクセスし、さらにアクセスした人たちのインドの友人56万2120人が影響を受けたと回答した。
ケンブリッジ・アナリティカ社のインドでのビジネスのルーツ
シバン・ヴィジ記者による調査記事は、CA社(及び親会社SCLグループ)のインドにおける活動をアムリッシュ・ターギ氏とアヴニーシュ・レイ氏に関連付けて考えている。この2人は、データ分析を専門とするオブリノ・ビジネス・インテリジェンスと称する投機的事業体の共同経営者である。
オブリノ・ビジネス・インテリジェンスの共同設立者アヴニーシュ・レイ氏がインタビューで語ったところによると、オブリノ・ビジネス・インテリジェンス社は選挙管理のためにSCLインドを登記し、インドの有権者データベースをSCLに供与したという。 また、レイ氏がニューデリー・テレビジョン・リミテッド(NDTV)に語ったところによると、不祥事を起こしたSCLグループの共同創設者アレキサンダー・ニクス氏が、レイ氏が言うには、インド国民会議党を批判の渦の中に投げ込むような質問を元にアンケートモジュールを開発したという。これは、同氏がインド人民党の議員に代わり、インド国民会議党を打倒するためにめぐらした策略といってよい。不祥事が表面化しこの策略は失敗に終わったとレイ氏は語る。 伝えられるところによるとニクス氏はSCLグループの選挙部門を牛耳っていたという。SCLグループはのちにCA社に社名を変更し、インドから完全撤退した。
オブリノ・ビジネス・インテリジェンス社のウェブサイトで、同社は2010年のビハール州議会選挙でインド人民党を支持して仕事をしたと断言している。オブリノ・ビジネス・インテリジェンス社のある重役のLinkedIn(リンクトイン)ページには、「その重役が4つの選挙キャンペーンで、与党インド人民党を勝利に導いた」と記されている。
インドのプライバシーと情報保護
こういったことが明らかになる中で、インド最高裁判所は インドで議論の的となっている生体識別プログラムの合憲性をめぐり、歴史的転機となる事案の審理をしている。そして電子・情報技術省は、ジャスティス・スリクリシュナコミティ(Justice Srikrishna Committee)に、インドのデータ保護法の元となるデータ保護に関する報告をまとめるよう命じた。
これは、9人の最高裁判所判事全員一致による2017年8月の判決に由来している。インド国民は、政府の主張とは異なりプライバシー保護の基本的権利を保持するというものである。インターネット政策で著名な専門家スニール・アブラハムが指摘するとおり、仮にCA社がアメリカで行ったことをインドでうまくやってのけたら、インドの現在の法律では違法ではないのである。