メキシコ:双方向地図開発で犯罪から身を守る市民

Interactive mapping. Photo by Pixabay in the public domain.

双方向地図のイメージ図。写真はパブリックドメインでPixabayに掲載されたもの。

メキシコでの驚くほどの治安問題の数々は、今に始まった事ではない。マスコミの報道、統計はいずれも犯罪の増加を示しており、一般市民も同様の認識を持っている。こういった状況の中で、時には公共機関が対処すべき範疇を超える事態が発生することもある。これをうけて、普段はもの言わぬメキシコシティの普通の市民は、自分たちの街における犯罪の影響を和らげようとする取り組みの中で、地図情報技術を取り入れることに関心を寄せた。

メキシコの首都における犯罪についての報告によると、2018年の第2四半期において、メキシコシティは国内で2番目に多く暴力的強盗に苦しんだ。メキシコシティは路上強盗では32州中3位、侵入窃盗では10位を記録した。これらの統計は、1日に96件の殺傷を伴う強盗、27件の車両窃盗、20件の侵入窃盗、44件のビジネス強盗(訳注:銀行強盗等)、そして40件の強盗が起こっていることを意味している。

このような犯罪の増加に対して、メキシコシティ・アナワク地区の住民グループは、誰もが、犯罪の行われた場所を正確に記録できるような共用のグーグルマップを作成した。この地図の目的は強盗や車両窃盗を記録し防ぐことにある。つまり、誰もが犯罪に関する詳細な記録を残すことができるようになり、その結果、統計値が集積され市民団体の役に立つこととなる。

地図データは目撃者と被害者自身からの通報を基にして作成されている。地図に収められた情報の幾つかは以前当局に届けられたものだ。地図へのリンクはツイッター上でシェアされる。ツイッターでは地域のメンバーが質問をしたり今起こっている都市犯罪について話し合うこともできる。

近隣の皆様へ、6月の犯罪マップをぜひご確認ください。皆様の報告が地図に反映されていない場合は、私どもにご連絡ください。

地理的位置情報アプリを犯罪撲滅のツールとして使用する戦略は新しい現象ではない。2013年から2016年にかけて、ホヨ・デ・クリメン (犯罪の穴)というウェブサイトは、市の区画ごとにあらゆる種類の犯罪に関する情報を収集した。刑事事件のデータについては、情報公開請求によりメキシコ首都のセキュリティサービスから得た。この特別なウェブサイトは暴行や車両窃盗、殺人など、記録に残された事件も扱っており、プログラマーのディエゴ・ヴァリエスによって設立された。いまは、カルロス・カスタニエダが引き継いでいる。カスタニエダはu-GOB(統治技術の利用に特化したサイト)にこのプロジェクトに関する記事を書いている。その中で、ヴァリエスはこのウェブサイトが、街で発生する市民の危険を回避するのにどの様にして役立っているかコメントしている。

Con estos datos y su visualización, los ciudadanos y las autoridades podrían saber dónde se encuentran las áreas más violentas; los empresarios escogerían mejor dónde situar sus negocios, y los conductores sabrían en cuáles estacionamientos es más probable que les roben el auto.

地図データとその視覚化により、市民と当局は犯罪が多発しているエリアがどこにあるかを知ることができるようになる。起業家はビジネス拠点をどこに配置すべきかをこれまで以上に優れた方法で選ぶこととなる。そして運転手はどの駐車場を避けるべきかを知ることとなる。

ホヨ・デ・クリメンはこの企画の中で、それぞれの地域を統括している警察官と司令官に事件に関する説明を求めようと模索したことも強調している。

このようなプロジェクトが犯罪抑止に関して非常に重要であるにも関わらず、当局は必要なデータを提供すること、および、公的情報を配信することを拒否した。そのため、ホヨ・デ・クリメンは結局、情報のアップデートを中止せざるを得なくなった

全ての種類の犯罪のためのマップ

メキシコ国立自治大学の地理学の学生も、キャンパス内の犯罪を把握し、それを糾弾するために地図情報技術を取り入れている。地図作成に必要なデータはフェイスブックで公にシェアされた匿名のオンライン調査を通じて収集される。フェイスブック上の投稿で、ある学生が、この調査と地図の狙いは、「大学のキャンパスの中で暴力により占拠された場所を示す」ことであると説明している。この投稿はポロスとして知られている学生暴力グループにも言及している。ポロスとは、メキシコ国立自治大学において、平和的な抗議が大半を占める中、何年にもわたって暴力を用いた訴えの中心にいるグループである。

学生によって作成、シェアされた地図のスクリーンショット。この地図はPDFフォーマットで学生のフェイスブックアカウントを通じて公にシェアされている。

同じ大学で建築学を専攻している学生たちもキャンパス内での襲撃やハラスメントの訴え、他の形の暴力が行われた位置を特定するための地図を作り上げた、このグループはフェイスブックとインスタグラムで情報をシェアしている。

Screenshot taken from the Facebook account of ‘FUGA Arquitectura’.

皆さんはキャンパスの中で強盗にあったりハラスメントを受けたり、あるいは、暴力の被害者となったことがありますか。いつ、どこで被害にあったか、私たちの地図作りにご協力ください。皆さんのご協力で、私たちは学生としての権利を要求することに役立つ地図を皆さんと共に作ることができます。ご協力いただける方は、ご自分のPCかスマートフォンを用いてここに示す簡単な手順に従ってください。

メキシコでの地図情報技術の応用は歩行者への暴行や車両窃盗にとどまらない。2016年以来、身の安全のためにペンネームを用いて活動している女性の開発者は、メキシコ全体における女性殺害についての双方向地図を作り上げた。

地図情報技術の発達と普及は犯罪撲滅のための有力な手段になることが明らかになった。加えてさらに重要なことには、地図情報技術はそれを利用する者自らが必要なデータを収集しようとする、自立した社会の創造のための有力な手段となることも証明されたのである。

校正:Masato Kaneko

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