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フィリピンのクレオール言語、チャバカノ語を紹介するブログが誕生

カテゴリー: 東アジア, フィリピン, 市民メディア, 旅行, 歴史, 若者, 言語, ライジング・ヴォイセズ
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フィリピンのサンボアンガ市庁舎。JC TuclaudによるFlickr写真。(CC BY-NC-SA 2.0)

チャバカノ語は、フィリピンにある170の言語のうちの一つで、サンボアンガ半島最南端のサンボアンガ市で広く使われている。アジアで唯一、スペイン語が基になったクレオール言語 [2]である。ブログ 「ビエン・チャバカノ」 [3] は、チャバカノ語を守り促進するために、チャバカノ語習得に興味があるすべての人々のためのオンライン情報源として作られた。

It's all about the Chabacano de Zamboanga. Bien Chabacano is the first and only blog designed for Chabacano language enthusiasts which discusses and analyzes Chabacano word origins, Chabacano grammar, and vocabulary, and so much more!

これはサンボアンガのチャバカノ語についてのブログです。「ビエン・チャバカノ」はチャバカノ語愛好家のために作られた最初の、そして唯一のブログです。チャバカノ語の語源、文法、語彙、ほかにも多くの事について議論したり分析したりしています。

ブログ「ビエン・チャバカノ」の管理人ジェローム・ヘレーラは、このプロジェクトを始めた時の着想について述べている。

Bien Chabacano seeks to instill pride and improve proficiency in the Chabacano language among the young Chabacano speakers by talking about its rich and colorful history and demystifying its grammar's many intricacies and nuances.

「ビエン・チャバカノ」は、チャバカノ語の豊かで華やかな歴史について解説したり、その文法に多く見られる複雑さやニュアンスの神秘性を解明したりしています。これにより、若いチャバカノ語話者達がこの言語に誇りを持つとともに、これを上手に使えるようになってほしいと思っています。

チャバカノ語はスペイン語とフィリピンの土着の諸言語が混じり合ったクレオール言語で、植民地時代のスペインとフィリピンの接触の歴史の中で発展した。現在、フィリピン国内に60万人以上のチャバカノ語話者がいると推計されている。

スペインは、1565年から1898年まで3世紀以上にわたってフィリピンを植民地支配した。しかし他の旧植民地と違い、フィリピンではスペイン語教育を行わなかった。代わりに、修道士や役人はフィリピンの土着の言語を学ぶことで、キリスト教の布教と、国の支配を確立した。

スペインはフィリピン諸島全体を征服したが、激しく抵抗する先住民族もいた。ムスリムが人口の多数を占めていた南部のミンダナオ島では、スペイン軍はサンボアンガ付近に、後にムスリム居住地を攻撃する拠点となる駐屯地を置いた。しかしスペインは結局、フィリピンの植民地占領期間中、ミンダナオを完全に支配下に置くことは出来なかった。

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サンボアンガ市の衛生局に掲げてある標語。「病気のない市が我々の願い」(訳注:原文はチャバカノ語で標記)写真とキャプションは「ビエン・チャバカノ」より、許可を得て使用。

アメリカ、ペンシルベニア州立大学のジョン・リプスキー教授は、チャバカノ語の華やかな歴史とサンボアンガにおけるチャバカノ語の起源について研究 [5]している。

Chabacano is the product of a rich cross-fertilization that could only have occurred in a region in which both great linguistic diversity and considerable overlapping areal features predominated. Chabacano is a manifestation of linguistic and cultural resilience, a language which continues to grow in number of speakers and sociopolitical impact.

チャバカノ語は、異なる言語同士が交流を重ねた結果生まれた。それは、この地の言語が多様性に優れ、また互いの地域性が似通っている地域でしか起こり得ないものである。チャバカノ語は、話し手の数や社会政治的な影響を増大させ続けており、それは言語学的及び文化的な面で強い言語だということの表れである。

ブログ「ビエン・チャバカノ」では、チャバカノ語の基本的な言葉や表現 [6] について読者に説明している。 流行りの [7]短い物語 [8]、さらには星の王子様 [9] のチャバカノ語訳まで取り上げている。以下は『星の王子さま』の最初の一節 [10]チャバカノ語訳 [11]である。スペイン語との類似性に注目してほしい。

Una vez, cuando seis años lang yo, tiene yo un libro acerca del vida de maga animal na monte cuando no hay pa alla tanto gente. Maga Experiencia De Mio el nombre del libro y ya puede yo alla mira un bien bonito retrato. Un retrato aquel de un grande culebra quien ta traga un animal. Taqui el copia de aquel retrato.

六つのとき、原始林のことを書いた「ほんとうにあった話」という、本の中で、すばらしい絵を見たことがあります。それは、一ぴきのけものを、のみこもうとしている、ウワバミの絵でした。これが、その絵のうつしです。
(内藤濯訳)

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チャバカノ語で書かれたサンボアンガ市内の本屋の広告の画像。簡単に訳すと、「あなたにとって最高の場所がもうすぐオープンするよ。」写真とキャプションは「ビエン・チャバカノ」より。許可を得て使用。

ブログではラジオ [12]番組、テレビのニュースレポート [13]行政の公式発表 [4]など、チャバカノ語が使用されているウェブサイトやソーシャルメディアも紹介している。

また、チャバカノ語の歴史や、サンボアンガ内でのアクセント [14]の違い、人の移動や経済の近代化 [15]がチャバカノ語の発展に与えた影響についても、簡単な背景を紹介している。さらに、チャバカノ語を促進する連携した取り組みが不足していることに対して嘆きを表している [16]

The state of Chabacano today is lamentable. Let me sound the alarm bells as early as now! Unless more aggressive preservation efforts will be implemented, the day will come when Chabacano will only be spoken inside the home. This prediction is bleak but it is not without merit.

昨今のチャバカノ語の状況は嘆かわしい。今すぐにでも警告を鳴らそう!もっと積極的に保護する努力をしないと、いつか、チャバカノ語が家庭内でしか話されなくなる日が来てしまう。悲しい予言ですが、決して無駄にはならないでしょう。

「ビエン・チャバカノ」のようなオンラインプラットフォームを通して、フィリピンでさらなるチャバカノ語熱を引き起こし、学生やネット市民たちに対して、チャバカノ語を学び、日常に取り入れ、発展を継続させるよう鼓舞することが望まれる。

校正:Hikaru Miota [17]