- Global Voices 日本語 - https://jp.globalvoices.org -

アフガニスタン:少数派宗教の未来はいかに? シク教徒とヒンドゥー教徒

カテゴリー: 中央アジア・コーカサス, アフガニスタン, 宗教, 市民メディア, 戦争・紛争, 政治, 行政

カブールにて店を営むアフガニスタン人のシク教徒、写真:Koldo hormaza スペイン、マドリード [1] CC 2.0.

アフガニスタンの治安は日々不安定さを増しつつある。2018年に起こった事件のうちこれを顕著に表しているのは7月に発生した自爆テロだろう。シク教徒とヒンドゥー教徒の代表団がアフガニスタン大統領、アシュラフ・ガーニを訪問する道中を狙ったこの襲撃により19名が死亡、10名が負傷した。

ジャララバードでの自爆テロ [2]は故意のものであったと主張するISISにしてみれ ば、この爆撃は大成功であった。アシュラフ・ガーニ大統領の到着に備えていた区域での大規模な爆発に成功しただけでなく、アフガニスタン史上初のシク教徒の下院議員となるはずであったアーター・シン・カルサを殺害した。著名なシク教徒活動家であるラワイル・シンも命を奪われた。

写真撮影:Eliatroz.com [3]、許可を得て使用

この襲撃で合計17名のシク教徒とヒンドゥー教徒が死亡した。 SNSユーザーの多くは彼らが大切にする多様性に対する、排他的なISISによる攻撃であると述べている。

最も愛国心の強かったアフガニスタン人たちがジャララバードで命を落としてしまった。本当に悲しくて言葉も出ない。少なくともこれだけは言える、この襲撃はアフガニスタン人の愛国心、宗教の自由、多様性、民主主義、アフガニスタン人同士の友情、そして共有の価値に対抗するものだ!

#RawailSinghと#Avtarsinghはアフガニスタンのシク教徒みんなの意思を代弁する存在だった。彼らを含む17人のシク教徒を殺害したISISによるジャララバードでの襲撃により大きな空虚感がもたらされた。アフガニスタンに平和が戻ることを願う。

アフガニスタンの法は、国家の大統領はイスラム教徒でなければならないと定めている。しかし選挙法は、国内に1000人以上存在するシク教徒と、わずか数十人しか残っていないヒンドゥー教徒の政治参加を支援している。

2016年に改正された選挙法によると、下院の249席のうち1席はヒンドゥー教徒あるいはシク教徒在住地域の代表者のために確保されている。また女性権利活動家のアナルカリ・ホナヤールは、前大統領ハーミド・カルザイの発布した大統領令に則り2010年より上院議員を勤めており、マイノリティーとして力強く声を上げ続けている。

もしアーター・シン・カルサが殺害 [14]されていなかったとすれば、彼は初めての2つの地域を代表する下院議員となっていただろう。今後は彼の息子、ナリンダー・シン・カルサが地域の人々の声を受けて [15]彼の後継者となる。己の身が狙われていることは彼自身も承知だ。

社会からの疎外

現在アフガニスタンには300家族以上のヒンドゥー教徒とシク教徒が在住しているが、高等教育機関 [16]に在籍しているヒンドゥー教徒とシク教徒は一人もいない。

ラワイル・シンと彼の娘コマル、ラワイル・シンのフェイスブックより

シク教徒とヒンドゥー教徒の大多数は中学校で学校を辞めている。 この時期に学校を辞める風潮を作り出している主な引き金は、生徒と教師両方からのいじめと経済的圧迫である。

米国の国際宗教自由委員会が2009年に実施した調査 [17]によると、シク教徒とヒンドゥー教徒はほぼ全ての政府の役職への着任を制限されており、また極めて幅広い社会的差別を受けている。

カンダハル州とヘルマンド州での紛争の期間に立ち退きを余儀なくされ、彼らの多くはカブールへ移住した。商店を営んでいる者が多い。

2016年の統計は、直近の30年でアフガニスタン在住のシク教徒とヒンドゥー教徒の99パーセント [18]が国を出たことを示している。

1980年代には彼らの人口は22万人を越えていた。当時は政治に関係する職業にも就くことができ [19]、より有意義な社会的役割を担っていた。シク教徒やヒンドゥー教徒在住地域の知識人は、戦争によって国が破壊されてしまったことで、かつてシク教徒やヒンドゥー教徒が担っていたこの役割をアフガニスタン人の多くが忘れてしまった、と述べている。

7月2日の襲撃後間もなく、インドのニューデリーではシク教徒の抗議活動 [20]が勃発した。インドのアフガニスタン大使であるシャイダ・アブダリ博士も活動に参加した。

しかし、この襲撃を経てアフガニスタンに残留するシク教徒の多くは隣接する大国インドに己の未来を見出だすようになった。彼らにとってはインドの方がアフガニスタンよりも文化的・宗教的な結び付きが強い。爆撃後すぐにシク教徒25家族がインド市民権 [21]を求めて願い出た。

多くのアフガニスタン人は仲間が国を去っていく様子に寂しさを感じている。

とても悲しい! 国を去るときの彼らの悲しみと苦痛は想像に絶する。特に、まだ心の傷の癒えていないアーター・シンの家族! 私たちはこの国を宗教や民族に関わらず皆が安全に暮らせる国にしなければならない。でなければ、全て教区にするべきだ。

一部のシク教徒とヒンドゥー教徒がいまだにアフガニスタンに残るのは、故ラワイル・シンと故アーター・シン・カルサによって具現化された愛国心 [24]と共同体意識ゆえである。

大統領さん、あなたは和平交渉の方法を再確認するべきだ。今日私たちは最も愛国心の強いアフガニスタン人の一人であるラワイル・シンを失った。あなたはこの写真の少女を覚えているはず。彼女の目はあなたの首都を腐敗から守っている。そして今、彼女の目はこう問う。お父さんはどこ?って。

校正:Moegi Tanaka [30]