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ブラジルとコロンビア:トランスジェンダーの教師が学校に新しい風を吹き込む

フェルナンダ・リベイロはブラジルのサンパウロ州内陸部にある公立学校で、初等・中等教育の芸術を教えている。写真:トニ・ピレス。許可を得て使用。

原文掲載は2018年10月23日)

文:ヴァネッサ・デ・サ

レオナ・フレイタスはブラジルによくいる農村の女性である。彼女の日常は数人の近しい友人と、パートナーを中心に回っている。彼女の夢は、そんなに大きなものではない。家を買い、静かな暮らしを送ることだ。

彼女は生まれ育ったコンゴニャースを離れたことはほとんどなく、現在もそこで働いている。大都市を訪れたこともない。サンパウロは彼女にとって遠い夢である。ミナスジェライス州の州都であるベロオリゾンテは、彼女の故郷からわずか80kmほどに位置し、いつか訪れたい場所として彼女の願い事リストに載っている。「行ける時が来たら行くつもりだ」と彼女は言っている。

コンゴニャースは、宗教的祝祭で有名な歴史のある小さな町だ。その祝祭にはブラジル中から多くのカトリック教徒が集まってくる。多くの教会やクリスチャンの学校があり、南米の多くの都市と同様に、宗教的で保守的である。

レオナはトランスジェンダーの女性である。彼女は教育課程を修了したのち自らのジェンダー・アイデンティティを明らかにした。教員の資格は、公募選抜によってのみ得ることができる。「私立学校の多くはカトリックや福音教会と何かしらのつながりがあるので、トランスジェンダーの私がそこでの仕事を見つけられたかどうかはわからない」と彼女は言う。

そのため、レオナは公立学校で教鞭をとっている。そこでの彼女の日々は楽なものではない。彼女は人口5万人のこの街で唯一のトランスジェンダーの教師であり、同僚が不快感を覚えていると感じることもある。しかし、彼女はそういうことのせいで気後れするようなことはない。それどころか、大きな成果を収めたと思っている。それは、女性に対する敬称で呼ばれているということだ。「同僚たちはいまだに私のことを『レオナ』と呼べないの。私が自分で選んだ名前の代わりに、出生名で『ミス・アルバート』と呼ぶの」と彼女は説明する。

レオナ・フレイタスは、ブラジルの小都市コンゴニャース唯一のトランスジェンダーの教師である。写真:トニ・ピレス。許可を得て使用。

南米の多くの国々では、出生時に割り当てられた性別(出生証明書に記載されている性別)に一体感を持てない人々に対する差別がある。そのため、彼らは政界や指導的立場において、また運転手やセールスマン、レジ打ちのようなごく普通の仕事の場で、十分に活躍することができないままでいる。

学校現場では、彼らの活躍はさらに少ない。一般的な南米の人々はいまだに、教師という職を権威的な地位だと考えている。「トランスジェンダーの人間が教師になるなんて誰も予想していないの。頭の中で思い描くこの2つのイメージには、相反するものがあるみたい」とトランスジェンダーの教師、アラニス・ベーリョは言う。彼女は、コロンビアのボゴタにある国立教育大学で教えている。

アラニス・ベーリョ:「学生の好奇心を刺激することが大好きなの。ハイヒールを履き、バッチリ化粧をしてドラァグクイーンになって大学へ行ったのよ。みんなは口をあんぐりさせていたわ。」写真:トニ・ピレス。許可を得て使用。

アナ・パウラ・ブラガ・ルスはブラジルのフォルタレザで、TransPassando Project (訳注:社会からトランスの人たちに対する差別をなくすプロジェクト)のボランティア講師を務めている。トランスジェンダーであるというのは、非常に複雑でやっかいだと認めている。「トランスジェンダーやトランスセクシュアルの教育者が、子どもたちを性的対象としたり、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーにしてしまうのではないか、という考えの人が多いのよ」と彼女は言う。

南米だけでなく世界中の公教育の現場で、どれだけのトランスジェンダーの人々が働いているのかを示す公式データはほとんどない。一般的にこうした人数に関する調査は進行中であり、つまり結果の報告も全くない。人口統計学の研究においては、ジェンダー・アイデンティティはほとんど考慮されていない。

しかし、メディアやインターネットのおかげで、トランスジェンダーの人々は関心を集めている。ブラジルトランス教育大学(IBTE)は、全国のトランスジェンダーの教師をつなげるためにソーシャルネットワークをこれまで利用している。トランスジェンダーの教育者であるサヨナラ・ノゲイラやアンドレイア・カンテリ主導のもと、IBTEは2017年にオンライン調査を実施した。その結果、学校で働くトランスジェンダーの職員が何名いるのかが判明した。「90名の教師が働いていることが判明したが、もっと多いと思います。レズビアンだというトランスジェンダーの男性4人の話を聞いて、衝撃を受けました。勤務校の職員や学生に、自分を受け入れてもらえないのではないかと心配だった、と言うのです」そうサヨナラは話す。

トランスジェンダーの教師は長きにわたって孤立していたため、人数の多い方が強いということに気づいている。機関の副代表であるサヨナラはこう話す。「私たちは人脈を広げています。トランスの教師を力づけ、自分を守る法規範があることを彼らに知ってもらうため、指導者を探しています。そうすれば、彼らは自分がどういう人間であるのか、もう隠さなくていいのです。また、授業計画を提供することで、授業の中でジェンダーアイデンティティや性的指向を扱う手助けもしています」

偏見の壁を壊す

新入生を迎える学期初め、ブラジル人教師のフェルナンダ・リベイロは皆にこう伝える。「私は異性装者だ」

「こうすることで、陰口を無くしたり、自分自身を話題にすることができるようになる」と彼女は言う。学生はジェンダーアイデンティティについて、講義の枠を超えて学ぶことになる。「よくジョークで『私は歩く研究対象だ』ということがあるんだ。なぜなら、スティグマ(差別や偏見)やステレオタイプ(固定観念)というものからの解放につながるから」今やフェルナンダは「トランスジェンダーの教師」ではない。彼女は「ちょっと厳しいけど、とてもかっこいい」フェルナンダ先生にすぎない。

少しずつ、トランスジェンダーの教師は偏見の壁を壊しつつある。ブラシア・ゴメス・レイノソはアルゼンチンの小さな町、カタマルカの大学で教師や校長を35年間勤めた後、2017年に退職した。彼女は2012年に男性から女性へと性別移行をしたが、自分の学生に打ち明けた時のことを思い出すと涙が溢れ出す。

フェルナンダ・リベイロの学生は彼女の変化を徐々に受け入れた。「子供たちは心が開いている、つまりオープンマインドであるとわかったの。性の多様性を受け入れられないことが多いのは、私たち大人の方よ」

フェルナンダ・リベイロの学生は彼女の変化を徐々に受け入れた。「子供たちは心が開いている、つまりオープンマインドであるとわかったの。性の多様性を受け入れられないことが多いのは、私たち大人の方よ」写真:トニ・ピレス。許可を得て使用。

コロンビア人のアラニス・ベーリョは、国立教育大学での職を得るために闘う必要があったと言う。「私の出生名はジェイソンだったけど、出生記録は変えたくなかったの」と話す。彼女の学生たちは教師が男性だろうと予想した。「私は学生の好奇心を刺激することが大好きなの」と社会学者のアラニスは言う。「ハイヒールを履き、バッチリ化粧をしてドラァグクイーンになって大学へ行ったのよ。みんなは口をあんぐりさせていたわ」と笑う。彼女は少しずつ、勤務校の学生や教授、同僚と協力関係を築いた。異性装者の視点で教える目的は癒すことだ、とアラニスは説明する。「これはロマンある癒しの教育なの。なぜなら、教育制度のなかでは嫌悪、怒り、差別など、トランスジェンダーだけでなく、生身の人間なら誰もが傷を負ってるわ。その傷を治そうとしているんだから」

そしてその教育は変化につながっている。アラニスは言う。「違った考えで教育をとらえる教師。自分自身に疑問を抱き、異性装者が起こす魔法のような変化を受け入れることができる教師。私は、そういう将来の教育者を育てる手伝いをしてるの」

アラニスの学生の1人、ラウラ・モラレスは言う。担当教師(コロンビア人はスペイン語でprofeと言う)がトランスジェンダーだという経験はショッキングであり、自分の感じ方や考え方を大きく変えるものであった。「素晴らしかったわ」と彼女は話す。「大学のような場所に来て、性別ではなく人間性でつながる人に会うの…そしてその人の外観が『そうね、彼女は見た目は奇抜だけれど、それよりも笑顔や仕草、知性こそが人に愛されるのね』と思わせるような人なの。性別という点ではなく、一人の人間として彼女のことを考え始めるはず。それはとても大きなこと。私が学んだのは、男性か女性という2つの選択肢だけではなく、数え切れないほどの受け取り方、考え方、そして感じ方があると言うことだから」

この記事は The European Journalism Centre (訳注:オランダに本部を置く非営利組織)の資金提供によるものである。

校正:Miki Masamura

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