原文掲載日は2017年10月10日
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の2017年ノーベル平和賞受賞に、多くの人が驚いた。オーストラリアでは、ICANの活動や2007年にメルボルンでつつましく発足したことを知らない人も少なくない。また、未だオーストラリア自身がICANの推し進める核兵器禁止条約に署名していないことへの批判もあがった。
ノルウェーを拠点とするノーベル委員会 は、「核兵器の使用がもたらす破滅的な人道上の結末について注意を喚起する活動と、そのような核兵器を条約によって禁止するための革新的な努力」を受賞理由として挙げた。
ICANの受賞は、ソーシャルメディアで概ね好ましい評価を得た。
Great work @nuclearban! And it all started in Melbourne! “Nobel Peace Prize Goes to Group Opposing Nuclear Weapons”: https://t.co/JvQKawBABW
— Alex (@AlexEdneyBrowne) October 6, 2017
素晴らしい、核廃絶活動(@nuclearban)! すべてはメルボルンで始まった! ノーベル平和賞は核に反対するグループへ
隣国ニュージーランドは、喜んでその功績を分かち合った。
Kia ora James! @nuclearban & @NZGreens share: belief a better world is possible; vision to describe it; determination to make it happen ?✊? https://t.co/Qgxo8gSRYG
— Thomas Nash (@nashthomas) October 6, 2017
やぁ、ジェームズ! @nuclearbanと@NZGreensは共有する。より良い世界を築くことは可能だという信念、それを表現するためのビジョン、そして実現させる決意?✊
またオーストラリアのオンライン新聞「ザ・ニュー・デイリー」は、2017年7月に行われた核兵器禁止条約の国連採択における、ICAN核廃絶活動の役割をすぐさま記事に取り上げた。
How Melbourne anti-nuclear campaign ICAN @nuclearban won the Nobel Peace Prize: https://t.co/Unetl4aQ2W pic.twitter.com/SOjNQ3fxop
— The New Daily (@TheNewDailyAu) October 8, 2017
メルボルン発足、核禁止を目指すICAN。ノーベル平和賞受賞のわけとは
2015年の設置後、ジュネーブで開催された国連オープンエンド作業部会を中心に、ICANは条約の採択に向けてたゆみなく活動を続けてきた。
その反面、ICANの受賞には成果が伴っていないと感じる人もいた。
They threw alot of expensive parties, and people with no power to do anything signed some papers …. and not a single nuke was “abolished”
— Phoenix Wingman (@Phoenix_Wingman) October 6, 2017
彼らはただ沢山のお高いパーティーを開いて、権力のない人たちが何枚かの紙切れにサインしただけだ……。結局核兵器はひとつも「廃止」されてないじゃないか!
実際、122ヵ国が核兵器禁止条約に署名したものの、そのうち核兵器保有国は1か国も含まれていなかった。オーストラリア政府も署名への圧力を感じてはいるものの、 まだ署名はしないという。前オーストラリア公務員トップのポール・バラット氏は次のようにツイートした。
Aussie born group wins Nobel peace prize. Congratulations to Ican, big fail Australian Government. https://t.co/GrVtttBL0A
— Paul Barratt (@phbarratt) October 6, 2017
オーストラリア生まれの団体がノーベル平和賞を受賞。おめでとう、ICAN。何してるんだ、オーストラリア政府は。
オーストラリア人活動家のジョン・エングラート氏も賛同した。
The work of @nuclearban has come along way in ten years, but Australia still refuses to sign test ban treaty. Our #Shame #Auspol https://t.co/DLuO4ojrmM
— John Englart EAM (@takvera) October 8, 2017
核廃絶活動はこの10年で大きな進歩を遂げてきたというのに、まだオーストラリアは核実験禁止条約に署名しないのか。私たちの#恥、#オーストラリア政府
軍縮交渉を行うオーストラリアの代表団は「イタチ(ずるい奴ら)」のようだと非難されている。ガーディアン・オーストラリアの漫画家であるファースト・ドッグ・オン・ザ・ムーンは、ノーベル賞発表後にそのアイデアを取り入れた。
They give Nobel prizes to weasels now? No they do not. BUT WHAT IF THEY DID? https://t.co/cOM5XOa9kr
— F Onthemoon (@firstdogonmoon) October 9, 2017
今ではイタチまでにもノーベル賞が受賞されるのか? そんなはずはない。でももし本当にそれが起こったら?
オーストラリアでは、「真実に目を向けること」さえも求める声があがった。
What have they done exactly? North Korea and soon Iran with Nukes, ICAN has failed surely! Can we get Obama's back when Iran starts testing?
— Strayan Drongo (@StrayanDrongo) October 6, 2017
彼らが一体何を為したっていうんだ? 北朝鮮やそのうち核兵器を保持するイラン、ICANはどう見ても失敗しただろ! イランが核実験を始めたら、オバマの受賞したノーベル平和賞を返上してもらえるのか?
メルボルンを首都とするビクトリア州のダニエル・アンドリュース州首相は、フェイスブックでICANの偉業を広めた。
An incredible thing happened to a Victorian-founded organisation on the weekend. It won the Nobel Peace Prize – and it hasn't got nearly enough the attention it deserves. Please fix that. Tag and share. Let everyone know what we're capable of in this daring, progressive little state at the bottom of the world.
この週末ビクトリア州発祥のある団体にすごいことが起きた。ノーベル平和賞を受賞したんだ。しかし得るべき注目をまだ彼らは得ていない。これは修正すべき状況だ。タグと共有よろしく。地球の底にある型破りで革新的な小さいこの州ができることをみんなに知ってもらおうじゃないか。
しかしキャシー・ミシッチ氏のように、「ダニエル・アンドリュースが何をしたっていうんだ? そうそう、ただはやりに乗っただけさ」となじる市民も存在する。
イギリスに拠点を置くICANの共同団体「MEDACT」(核戦争防止国際医師会議(IPPNW)英国支部)は、ICANには全核兵器を禁止するという彼らの目標までまだまだ長い道のりがあると世界へ注意を促した。
Thrilled to be part of the global coalition winning #NobelPeacePrize. Time for UK to sign the #nuclearban treaty and scrap #trident@ICAN_UKpic.twitter.com/4n0z13bbQb
— Medact (@Medact) October 6, 2017
#ノーベル平和賞を受賞した国際共同団体の一部として光栄です。イギリスが#核兵器禁止条約に署名し、#トライデントを捨てる時なのではないのか。
志を同じくするICAN。メルボルンで発足したのにも関わらず、2011年から国際事務所をスイスのジュネーブに移し、国連が軍縮交渉の取りまとめを行う場を拠点に活動している。