(訳注:この記事の原文は2018年6月4日に掲載された。文中記載の日本円は当時の為替レート1インドルピー当たり1.65円を元に計算、概数を記載している)
2018年6月4日、給油ポンプで自動車のタンクを満たしているごく普通のインド人は、上昇した燃料価格にまたも衝撃を受けた。いくつかの州では、ガソリンはリットル当たり85インドルピー(以下INR、140円)、ディーゼルはリットル当たり74INR(122円)を記録した。これらは通常より少なくとも10INR(17円)は高い。2018年2月以来、燃料価格は上昇の一途をたどり、市民が我先に日々の支出を賄うような状況が続いたり、幾多の怒りの波がソーシャルメディア上に押し寄せたりした。
インドの石油価格は原油消費量上位10か国のうち、4番目に高い。インドは、原油需要の80%を海外から調達しており、第3位の石油輸入国である。それによりインドの石油市場は世界的な原油高により脅かされたままでいる。都市部では、ガソリンとディーゼルの価格は平均してそれぞれリットル当たり約75INR(124円)、65INR(107円)だったが、直近数か月では日々価格は上昇している。
2018年5月の後半までに、市民は燃料だけでなく液化石油ガス(LPG)の上昇も経験した。通常LPGはボンベに詰まった状態で流通している。LPGボンベ価格もまた上昇した。現在、補助金適用のボンベ価格が2.34INR(4円)に対し補助金非適用のボンベ価格は48INR(79円)となっている。
2018年4月、インドの石油大臣は石油輸出国機構(OPEC)の事務総長と会見し石油価格の高騰について協議を行った。
https://twitter.com/PetroleumMin/status/983622979434221568
ダルメンドラ・プラダン石油大臣(@dpradhanbjp)はOPEC(@OPECnews)のモハメド・サヌシ・バーキンド事務総長と会見した。会見では、OPECによる石油減産が及ぼしている石油価格の乱高下の問題および石油減産によりインドなどの石油価格に敏感な国が受けている影響について協議が行われた。#IEF16 (訳注: IEFは国際エネルギー・フォーラムの略称)
アジア各国の石油大臣は、OPECはアジアの買い手に輸出割増金を課し続けていると主張する。OPECはその主張を否定している。インドは国内の燃料需要のうち、原油は86%、天然ガスは75%、LPGは95%をOPEC加盟国からの輸入に依存している。石油価格の高騰に加えて、インドは割増金が公共交通機関の輸送価格上昇、野菜や果物の価格、教育費、そしてバスと宅配便料金等の上昇を招いているとも主張する。
石油価格の上昇:責められるべきはOPECの輸出割増金かそれともインド国内の高い税金か
OPECだけに石油価格上昇の責めを負わせることはできない。石油製品(に課された税)が中央および州政府の主な税収源となっている。石油製品にかかる税は2段階で課される。中央政府は物品税を徴収し、それぞれの州は付加価値税(VAT)を販売された石油に課す。物品税は間接税であるのに対し、付加価値税は物品やサービスの生産や供給段階における価値によって変動する。
石油価格には業者が設定した販売価格および手数料に加え、州が課す付加価値税と中央政府が課す物品税が含まれる。ニュースサイトのファーストポストによると、インドの中央政府は石油に19.5INR(32円)を、ディーゼルに15.3INR(25円)の物品税を課している。もし中央政府が石油についての物品税から1INR(1.65円)を控除することを決定したら、物品税からの収入は約1,072.5億INR(約1,770億円)減少することになるだろう。現在販売業者の価格に課されている税金は販売業者価格そのものに達しており、利益を得る余地は残されていない。
2017年7月にこれまでの税システムを一元化した物品・サービス税(GST)が導入された段階で、付加価値税はほとんど時代遅れとなり、石油製品を物品・サービス税の対象とすべきとする世論が起こった。しかし、中央政府が物品税から歳入を得ていたように、州政府にとっても石油は 最も大きな収益源の一つだ。そういった事実があるので、州政府は石油に課している付加価値税を手放し、代わりに物品・サービス税を導入することに慎重な姿勢を取っている。
例えば、ケララ州は石油価格を1INR(1.65円)下げたが、ケララ州の財務大臣、トマス・アイザックの声明によると、税収のうち50億INR(83億円)を失うと見込んでいる。財務大臣アルン・ジェイトレーは、全ての州から合意が得られることを条件として、石油を物品・サ―ビス税の対象とすることに同意した。
怒りが行動へと駆り立てた
2018年2月以来、ソーシャルメディア上での民衆の怒りに加え、反対政党が「ツイッター・モルチャス」(モルチャはヒンディー語で「結集」や「抗議」)という運動を立ち上げた。彼らは様々なニュースチャンネルで発言し、複数の都市で決起集会を開いた。インド国営石油会社が自社のウェブサイトで伝えるところによると、中央政府はこれに応えて石油価格を0.6INR(1円)引き下げる意向だと発表した。
しかし、実際の下落幅はたった0.01INR(0.02円)にとどまったことがわかった。ソーシャルメディア上でのさらなる怒りは政府にさらに0.07INR(0.12円)石油価格を引き下げさせた。そして4日連続で石油価格が下落した後に、政府はついに価格を0.09INR(0.15円)引き下げた。2018年6月4日現在、価格はガソリンは0.15INR(0.50円)、ディーゼルは0.14INR(0.23円)下落している。
ツイッターユーザーのMumbaiCongress(@INCMumbai)は石油に対する減税を要求した。
Last #TweetMorcha was a huge success against unprecedented Bank Charges
Today our fight is against atrocious #FuelPriceHike Current Govt. & its policies does not let the nation thrive & we will not keep quiet about it. Use #CutFuelTaxes Tag PM @narendramodi & CM @Dev_Fadnavispic.twitter.com/fzwdLHxWpb— MumbaiCongress (@INCMumbai) June 2, 2018
前回のツイートモルチャは前例のない法外な銀行の手数料に対するもので、大きな成功を納めた。今日、我々の戦いはひどい石油価格の上昇に対するものとなっている。現政権とその政策は国を栄えさせず、我々は黙っていないだろう。「燃料税を下げろ」ハッシュタグを使ってほしい。そしてモディ首相とマハラシュトラ州知事ファドナビスにタグを付けよう。
別のツイッター利用者はこう予言した。
#FuelPriceHike The petrol bird is coming home to roost & lay it's egg! pic.twitter.com/NeUzQmImU7
— Prashant Bhushan (@pbhushan1) May 25, 2018
石油の鳥はねぐらにつき、卵を孵すために家に帰ってきている!
インドの有名人、ファハーン・アクタルは石油に対する高い税金を揶揄するため、ソーシャルメディア上で発言した。
₹84 per litre mubarak to you and your loved ones.
Actual cost I believe is ₹31, based on info i could find online (do correct me if I’m wrong, happy to learn) .. the rest are central & state taxes, cess & commissions. Just so you know that the price can be brought down.— Farhan Akhtar (@FarOutAkhtar) May 23, 2018
あなたとあなたの愛する人々へ、リッター当たり84INR(139円)おめでとう!
インターネット上で見つけた情報によると(もし間違っていたら是非訂正してほしい)実際のコストは31INR(51円)だと信じている。中央・州税それに租税と手数料が余分に付加されているのだ。これで石油の値段をまけさせることができるとわかっただろう。
そして、有名人のアカシュ・バーナージーは次のようにからかった。
Breaking News!
As frustration over #FuelPriceHike mounts…fights are breaking out at Petrol pumps ???? pic.twitter.com/gAROUNnPRR— Akash Banerjee (@akashbanerjee) May 26, 2018
ニュース速報! 石油価格上昇に対するフラストレーションが高まるにつれ…給油ポンプの前で自棄(やけ)を起こしている人もいる。????
その他の人々は風刺作品や漫画を披露した。
Drinking and driving should be less of a problem now. After all how many will be able to afford alcohol and petrol on the same day ? #PetrolPriceHike
— Harsh Goenka (@hvgoenka) May 27, 2018
酒を飲んだり運転することは今や大した問題ではない。結局何人が同じ日にアルコールと石油を買うことができるんだ?
The fuel burden! @mail_today cartoon #FuelPriceHike#Onepaisapic.twitter.com/R5HyvxbBO3
— Satish Acharya (@satishacharya) June 2, 2018
石油の負担といったら!メールトゥデイの漫画より。
インドが石油価格の上昇を経験するのはこれが最初ではない。2013年と2014年には、石油価格は上昇し、多くの都市ではリットル当たり80INR(132円)に達した。当時の会計年度では、中央政府は、モディ首相の指示のもと、税収を増やしてインドルピーを強くするため、物品税の上昇が許可された。この決定は、燃料価格の高騰の苦しみのためにモディ首相と中央政府を批判する人々からは支持されなかった。
2019年の選挙が近づくにつれて、政党は彼らの利益のために現在の論争を最大限利用している。2014年以来インド国民会議は石油価格上昇に反対し続けている。現在は選挙の前に石油価格上昇に抗議するため農民を組織している。
一方、与党インド人民党はこの問題への取り組みを続けている。ある報道によると、インド人民党は国営の石油天然ガス公社に石油の補助金負担を要請する方針である。同公社が石油の補助金を負担すれば、物品税を引き下げた場合に予想される歳入の減収幅を小幅に抑えることができると同時に石油価格の引き下げにつながると、与党側はみている。